何年ぶりかで『ウエスタン』(68)を再見。
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列車の到着を待つ3人のガンマン(ウッディ・ストロード、ジャック・イーラム、アル・ムロック)。セリフも音楽もなく、凝った映像と音(ハエの羽音、水滴の落下音、からから回る風車)だけで延々と見せる。そして、混血のガンマン、ハモニカ(チャールズ・ブロンソン)が登場し、一瞬にして3人を撃ち殺す。
名脇役のストロードとイーラムをゲストとして扱った配役が心憎いが、実はこの三人を、『続・夕陽のガンマン』(66)のクリント・イーストウッド、リー・バン・クリーフ、イーライ・ウォラックで、という話もあったらしい。
けれん味たっぷり、ためにためたスローテンポ、独特の映像美という、まさにセルジオ・レオーネの面目躍如のオープニング。日本のアクション映画や劇画に与えた影響の大きさは計り知れない。と、いつものことながら、ここだけでもう満腹な感じがする。
この後は、謎の男ハモニカを中心に、鉄道会社に雇われたガンマン、フランク(ヘンリー・フォンダ)=悪党、強盗団のボス、シャイアン(ジェイソン・ロバーズ)=コメディリリーフ、重病に侵されている鉄道会社の重役モートン(ガブリエル・フェルゼッティ)=文明化の権化、ニューオリンズから西部に嫁いできた元高級娼婦のジル(クラウディア・カルディナーレ)=荒野に咲いた一輪の花、を絡めて、西部劇の王道である復讐劇に加え、文明化による西部の黄昏(鉄道の敷設、ビジネスマンの参入)も描いていく。
で、もちろんいいシーンもたくさんあるのだが、全体的に冗漫な印象を受けるのはレオーネ映画の常。特に、この映画は、レオーネに加え、ベルナルド・ベルトルッチとダリオ・アルジェントが原案を考えたというのだから、まあいつも以上にまとまらないわな。
ところが、モニュメント・バレーの景観もきっちり入れ込んだトニーノ・デリ・コリの素晴らしいカメラワークと、それぞれのキャラクターのテーマ曲(特にジルのテーマの美しさは絶品)を含めたエンニオ・モリコーネの印象的な音楽が、レオーネの冗漫な演出を忘れさせるから困ったものだ。
この映画と『夕陽のギャングたち』(71)『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(84)というレオーネ+モリコーネによる「昔々三部作」はどれもそんな感じで、何度見ても、音楽と映像の美しさに、うまくごまかされてしまう。
などと思いながら今回も見ていたのだが、突然、レオーネが多用するクローズアップやスローテンポは歌舞伎の見得のようなものかもしれない。役者にとっては見せ場を作ってくれる“いい監督”だったのかもしれないと思い当たった。
すると、今回は思いのほかすんなりと見ることができ、あろうことか、ラストシーンの鉄道工事を尻目に退場していくハモニカとシャイアンの姿に泣かされた。
映画の再評価というのはあまり好きではないのだが、何やら自分の中で「セルジオ・レオーネ再評価」が起きてしまったようで気恥ずかしい。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト』
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