田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『デイライト』

2020-06-19 07:31:10 | 映画いろいろ

『デイライト』(96)(1998.4.20.)

 映画好きのカメラマンの友人と電話で話していた際に、未見のこの映画のことが話題に上った。友人いわく「昔のパニック映画をほうふつとさせる群像劇だったけど、傑作になりそこなった感じがした」とのことだった。公開時にもそんな内容の記事を目にしていたことを思い出し、ちょっと気になったもので、レンタルしてきた。

 不意のトンネル事故、そこに閉じ込められたさまざまな生存者たち、単身彼らの救出に向かうすねに傷持つスタローン…。確かに昔のパニック映画的なゾクゾクするような出だしなのだが、いかんせん、後が続かない。

 かつての『ポセイドン・アドベンチャー』(72)『タワーリング・インフェルノ』(74)といった傑作と比べてしまってはかわいそうだが、個々人のドラマがあまりにも薄くて、集団劇としての面白さが中途半端になり、地上とトンネル内とのやり取りの緊迫感も弱いのだ。

 そして、最後はお約束通りに、スタローンのスーパーマン的な一人舞台を見せられるとなるとさすがにしらけるのだが、こういう映画は好きなので、過去の映画に学びながら、新たな形のものを作ろうとした努力だけは認めたい気もする。

【今の一言】この映画のことを教えてくれた友人は数年前に亡くなった。6つばかり年上の、兄貴のような存在の人だったので、映画に限らず、いろいろなことを教えてもらった。今思えば、もっとたくさん話をするべきだった、と悔やまれてならない。

 

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『ウエスタン』

2020-06-19 07:28:27 | 映画いろいろ

 何年ぶりかで『ウエスタン』(68)を再見。



 列車の到着を待つ3人のガンマン(ウッディ・ストロード、ジャック・イーラム、アル・ムロック)。セリフも音楽もなく、凝った映像と音(ハエの羽音、水滴の落下音、からから回る風車)だけで延々と見せる。そして、混血のガンマン、ハモニカ(チャールズ・ブロンソン)が登場し、一瞬にして3人を撃ち殺す。

 名脇役のストロードとイーラムをゲストとして扱った配役が心憎いが、実はこの三人を、『続・夕陽のガンマン』(66)のクリント・イーストウッド、リー・バン・クリーフ、イーライ・ウォラックで、という話もあったらしい。

 けれん味たっぷり、ためにためたスローテンポ、独特の映像美という、まさにセルジオ・レオーネの面目躍如のオープニング。日本のアクション映画や劇画に与えた影響の大きさは計り知れない。と、いつものことながら、ここだけでもう満腹な感じがする。

 この後は、謎の男ハモニカを中心に、鉄道会社に雇われたガンマン、フランク(ヘンリー・フォンダ)=悪党、強盗団のボス、シャイアン(ジェイソン・ロバーズ)=コメディリリーフ、重病に侵されている鉄道会社の重役モートン(ガブリエル・フェルゼッティ)=文明化の権化、ニューオリンズから西部に嫁いできた元高級娼婦のジル(クラウディア・カルディナーレ)=荒野に咲いた一輪の花、を絡めて、西部劇の王道である復讐劇に加え、文明化による西部の黄昏(鉄道の敷設、ビジネスマンの参入)も描いていく。

 で、もちろんいいシーンもたくさんあるのだが、全体的に冗漫な印象を受けるのはレオーネ映画の常。特に、この映画は、レオーネに加え、ベルナルド・ベルトルッチとダリオ・アルジェントが原案を考えたというのだから、まあいつも以上にまとまらないわな。

 ところが、モニュメント・バレーの景観もきっちり入れ込んだトニーノ・デリ・コリの素晴らしいカメラワークと、それぞれのキャラクターのテーマ曲(特にジルのテーマの美しさは絶品)を含めたエンニオ・モリコーネの印象的な音楽が、レオーネの冗漫な演出を忘れさせるから困ったものだ。

 この映画と『夕陽のギャングたち』(71)『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(84)というレオーネ+モリコーネによる「昔々三部作」はどれもそんな感じで、何度見ても、音楽と映像の美しさに、うまくごまかされてしまう。

 などと思いながら今回も見ていたのだが、突然、レオーネが多用するクローズアップやスローテンポは歌舞伎の見得のようなものかもしれない。役者にとっては見せ場を作ってくれる“いい監督”だったのかもしれないと思い当たった。

 すると、今回は思いのほかすんなりと見ることができ、あろうことか、ラストシーンの鉄道工事を尻目に退場していくハモニカとシャイアンの姿に泣かされた。

 映画の再評価というのはあまり好きではないのだが、何やら自分の中で「セルジオ・レオーネ再評価」が起きてしまったようで気恥ずかしい。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/9b91b9c038a27e59ee557ae376233911

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今夜は『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』

2020-06-19 07:00:38 | SCREEN スクリーン

 先週に引き続き、今夜、日テレで『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』(89)が放映される。キャッチコピーは「こんな時こそ明るく楽しめる最高の映画を」だ。

 『SCREEN(スクリーン) 増刊』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』メモリアル特集から

『外国映画男優名鑑』『20世紀の映画監督名鑑』から

今夜は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/9f04698d4981023805b54650c76caa32

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