田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『飛べ!フェニックス』

2021-06-06 07:44:54 | 映画いろいろ

『飛べ!フェニックス』(65)(1982.11.11.木曜洋画劇場)

 “男の映画”を撮らせたら第一人者であるロバート・アルドリッチの面目躍如の映画。とにかく出てくる面々(ジェームス・スチュワート、リチャード・アッテンボロー、ピーター・フィンチ、ハーディ・クリューガー、アーネスト・ボーグナイン、イアン・バネン、ロナルド・フレーザー、クリスチャン・マルカン、ダン・デュリア、ジョージ・ケネディ)が、ひとクセもふたクセもある連中ばかりで、その顔ぶれを見ているだけでも楽しくなってきてしまうのに、なんとこの連中が飛行機もろとも砂漠の真ん中に置き去りにされてしまう。

 もちろん黙っている奴らじゃない。本性やエゴを剥き出しにしてなんとか自分だけは助かろうとする。だが結局は、みんなが力を合わせた時、やっと脱出の道が開けるという皮肉たっぷりの作り方。結局、人間、一人ではなにも出来ないし、生きてはいけないらしい。

 フェニックスは日本で言えば不死鳥。だとすれば敢えてこの映画のタイトル(飛行機の名前)にそれを使ったのは、登場人物たちの人生再出発の意味も含まれているのだろう。いずれにせよ、アルドリッチ、男の集団劇にはさすがの冴えをみせる。さてオレも再出発してみますか。

 

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『ブラックバード 家族が家族であるうちに』

2021-06-06 07:26:29 | 新作映画を見てみた

ベビーブーマーらしい価値観

 ある週末、リリー(スーザン・サランドン)は、医師の夫ポール(サム・ニール)と暮らす海辺の邸宅に、娘のジェニファー(ケイト・ウィンスレット)とアンナ(ミア・ワシコウスカ)とその家族、そして学生時代からの親友リズ(リンゼイ・ダンカン)を集める。

 それは、病気の進行によって安楽死を決意したリリーが、“家族が家族であるうちに”過ごすために用意した最後の時間だった。彼らは、さまざまな思いを胸に最後の晩餐を共にするが、あることをきっかけに、それぞれの秘密が明るみに出ることになる。

 登場人物は8人だけで、ほとんどが邸宅内で繰り広げられる、舞台劇を思わせる映画だが、よくある安楽死の是非を問うドラマは、映画が始まった時にはすでに終わっている点がユニーク。つまりは、実行までの過程を描いているのだ。

 ただ、リリーが自分の尊厳を必要以上に重視し、娘たちを自由な人間に育てたと勘違いしていたり、葉っぱ(ドラッグ)やウッドストックやフリーセックスのことを楽しそうに語る場面を見ていると、いかにもベビーブーマー(日本で言えば団塊の世代)らしい価値観だという気がして、ちょっと反発を覚えた。

 とは言え、この場合は、単なるきれいごとのお涙頂戴話ではなく、そうした嫌らしさをきちんと描いたところを、良しとすべきなのかもしれないとも思った。

 いずれにしても、最近母を亡くし、自分も死が身近な年齢になったことを思うと、人生の最期の迎え方について、いろいろと考えさせられるところはあった。

 女優たちの演技合戦の横で、夫役のニールと長女の夫役のレイン・ウィルソンがなかなかいい味を出していた。

 【付記】母と娘が一緒に歌った曲が気になったので調べてみたら、ナンシー・シナトラが歌った「イチゴの片思い=Tonight You Belong To Me」(63)だった。リリーの思い出の曲という設定なのだろう。ここにも時代が表れている。

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