俳優と犬たちの好演の賜物
大学に動物愛護サークル「犬部」を設立した獣医学部の花井颯太(林遣都)が、仲間たちと共に動物を守ろうと奮闘した過去と、獣医師となって新たな問題に立ち向かう現代を交差させながら、信念を曲げずに突き進む“犬バカ”の主人公と、「犬部」のメンバーたちの熱い思いと奮闘を、笑いあり、涙ありで描く。
監督・篠原哲雄。原案は、青森県の北里大学に実在したサークルを舞台にした『北里大学獣医学部 犬部!』(片野ゆか)。
動物を飼うには大きな責任が伴うはずだが、先の、ニシキヘビ脱走の大騒動を例に出すまでもなく、人間の身勝手で被害をこうむる動物たちは数知れない。また、自分のペットかわいさのあまり、他人に迷惑を掛ける飼い主もいる。そして、あからさまに感動の涙を誘うような動物映画もあふれている。そんな風潮はどうも苦手だ。
この映画の主人公の花井は、全ての犬を救う気構えで行動する“犬バカ”で、はたから見れば迷惑なところもあるのだが、損得勘定ではなく、純粋に犬たちを救いたいという思いを貫いて行動し、その行動の責任もきちんと取るところには好感が持てる。そして、過度の感動の押し付けもないから、自然、この男を応援したい気持ちにさせられる。
その花井をはじめ、相棒の柴咲涼介(中川大志)、後輩の佐備川よしみ(大原櫻子)と秋田(浅香航大)という「犬部」のメンバーたち、あるいは、花井の動物病院の看護師(安藤玉恵)などは、皆、善意の人たちであり、あまのじゃくに言えば、悪人が一人も出てこないこの映画を、夢物語として片付けてしまうのは簡単なのだが、たまにはこういう映画があってもいいではないかと思わされるのは、俳優と犬たちの好演の賜物だろう。
【付記】「犬部」のメンバーの一人、佐備川よしみを演じた大原櫻子にインタビューをした。詳細は後ほど。