人情などの味わいは日本映画
妻を病気で亡くした青木剛(池松壮亮)は、一人息子の学と共に、疎遠になっていた兄の透(オダギリジョー)が暮らすソウルへ渡る。一方、ソウルでタレント活動をするチェ・ソル(チェ・ヒソ)は、仕事や家族との関係について悩んでいた。
韓国の首都ソウルから地方に向かう列車の中で出会った日本人と韓国人の、言葉の通じない二組のきょうだいが、旅を通じて心を通わせていくさまを描いたロードムービー。石井裕也監督が、韓国人スタッフ&キャストと共にオール韓国ロケで撮り上げた。
「相互理解」をキーワードに、言葉と文化の違いという壁による両者のかみ合わない会話、コミュニケーションのすれ違いが、半ばドキュメンタリーのように、ユーモラスに描かれるが、やがて両者が心を通わせ、別れ難くなる変化の様子が見どころとなる。
うさんくさい透が語る、「よく分からない感情は、みんな愛だ」「『ビールください』と『愛してる」。この二つだけを知っていれば、この国(韓国)でやっていける」などのセリフも面白い。
全編韓国ロケ、韓国人のスタッフ&キャストで撮られているが、人情などの味わいは日本映画。だから韓国映画が苦手な自分にも、心地よさが感じられたのだろう。一度仕事で訪れたことがあるソウルの風景が懐かしく映った。