「映画って、スクリーンを通して今と過去をつないでくれるんだと思う」
時代劇オタクで勝新を敬愛する高校3年生のハダシ(伊藤万理華)は、映画部に所属しながら、時代劇が撮れずにくすぶっていた。
そんなある日、自分が脚本を書いた時代劇の侍役にぴったりの凜太郎(金子大地)を見付けたハダシは、仲間を集めて映画「武士の青春」を撮り始める。だが、実は凜太郎は未来から来たタイムトラベラーだった…。
監督のハダシをはじめ、主演の凛太郎、撮影のビート板(河合優実)、殺陣のブルーハワイ(祷キララ)、助演のダディボーイ(板橋駿谷)、録音と音声の駒田(小日向星一)と増山(池田永吉)、照明の小栗(篠田諒)という七人の仲間たち。
彼らが映画を作る楽しさを体現し、見ているこちらも、彼ら一人一人が愛おしく思えてくる。中でも、30過ぎで朝ドラ「なつぞら」に続いて、またも高校生を演じた板橋が傑作だった。
監督・脚本の松本壮史と脚本の三浦直之は、恋と友情、時代劇、SF、学園ドラマといった、さまざまな要素を混在させながら、ハダシの「映画って、スクリーンを通して今と過去をつないでくれるんだと思う」という言葉に代表されるように、端々に映画への愛を表している。そして、この映画の場合は、自主製作映画のようなノリがまたいい。
さて、実は、自分も大昔の高校時代、意気揚々と映画部に入ったのだが、男子校だったもので“女優”がおらず、妙な映画作りになりそうだったので、すぐに退部してしまったという、苦い思い出がある。結局自分は、映画を作るよりも見る方が好きだったのだろう。
という訳で、この映画のことは、昨年の東京国際映画祭で上映された時から気になってたのだ。そんな、何やら甘酸っぱい思いを抱きながら見たことに加えて、映画製作ものとタイムトラベルもの、それに時代劇も大好物なので、そこもまたツボだった。それに、ちゃんと青春映画になっているところにも好感が持てた。
また、素人っぽいところが逆にいいという意味では、『カメラを止めるな!』(17)にも通じるところがあるかもしれないと感じた。