『そして、バトンは渡された』(2021.10.18.ワーナー試写室)
第16回本屋大賞を受賞した瀬尾まいこの同名ベストセラー小説を前田哲監督が映画化。(ネタバレ禁止なので多くは語れない)
血のつながらない父親の間をリレーされ、4回も名字が変わった優子(永野芽郁)。今は料理上手な義理の父・森宮さん(田中圭)と2人で暮らす彼女は、さまざまな悩みを抱えながら、いつも笑顔を絶やさず、卒業式のピアノ演奏の練習に励んでいた。そんな彼女の前に、ピアノが上手な同級生・早瀬(岡田健史)が現れる。
一方、何度も夫を変えながら自由奔放に生きる梨花(石原さとみ)は、泣き虫な義理の娘みぃたんに精いっぱいの愛情を注いでいたが、ある日突然、娘の前から姿を消す。
中盤までは、この二つの物語が並行して描かれるのだが、やがて二つは微妙に絡み合い、最後はある秘密と嘘が明らかになる、という流れ。よく考えたら設定に無理や矛盾があり、一歩間違えたら犯罪と言ってもおかしくない行為も出てくるのに、“いい話”を見たような気にさせるところが、“だまし映画”の真骨頂。
前田監督は、この映画に「愛とは、見えないところで見守ること」「見た人が幸せな気持ちに包まれる映画に」という思いを込めたというが、その点は達成できたのではあるまいか。要は「人間万事塞翁が馬」的な話なのだ。
また、一見、わがままなくせ者に見えて、実は…という展開は、前作の『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(18)の主人公・鹿野(大泉洋)にも見られたが、今回もある人物にそれが当てはまる。これは前田監督と脚本の橋本裕志の好みなのだろう。
『キネマの神様』に続いて永野がチャーミング。そして、彼女が流す大粒の涙が印象的。まだ高校生の役ができるんだなあ。
前田哲監督には、『陽気なギャングが地球を回す』(06)の時にインタビューをしたが、その際、『ホット・ロック』(72)の話で盛り上がったことを覚えている。
【インタビュー】『陽気なギャングが地球を回す』前田哲監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/51b939c50275e81e74259f8982a9e071
『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/e8131e6957475e849a7d23829c71991a
【インタビュー】『キネマの神様』永野芽郁
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/9246c2ed7b01dce53f5cf8823bc0862a