田中雄二の「映画の王様」

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ビデオ通話で西部劇談議『黄色いリボン』

2021-10-23 19:54:07 | 駅馬車の会 西部劇Zoomミーティング

今回のお題は『黄色いリボン』(49)

 初めて見たのは、1975年3月14日のゴールデン洋画劇場。ジョン・フォードに限らず、騎兵隊ものは、西部劇というよりも戦争映画のような感じがしてちょっと苦手だと思った。

 ところが、いつの間にか、ジョン・ウェイン=デュークが演じるネイサン・ブリトリスと同年齢になり、若い頃とは別の感慨が湧いてきた。これは、デュークを父親的な役割にした、騎兵隊というコミュニティを舞台にしたホームドラマなのだと。

 フォードは「レミントンの絵の再現を狙った」と語っているが、とにかくウイントン・C・ホッチのカラー撮影が見事。特に雷のシーンは素晴らしい。

 老け役のデュークが、亡き妻の墓前に語りかけるシーンは、『ロッキー・ザ・ファイナル』(06)でシルベスター・スタローン、『人生の特等席』(12)でクリント・イーストウッドもやっていた。

 脇役では少佐夫人のミルドレット・ナトウィックが目立つ。フリント中尉役のジョン・エイガーは『アパッチ砦』に出ていたシャーリー・テンプルの元夫。

 この映画は、『アパッチ砦』(48・1986年9月13日.ビデオ)『リオ・グランデの砦』(50・1975年10月25日.土曜映画劇場)と併せて、「騎兵隊三部作」といわれるが、3本は全く別の映画。

 これは、ジョン・スタージェスの決闘三部作(『OK牧場の決斗』(57)『ゴーストタウンの決斗』(58)『ガンヒルの決斗』(59))同様、日本で勝手に付けたものかと思ったら、アメリカでも「カバリー・トリロジー」と言われているらしい。

 デュークの役名は『アパッチ砦』と『リオ・グランデの砦』は、続き物ではないのにカービー・ヨーク。ビクター・マクラグレンとベン・ジョンソンは、この映画に続いて『リオ・グランデの砦』でもクインキャノンとタイリーだ。

 これは、小津安二郎が『晩春』(49)『麦秋』(51)『東京物語』(53)と、原節子の役名を紀子にした(「紀子三部作」)のと同じような感じなのか。フォードも小津も、単に面倒くさがり屋だったから、という説もあるらしいが…。

“騎兵隊三部作”上映会
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/e04e18d31b1b4d1eebc93ebf147736be

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『決戦は日曜日』

2021-10-23 07:17:59 | 新作映画を見てみた

『決戦は日曜日』(2021.10.20.オンライン試写)

 地元に根強い支持層を持ち、当選を続ける衆議院議員・川島の秘書を務める谷村(窪田正孝)。ところが、ある日川島が病に倒れたことから、娘の有美(宮沢りえ)が地盤を引き継ぎ選挙に出ることに。政界に無知、自由奔放、お嬢様育ち…、けれども謎の熱意だけはある有美に振り回される日々。とはいえ、よほどのことがない限り当選は確実のはずだったが…。

 ことなかれ主義の議員秘書と熱意が空回りする新人候補者による選挙活動の様子をシニカルに描いたポリティカルコメディ。監督・脚本は『東京ウィンドオーケストラ』(17)『ピンカートンに会いにいく』(18)の坂下雄一郎。

 まず、全体のテンポがよく、個性的な選挙事務所の面々や、後援会、県議会や市議会といった有象無象の連中(渋い脇役たち)が、皆生き生きと描かれているのも高ポイント。

 坂下監督は、『赤ちゃん教育』(38)『ヒズ・ガール・フライデー』(40)といったスクリューボールコメディを意識し、冒頭にオーケストラ調の曲とともにクレジットが流れる構成を取ったと語っているが、利用されたことを知らずに立候補し、やがて変化し、目覚めていく新米候補者という構図は、むしろ、新人の田舎議員の活躍を描いたフランク・キャプラ監督の『スミス都へ行く』(39)や、大統領の影武者が政治を変えていくアイバン・ライトマン監督の『デーヴ』(93)をほうふつとさせるところもある。

 公開は年明けだが、選挙運動の裏側とハウトゥー、二世議員の実態などを描いたこの映画が、衆院選直前の今公開されていれば…と考えると惜しい気がする。

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