田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

白土三平とI先生

2021-10-27 23:14:24 | ブックレビュー

 白土三平といえば、自分にとっては、彼の漫画そのものよりも、「少年忍者 風のフジ丸」(64)「サスケ」(68)「忍風カムイ外伝」(69)といったテレビアニメや、映画『大忍術映画ワタリ』(66)の原作者としてのイメージが強い。

 

 ただ、それとは別の思い出もある。高校1年の時の担任で、世界史を教えてくれたI先生が、歴史を学ぶ際のお薦め本として、『遊牧騎馬民族国家-“蒼き狼”の子孫たち』(護雅夫)『街道をゆく5 モンゴル紀行』(司馬遼太郎)『新講 世界史』(土井正興)『火の路』(松本清張)などと並べて、手塚治虫の『火の鳥』と白土三平の『カムイ伝』を挙げたのである。

 

 それまで漫画を薦める教師などいなかったので、これは新鮮な驚きだった。そして、もちろんどちらも読んで、歴史に対する新たな視点を得たのだった。

 また、「お前は映画が好きなのだから、何か歴史に関係のある映画を見たらリポートを書け。いいものを書いたらちゃんと評価するから」と言ってくれた。

 で、例えば、『デルス・ウザーラ』(75)では森林やツンドラでの猟について、『十戒』(56)では「旧約聖書」の「出エジプト記」について、『風とライオン』(75)ではリーフ族とセオドア・ルーズベルトとの関係について、『サンチャゴに雨が降る』(75)では1973年のチリの軍事クーデターについてなど、幾つかリポートを書いたら、褒めてくれた上に、ちゃんといい点をくれたので、豚もおだてりゃ木に登る状態になって、映画について書くことが癖になった。

 それによって、映画は見るだけではもったいない。見たものについて何か書くのは面白いしためになる、と気付かさせてくれたのである。それが今の自分の仕事につながっているのだから、言わばI先生は恩人なのだ。と、白土三平から話が随分それてしまったが。

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「BSシネマ」『ホタル』

2021-10-27 07:21:16 | ブラウン管の映画館

 鹿児島を舞台に、戦争の傷を背負いながら静かに生きる夫婦の姿を描く。監督・脚本は降旗康男。

 妻の知子(田中裕子)と小さな港町で養殖業を営む山岡(高倉健)に、ある日、特攻隊の仲間だった藤枝(井川比佐志)の訃報が届く。これをきっかけに、山岡は、かつて特攻隊員たちから慕われていた食堂の女主人(奈良岡朋子)の頼みを引き受ける。それは山岡たちの上官だった金山少尉・本名キム・ソンジェ(小澤征悦)の遺品を故郷の韓国へ届けるというものだった。

 この映画の発端は、『鉄道員(ぽっぽや)』(99)のスタッフたちに、「今見るべき映画」として、初めて健さんが自ら映画化を持ち掛けたことだったという。健さんは、特攻隊の生き残りである漁師を演じ、主人公と妻の生き方を通して昭和という時代を振り返った。健さんがハモニカを吹く珍しいシーンもある。

 『鉄道員(ぽっぽや)』とこの映画は、健さんとスタッフたちが、長年映画作りの現場で培ってきたものの集大成と呼べるような作品となった。

“これぞ高倉健”というイメージを作り上げた降旗康男
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/85483d84925a696f8b433dd5ed395419

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