「ビートルズ特集」(1982.1.22.)
『サージャント・ペッパー』(78)
ビートルズのストーリー性のある歌詞を基にした映画が作られてもおかしくはないとは前々から思っていた。そんな夢をかなえてくれたのか…という淡い期待を抱きながら見始めたのだが、残念ながら、どうにもお粗末としか言いようのないものになっていた。
全く関連性がないのに突然歌が流れ出す数々のシーン。ミュージカル仕立てなのだから多少は我慢もするが、これはちょっとひどかった。まあまあ見られたのは、エアロスミスの「カムトゥゲザー」と、アース・ウィンド&ファイアーの「ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ」、珍しく歌とストーリーがマッチしていた「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」ぐらい。
所詮、ビージーズとピーター・フランプトンという四人組に、多くを望む方が無理というものなのだ。これは企画倒れということになるのではないか。いつの日か、ビートルズの曲を題材にした素晴らしい映画が作られる日が来ることを願わずにはいられない。
【今の一言】ある意味、ダニー・ボイル監督の『イエスタデイ』(19)は、ビートルズの曲を題材にした素晴らしい映画だったといえるのではないか。
『ザ・ビートルズ マジカル・ミステリー・ツアー』(67)(再)(初見は1981.8.3.国立スカラ座.併映は『ザ・ビートルズ グレイテスト・ストーリー』『THE BEATLES/シェアスタジアム』)
もともとはテレビ用に作られたものだが、これはある意味“ビートルズ映画”の総決算的な映像集である。また、彼ら自身の手で作られたことを考えれば、それだけでも興味深く、一見に値する。
わがお気に入りの「フール・オン・ザ・ヒル」や「ハロー・グッドバイ」や「ユア・マザー・シュッド・ノウ」などが、どんな形で映像化されているのかに興味があった。
バス旅行「マジカル・ミステリー・ツアー」の乗客たちは、リンゴの太ったおばさん、コチコチの英国紳士を気取ったじいさん、グラマーなガイドに、あほな接客係など、くせ者だらけ。
しかも、幻想の場面が、それに輪をかけたおかしさで、太ったおばさんと英国紳士のじいさんが「オール・マイ・ラヴィング」交響曲風が流れる中でロマンスを展開させたり、ジョンが一人で何役もこなして見事なコメディアンぶりを発揮したり(特に「アイ・アム・ザ・ウォルラス」のエッグマンが最高)、ポールが「ザ・フール・オン・ザ・ヒル」をバックに踊り狂ったり…、とにかくひっちゃかめっちゃかなのだが、なぜか楽しいのである。
また、過去の『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』(64)『ヘルプ!4人はアイドル』(65)では、リンゴが一人で目立っていたが、この映画では、ほかの3人も大活躍を見せる。それは、リンゴが撮影も担当していたとかで、そっちに力を注ぎ過ぎたせいだったのかな。
『THE BEATLES/シェアスタジアム』(65)(再)
ニューヨーク・メッツの本拠地、シェア・スタジアムで、1965年8月15日に行われたライブの映像。まず、スタジアム全体を覆う、すさまじいばかりの熱気に驚かされた。前にテレビの特集で、ハイライトシーンは見たことがあったが、こうして改めて映画館で全編を通してみると、当時の女の子たちの悲鳴を聞くだけでも圧倒される思いがした。
薬のせいなのか、もはやライブに嫌気がさしていたためか、目の下にくまをつくり、驚くほどやつれた表情で歌い、演奏するジョンとポールの姿が印象的。
演奏された曲は、「ツイスト・アンド・シャウト」「シーズ・ア・ウーマン」「アイ・フィール・ファイン」「デイジー・ミス・リジー」「涙の乗車券」「みんないい娘」「ベイビーズ・イン・ブラック」「アクト・ナチュラリー」「ア・ハード・デイズ・ナイト」「ヘルプ」「アイム・ダウン」。
「ベイビーズ・イン・ブラック」なんかを見ていると、改めてジョンとポールの掛け合いは、もう二度と見られないんだなあと思い、感慨深いものがあった。そして、ラストのぶっ飛んだ「アイム・ダウン」は最高!
このライブの1年後に、サンフランスシコ・ジャイアンツの本拠地、キャンドルスティック・パークで行われたものが、ビートルズ最後のライブとなった。
【今の一言】『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK The Touring Years』(16)公開時に、音と映像に一部加工を施して再上映された。https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0559aba187e1bcff1da867885d5e9ba9