田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『銀平町シネマブルース』

2023-01-05 08:51:44 | 新作映画を見てみた

『銀平町シネマブルース』(2023.1.4.オンライン試写)

 あるトラウマを抱え、青春時代を過ごした銀平町にやって来た一文無しの映画監督・近藤(小出恵介)は、映画好きの路上生活者の佐藤(宇野祥平)、商店街の一角にある映画館・銀平スカラ座の支配人・梶原(吹越満)と知り合ったことをきっかけに、銀平スカラ座でアルバイトとして働くことになる。

 近藤は、同僚のスタッフ(藤原さくら、日高七海)や、ベテランの映写技師(渡辺裕之)、売れない役者(中島歩)やミュージシャン、映画の世界に夢を見ている中学生など、個性豊かな常連客との出会いを通じて、自分と向き合い始める。

 監督・城定秀夫、脚本・いまおかしんじが、経営難の映画館を舞台に、そこに集う人々の人間模様を描いた群像悲喜劇。撮影は、埼玉県川越市にある老舗ミニシアター・川越スカラ座で行われた。

 水野晴郎じゃないが、「映画っていいじゃないか、いいもんだろ」(佐藤)、「映画っていいですよね。いいもんですよね」(近藤)というセリフもあるように、全編に映画や映画館に対する愛があふれている。それも声高に叫ぶのではなく、じわじわといった感じなので、余計心に響く。

 『カサブランカ』(42)のほか、映画内映画として、近藤監督のホラー『はらわた工場の夜』と新人女性監督の悲喜劇『監督残酷物語』の断片が上映される。この2本の全編が見たいと思わせるところが、この映画の真骨頂ではないか。

 また、ブランクがあった小出、自死が重要な鍵を握る話に渡辺と、映画と現実が重なるところがあり、しかも2人とも好演を見せるので、感慨深いものがあった。

 今年の前半は、『モリコーネ 映画が恋した音楽家』(1月13日公開)、『エンドロールのつづき』(1月20日公開)、『バビロン』(2月10日公開)、『エンパイア・オブ・ライト』(2月23日公開)、『フェイブルマンズ』(3月3日公開)といった、映画や映画館への愛をうたった映画が目白押し。そこに、この映画(2月10日公開)も加わる。

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『シンデレラ・マン』

2023-01-05 00:23:32 | 映画いろいろ

 ジョー・ルイスにチャンピオンの座を奪われたジム・ブラドックが主人公の『シンデレラ・マン』(05)(2005.7.21.ブエナ・ビスタ試写室)

 原稿作成準備の第三弾は『シンデレラマン』。大好きなボクシングを描いた映画だったのでちょっと熱くなっている。実在の世界ヘビー級チャンピオン、ジム・ブラドックを主人公に、彼の潔い生きざまとファイトの数々がパワフルに描かれる。

 時はアメリカに大恐慌の嵐が吹く1930年代。有望株から落ちぶれ、極貧の中、もはやロートル・ボクサーとなったブラドックが、自らのため、家族のためにカムバック。

 次々と若手を撃破し、ついに時のチャンピオン、プリモ・カルネラを破ったマックス・ベアへの挑戦権を得る。こうしたブラドックのファイトは、恐慌にあえぐ人々の希望にもなっていくのだが、さて…。というストーリー。

 ラッセル・クロウが肉体改造をして見事なファイトを見せる。とにかく試合の場面が素晴らしいし(ロン・ハワード監督は、どちらかといえば体育系のイメージではないのに)、ジョー・ルイスらの影で忘れられた存在だったブラドッグの話をよくぞ発掘してきたと思わされる。

 この映画をボクシング映画とするなら、『ロッキー』(76)『チャンプ』(79)の系列に属すのだろうが、実話という点で両作を超えているし、同じく実話(ジェイク・ラモッタ)を映画化した傑作『レイジング・ブル』(80)を陰とすればこの映画は陽として、ボクシングというスポーツが持つコインの裏表のような二面性(破滅と栄光)を見せてくれる。

 さてボクシング映画には傑作が多い。前記のほかにも、まずはカーク・ダグラスがいけすかないボクサーを熱演した『チャンピオン』(49)。ロバート・ライアンが八百長を強いられるロートル・ボクサーを演じた『罠』(49)。ポール・ニューマンが実在のチャンピオン、ロッキー・グラジアーノに扮した『傷だらけの栄光』(56)。黒人初のチャンピオンとなったジャック・ジョンソンの悲劇を描いた『ボクサー』(70)。ボクシングの元祖『ストリート・ファイター』(75)のチャールズ・ブロンソンも見事だった。

 異色作はハンフリー・ボガートの遺作となった『殴られる男』(56)。何とこの映画では、マックス・ベアがプリモ・カルネラもどきを演じているのだ(『シンデレラ・マン』を見ると、これがいかに皮肉なことなのかが分かる)。

 そして別格は、モハメド・アリの半生を綴った、本人出演の『アリ/ザ・グレーテスト』(77)とウィル・スミスの『アリ』(01)


モハメド・アリが亡くなった
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/aadfae3d00610297675bcf45d168d16e
 
ボクシング映画あれこれ
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/5b4913b2abfae24ae7fccf8a21622a43


【インタビュー】『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』ロン・ハワード監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/034b9b32ed126b9e8c531d8a4ab698f0


 

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