『バイオレント・ナイト』(2023.1.20.東宝東和試写室)
物欲主義になった子どもたちに嫌気がさし、すっかりやさぐれたサンタクロース(デビッド・ハーバー)。それでも数少ない良い子にプレゼントを届けるため、トナカイの引くソリに乗ってクリスマスイブの空を駆け回っていた。
ある富豪一家の豪邸に降り立ち、煙突から中へ入ったサンタは、金庫にある3億ドルの現金を強奪しようと邸内に潜入した悪党のスクルージ(ジョン・レグイザモ)一味と人質となった富豪一家と遭遇。
知らぬふりをしてその場を去ろうとするも、結局騒動に巻き込まれる。戦闘能力ゼロのサンタが、武装集団を相手に孤軍奮闘。すると、もともとはバイキングだったサンタがかつての自分に目覚めて…。
手を変え品を変え、作り続けられるクリスマスの奇跡映画とサンタクロース映画だが、この映画は、『ホーム・アローン』(90)+『ダイ・ハード』(88)に、グロテスクなバイオレンス味を加えた、クリスマスファンタジーの変化球映画という感じ。
確かに、アイデアやアクションは面白く、全米では結構ヒットしたようだが、このバイオレンスに満ちた映画を、クリスマス映画として家族で見るというのは、どうなのだろうという気がした。
監督のトニー・ウィルコラは、サム・ライミの『死霊のはらわた』(81)を参考に、「恐怖と暴力とコメディを同時に表現すること」を目指したのだという。
そんなこの映画を見ながら思い出したのが、『デビルコール/魔界からの誘惑』(91)という映画。
2人の少女が、テレビで見ていたジョージ・A・ロメロ監督のゾンビ映画『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(68)と、フランク・キャプラ監督のクリスマスの定番映画『素晴らしき哉、人生!』(46)が、なぜか"合体する”シーンがあったのだ。
つまり、『素晴らしき哉、人生!』のラストのジョージ・ベイリー(ジェームズ・スチュワート)の家に集まる人々が、皆ゾンビになるというわけ。あれもハートウォームの場面を、一瞬にして恐怖と暴力とコメディに変えた妙な映画だった。