『月下の銃声』(48)
流れ者のカウボーイ、ジム・ギャリー(ロバート・ミッチャム)は、旧友のライリング(ロバート・プレストン)に呼び寄せられ、ガンマンとして雇われる。
ライリングは、かつては牧場主のラフトン(トム・タリー)の下で働いていたが、インディアン居留地の係官と組んでラフトンの牛運びを妨害し、牛を安く買いたたくという陰謀を企んでいた。
ライリングの行動に疑問を感じたギャリーは、入植者のクリス(ウォルター・ブレナン)の息子が犠牲になるのを見て、ラフトン側に寝返る。そして、ラフトンの次女エイミー(バーバラ・ベル・ゲデス)やクリスの協力を得て、ライリング一味と対峙する。
職人監督時代のロバート・ワイズが撮ったフィルムノワール風の西部劇。冒頭の雨、酒場でのギャリーとライリングの殴り合い、ラストの決闘など、夜のシーンが印象に残る。
ミッチャムは、この映画の公開と前後して、マリファナ所持の容疑で逮捕された。これはスターの移籍阻止をめぐる体制側のねつ造で冤罪である事が証明されたが、かえって“バッド・ボーイ”のイメージで人気が出た。
渡り保安官を演じた『街中の拳銃に狙われる男』(55)同様、この映画でも“スリーピングアイ”のミッチャムが、何を考えているのか分からないような危うい雰囲気を醸し出し、それがギャリー役に生かされている。『狩人の夜』(55)や『恐怖の岬』(62)で演じた狂気の男の役は、このイメージを増幅させたものだろう。
相手役のベル・ゲデスは、絶世の美女ではないが、いかにも人柄の良さそうなかわいらしい笑顔が魅力的な女優。『ママの想い出』(48)『めまい』(58)『五つの銅貨』(59)など、いい映画でいい役を演じている。出演作が少なく、ブランクもあるので疑問に思って調べてみたら、どうやら赤狩りに巻き込まれたようだ。もっと見たかったと思わせる女優だけに残念な気がしてならない。
姉役のフィリス・サクスターは、後年『スーパーマン』(78)でクラーク・ケントの母親を演じていた。
「監督ロバート・ワイズのすべて」
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