『ラスト・アクション・ヒーロー』(93)(1993.9.17.丸の内ピカデリー2)
ダニー(オースティン・オブライエン)はアクション映画のヒーロー、ジャック・スレイター(アーノルド・シュワルツェネッガー)の大ファン。ある日、老映写技師(ロバート・プロスキー)からもらった魔法のチケットを手にスレイターの最新作を見ていると、上映中の映画の中に入り込んでしまう。
憧れのスレイターと共に悪党ベネディクト(チャールズ・ダンス)を追って、スクリーンの中と現実の世界を股に掛けたダニーの不思議な大冒険が始まる。
アクション派からの脱皮を果たしたシュワルツェネッガーと、『ダイ・ハード』(88)『レッド・オクトーバーを追え!』(90)で男を上げたジョン・マクティアナン監督が、映画の内と外を自由に行き来するというアイデアを駆使しながら、自分たちが作ってきたアクション映画をパロってしまうという二重構造は面白い。実際、彼らの遊び心が分かれば分かるほど、この映画の劇中劇は楽しめるはずだ。
ところが、劇中劇から現実に移っても、シュワルツェネッガーの強さは変わらない。相変わらず彼はヒーローでかっこいいままなのだ。ここで弱いシュワルツェネッガーとまではいかずとも、映画の内と外がもっと対比的に描かれていれば、本当の意味でのパロディの面白さが発生し、虚構と現実の違い、つまり映画を見るという行為が持つ切なさがにじみ出て、新たな魅力が加わったはずだ。
ただそうなると、この映画が『カイロの紫のバラ』(85)や『ニュー・シネマ・パラダイス』(88)といった映画とは似て非なるものという構図が崩れてしまうのもまた確かであり、この描き方では、やはりラストは明るくカッコ良く去っていくシュワルツェネッガーしかないのかなあという思いも浮かんでくる。というわけで、これまた、先に見たシドニー・ポラック監督の『ザ・ファーム』(93)に続いて、惜しい映画だといわなければならないのが残念だった。