『ほぼ週刊映画コラム』
今週は
永遠の若さは果たして幸せなのか!?
『アデライン、100年目の恋』
詳細はこちら↓
http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1020370
物質転送装置を研究していた若手チームが、異次元のパワーによって不思議な能力を身に付けてしまう、というマーベルコミック原作シリーズの再起動版。
マイルズ・テラー(『セッション』『ダイバージェント』)、ケイト・マーラ(『トランセンデンス』)、マイケル・B・ジョーダン(『クロニクル』『フルートベール駅で』)、ジェイミー・ベル(『リトル・ダンサー』)といった、若手俳優たちの共演が見どころ。
今回は、超人的な能力を身に付けてしまった高校生たちの悲劇を描いた『クロニクル』のジョシュ・トランクが監督している。その意味では的確な人選という気もするが、これはあくまでも序章に過ぎない。今後は変体した彼らの悩みや屈折が描かれていくのだろうが、果たして今度はちゃんとシリーズ化できるのかという不安も残る。
さて、『ファンタスティック・フォー』と言えば、昔々「宇宙忍者ゴームズ」と題されたアニメ版が放送されていた。岩石男=ザ・シングの声は関敬六で“ムッシュムラムラ”という謎の掛け声が、当時小学生だった自分の周りではやった覚えがある。もう半世紀近くも前になるのか…。
その宇宙忍者ゴームズは ↓
https://www.youtube.com/watch?v=gWDmQjLnAiQ
幼いころに交通事故で母を泣くし、小説家の父(ラッセル・クロウ)と二人きりになったケイティ(カイリー・ロジャース)。だが、その父も事故の後遺症に苦しみながら亡くなる。
ケイテイ(アマンダ・セイフライド)は長じて大学で心理学を学ぶが、過去のトラウマからセックス依存症に陥っている。そんなある日、ケイテイは父のファンだというキャメロンと出会う。
父と娘の“いい話”や絆を描きたかったのだろうが、ケイテイのトラウマの理由をはじめ、全ての登場人物の心理描写があいまいで中途半端なため、何故そうなるのかという疑問が解決されないままの、後味の悪さが残る映画になってしまった。クロウが悩まされる発作も、ホラー映画のワンシーンのようで違和感あり。
さらに、父と娘の思い出となるカーペンターズの名曲「遙かなる影 クロス・トゥ・ユー」も、版権の問題があったらしいが、マイケル・ボルトンに歌わせるぐらいなら別の曲にするべきだった。あの曲は歌い上げるタイプの曲ではない。
あえて見どころを探せば、少女時代のケイテイを演じたロジャースと、大学生のケイテイと交流を持つ少女を演じた、『ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~』(12)のクヮヴェンジャネ・ウォレスの達者な演技か。編集者役で久しぶりに登場したジェーン・フォンダの健在ぶりにも驚いた。エアロビクスのおかげなのかとても77歳には見えなかった。
さて「遙かなる影 クロス・トゥ・ユー」の映画の中での名唱と言えば、『バックマン家の人々』(88)のリック・モラニス!https://www.youtube.com/watch?v=3PLPOHrwdms
舞台は1981年のニューヨーク。アベルは移民ながら一代でオイルカンパニーを築き上げた。そして、さらなる発展を目指して巨額の土地買収を企てた矢先に、何者かによる積み荷のオイルの強奪、脱税疑惑、妻のアナとの不仲など、次々にトラブルに襲われる。やがて銀行から融資を断られたアベルは、絶体絶命の危機に陥る。「正しい道を行くこと」が信条の男が下した決断とは…。
監督はロバート・レッドフォードの一人芝居映画『オール・イズ・ロスト~最後の手紙~』(13)を撮ったJ・C・チャンダ―。「この映画ではグレイゾーンを描きたかった」と語るように、正義派のアベルが成功を得るためにぎりぎりの選択を迫られて葛藤し、生き方を変えざるを得なくなる姿をハードなタッチで描いている。
一昔前なら、アル・パチーノあたりが主演し、シドニー・ルメットかポラックあたりが監督しそうな、あるいはシルベスター・スタローンが全米長距離トラック協会のリーダーを演じたノーマン・ジュイソン監督の『フィスト』(78)をほうふつとさせるような映画になっている。81年という時代設定も彼らの映画を意識したのではと思わされる。
アベル役のオスカー・アイザックが前作『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』(13)とは180度違う硬派な役柄を演じ、妻役のジェシカ・チャスティンも一作ごとに異なった顔を見せる。この映画はとにかく二人の素晴らしい演技が見どころとなる。
そして、もう一つの見どころは、見事に再現された80年代初頭の荒れたニューヨークの街並み。オープニングに流れるマービン・ゲイの「インナー・シティ・ブルース」も印象に残る。
浦安で小さな食堂を営む初老の夫婦(津嘉山正種、松金よね子)。だが、ある日妻が病に倒れる。自分の余命を知った妻は“ある作戦”のために、夫に何本かの映画を見て、感想を述べてほしいと頼む。
映画専門チャンネル「イマジカBS」のPRドラマだが、映画の名場面を、見せるのではなく“語る”ことでその魅力を伝えていくという趣向が新鮮。それぞれの映画に込められた妻の思いがにじみ出る、なかなかいいドラマだった。
登場する映画とキーワードは、
『明日に向って撃て!』…自転車
『スタンド・バイ・ミー』…友達
『ロッキー』…支えとなる人。(吹き替えのエイドリアンの声は松金が担当していたという楽屋落ちも)
『フィールド・オブ・ドリームス』…父と子。(同じくケビン・コスナーの声は津嘉山が担当していた)
『ローマの休日』…旅行
『レオン』…愛の形
『スティング』…俳優
『第三の男』…観覧車
『道』…夫婦、無償の愛
個人的には、学生時代にアルバイトをしていた旧東洋現像所=IMAGICAの試写室で、このドラマを見ることで、当時へのノスタルジーや今は亡き映画の友への感慨が浮かんできて困った。新橋文化の跡地で撮影されたシーンもあった。年のせいか、最近涙腺が緩い。
ロバート・アルトマンの山あり谷あり、波乱万丈の監督人生を描いたドキュメンタリー。カナダのプロデューサー、ロン・マンの監督作。ゆかりの人々が“アルトマンらしさ(アルトマネスク)”を語る。
サム・ペキンパーを描いたドキュメンタリーの公開と同時期にアルトマンのものも公開されるという因縁。二人の誕生日はわずか1日違い。ほぼ同時代に活動し、どちらもアウトロー、アウトサイダー、異端と呼ばれた監督という共通点もある。
ペキンパーは途上で若死にしたが、アルトマンはしたたかに生き抜き映画監督としての天寿を全うした。
そんなアルトマンの作品群は良く言えば多彩だが、悪く言えば少々まとまりに欠けるところがある。
『M☆A☆S☆H』(70)『BIRD☆SHT』(70)でブラックコメディーをものにし、『ギャンブラー』(71)『ボウイ&キーチ』(74)というニューシネマの佳作を生み、『ロング・グッドバイ』(73)『ビッグ・アメリカン』(76)では英雄伝説を破壊したかと思えば、『クインテッド』(79)『ポパイ』(80)などという大失敗作も作った。
そんな彼が最も得意としたのは『ナッシュビル』(75)『ウエディング』(78)『ザ・プレイヤー』(92)『ショートカッツ』(94)『ゴスフォード・パーク』(01)など、異常な状況下で雑多な人間たちを描き込む群像劇だろう。
このドキュメンタリーを見ると、群像映画の要、私生活での大家族の長という“ビッグパパ”としてのアルトマンの顔が明らかになる。
そして、オープニングとラストに示されるアルトマンの言葉が、シニカルな作風とは裏腹なロマンチストとしてのアルトマンを見事に浮かび上がらせる。
「映画は砂の城と同じだ。“大きな城を作るぞ”と言いながら、仲間たちとやっと完成させる。だが、やがて波が来て城をきれいに運び去る。それでもその城は皆の胸の中に残るんだ」…アルトマンは自らの製作会社をサンドキャッスルと名付けた。
「若い頃、暇つぶしに映画を見に行った。その映画の主人公は色気も若さもない女優だったが、何故か目が離せなかった。20分後、私は涙を流しながら彼女に恋をしたことに気付いた。『映画には何かがある』と思った瞬間だった」…その映画とはデビッド・リーンの『逢びき』(45)だったという。
どちらもいい話じゃないか。アルトマンは映画が持つ不思議な力を信じていたのだ。
マイク・シーゲルなるドイツ人の映画史家が製作したサム・ペキンパーの生涯を描いたドキュメンタリー。ペキンパーゆかりの人々へのインタビューと映画のメーキングシーンや名場面を中心に構成されている。
まずは「ペキンパーを語る男たち」
『ワイルドバンチ』(69)『コンボイ』(78)のアーネスト・ボーグナイン。笑顔が素晴らしい好々爺になっていた。『ダンディー少佐』(65)『ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯』(73)『戦争のはらわた』(77)のジェームズ・コバーン。カッコいい、渋過ぎるぜ。『ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯』『コンボイ』のクリス・クリストファーソン。ギターの弾き語も披露。もともと歌手だものね。
続いて「ペキンパー組の脇役たち」
『昼下りの決斗』(62)『ダンディー少佐』『ワイルドバンチ』『砂漠の流れ者』(70)『ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯』のL・Q・ジョーンズ、『昼下りの決斗』『ダンディー少佐』『砂漠の流れ者』『ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯』のR・G・アームストロング、『ワイルドバンチ』『ゲッタウエイ』(72)『キラー・エリート』(75)のボー・ホプキンス。
『ダンディー少佐』はこれまでチャールトン・ヘストンのわがままぶりばかりが語られてきたが、今回はL・QとR・Gがそろってヘストンの男気あふれるエピソードについて証言していた。強面のL・Qの背後に監督作『少年と犬』(75)のポスターが貼ってあったのがほほ笑ましかった。ホプキンスは『ゲッタウェイ』共演時のスティーブ・マックィーンの物まねを披露してくれる。彼らにとって、ペキンパーを語ることは俳優である己の誇りについて語ることにつもながるのだろう。
「意外と女にも好かれるペキンパー」
『ゲッタウエイ』『コンボイ』のアリ・マッグロー、『ダンディー少佐』『戦争のはらわた』のセンタ・バーガー。お久しぶり。二人とも年の割にはまだまだ十分にお美しい。『ガルシアの首』(74)のイセラ・ベガはきっぷのいいメキシコのおばちゃんに変身していた。
「外国人の方がペキンパーを理解する?」
『ダンディー少佐』のドイツ人マリオ・アドルフ、『砂漠の流れ者』『わらの犬』(71)『戦争のはらわた』のイギリス人デビッド・ワーナー、そしてペキンパーの盟友のメキシコ人チャロ・ゴンザレスがいい味を出していた。
こうして、さまざまな証言からあらためてペキンパーの人生を振り返ると、確かに彼には不遇な部分もあったが、好き勝手に生き、自滅していった感もある。それでもいまだにこうして多くの人から慕われ、語られるとは、たいした幸せ者だと言えるのではないか、と思えてくる。ジュリアン・レノンの「ヴァロッテ」のMVがペキンパーの監督作でしかも遺作だったことを、このドキュメンタリーで初めて知り、ちょっと切なくなった。
親父のジョンにそっくり。ジュリアン・レノンの「ヴァロッテ」↓
https://www.youtube.com/watch?v=NP4YHXnft1w