田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』

2015-10-07 09:45:51 | 新作映画を見てみた



 舞台は1981年のニューヨーク。アベルは移民ながら一代でオイルカンパニーを築き上げた。そして、さらなる発展を目指して巨額の土地買収を企てた矢先に、何者かによる積み荷のオイルの強奪、脱税疑惑、妻のアナとの不仲など、次々にトラブルに襲われる。やがて銀行から融資を断られたアベルは、絶体絶命の危機に陥る。「正しい道を行くこと」が信条の男が下した決断とは…。

 監督はロバート・レッドフォードの一人芝居映画『オール・イズ・ロスト~最後の手紙~』(13)を撮ったJ・C・チャンダ―。「この映画ではグレイゾーンを描きたかった」と語るように、正義派のアベルが成功を得るためにぎりぎりの選択を迫られて葛藤し、生き方を変えざるを得なくなる姿をハードなタッチで描いている。
 
 一昔前なら、アル・パチーノあたりが主演し、シドニー・ルメットかポラックあたりが監督しそうな、あるいはシルベスター・スタローンが全米長距離トラック協会のリーダーを演じたノーマン・ジュイソン監督の『フィスト』(78)をほうふつとさせるような映画になっている。81年という時代設定も彼らの映画を意識したのではと思わされる。

 アベル役のオスカー・アイザックが前作『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』(13)とは180度違う硬派な役柄を演じ、妻役のジェシカ・チャスティンも一作ごとに異なった顔を見せる。この映画はとにかく二人の素晴らしい演技が見どころとなる。

 そして、もう一つの見どころは、見事に再現された80年代初頭の荒れたニューヨークの街並み。オープニングに流れるマービン・ゲイの「インナー・シティ・ブルース」も印象に残る。

コメント
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