田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

「午後のロードショー」『アンタッチャブル』

2024-11-13 08:30:47 | ブラウン管の映画館

『アンタッチャブル』(87)(1987.10.26.日本劇場)

 

法律=正義ではない

 テレビシリーズの「アンタッチャブル」はうろ覚えでしかない。従って、ブライアン・デ・パルマがどこまで換骨奪胎を行ったのかは定かでないが、今まで彼に付いて回っていた、“ただのヒッチコックもどき”という評価は払拭されたのではないか。

 昔ながらのアメリカの正義を真正面から捉えながら、同時に今風のバイオレンス味も加味した盛り上げ方にはなかなかのものがあった。この際、エイゼンシュタインの『戦艦ポチョムキン』(26)の「オデッサの階段」からの戴きは、デ・パルマ流のサービスとして受け取っておこうと思う。

 この映画は、何より、キャストがいい。まず、禁酒法という一種の悪法が生んだ悪党アル・カポネを、楽しそうに演じたロバート・デ・ニーロの相変わらずの怪演が目を引く。

 対するアンタッチャブルたちも、きっといい俳優になると期待していたケビン・コスナーの奮闘、『アメリカン・グラフィティ』(73)のひ弱な青年役から見事に脱皮したチャールズ・マーティン・スミス、イタリア移民のにおいを感じさせたアンディ・ガルシア、そしてさすがのショーン・コネリーの好演が相まって、魅力的なアンサンブルと、見事なチームワークを生んでいた。

 ただ、正義の側のアンタッチャブルたちが、これだけ魅力的でありながら、対するカポネがあまり憎々しく思えなかったのは、移民の成り上がり故の悲しさや、禁酒法そのものの矛盾を感じさせられたからだろう。だから、最後に法の番人であるエリオット・ネスが勝っても苦さが残るのだ。

 そして、ラストの禁酒法廃止に対するネスの「法律=正義ではない」という一言が皮肉に聞こえ、それに振り回された男たちの空しさを感じさせるなど、デ・パルマにしては珍しく社会派的な面も示される。いよいよヒッチコックの影から解放されたのかと、今後に期待を持たされた。

   

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「BSシネマ」『ナバロンの要塞』

2024-11-13 08:00:21 | ブラウン管の映画館

『ナバロンの要塞』(61)(1972.10.7.~14.土曜洋画劇場)

 第2次大戦下、ドイツ軍はナバロン島の砲台によってケロス島を除くエーゲ海の島々を制圧。ケロス島ではイギリス軍兵士2000人が孤立していた。

 ドイツ軍の攻撃が1週間後に迫る中、連合軍は砲台を破壊するため、登山家のキース・マロリー(グレゴリー・ペック)をはじめとする特別部隊を送りこむが、彼らには次々に危機が降りかかる…。

 アリステア・マクリーンの傑作冒険小説をJ・リー・トンプソン監督が映画化した戦争映画の名作。アカデミー特殊効果賞受賞。

 ペックを中心に、デビッド・ニーブン、アンソニー・クイン、スタンリー・ベイカー、リチャード・ハリス、アンソニー・クエイル、ジェームズ・ダーレン、イレーネ・パパスらが共演。冒険戦争映画としてのスペクタクルな面白さに加えて、俳優たちのアンサンブルも見ものだ。


 

 

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【ドラマウォッチ】「嘘解きレトリック」(第6話)

2024-11-12 11:48:46 | ドラマウォッチ

「だから一緒にいればいいんだよ」
「左右馬先生の優しさが伝わる温かい回だった」

https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1453303

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『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』

2024-11-12 08:17:14 | 新作映画を見てみた

『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』(2024.011.9.オンライン試写)

 真面目な税務署員の熊沢二郎(内野聖陽)は、天才詐欺師の氷室マコト(岡田将生)の巧妙な詐欺に引っかかり大金をだまし取られてしまう。

 熊沢は、親友で刑事の八木(皆川猿時)の助けで氷室を探し出したが、氷室は熊沢にある提案をする。それは熊沢が部下の望月(川栄李奈)と共に追っている権力者の橘(小澤征悦)を詐欺にはめ、彼が脱税した10億円を納税させるので、その代わりに自分を見逃してほしいというものだった。

 熊沢は犯罪の片棒を担ぐことに戸惑いながらも、橘へのある復讐のため、氷室と組むことを決意。2人は癖者ぞろいのメンバーによる詐欺師集団「アングリースクワッド」を結成し、壮大な税金徴収ミッションに挑む。

 『カメラを止めるな!』(17)の上田慎一郎監督が、韓国ドラマ「元カレは天才詐欺師 38師機動隊」(16)原作に、真面目な税務署員と天才詐欺師が手を組んで脱税王から10億円を奪い取るべく奮闘する姿を描いたクライムサスペンス。森川葵、後藤剛範、上川周作、真矢ミキ、鈴木聖奈らが共演。上田監督とテレビドラマ「相棒」シリーズなどの岩下悠子が共同で脚本を手がけた。

 『カメラを止めるな!』の大成功以降、スランプが続いた感があった上田監督が、今回は、冒頭からラストまでの巧みな展開で、見る者を心地よくだますような快作を放った。詐欺師集団のメンバーがそれぞれのスキルを生かし、鮮やなチームプレーで行う信用詐欺の様子を見ていると、『スティング』(74)の楽しさを思い出した。

 また、気弱な税務署員を演じた内野が見せるコミカルな味わい、何を考えているのか分からないところが魅力の岡田、一人で敵役を背負った小澤をはじめ、キャスト陣もそれぞれの持ち場で好演を見せる。

 半ばコメディー仕立てでありながら、脱税など理不尽な問題への怒りが根底にある骨太な映画という言い方もできる。

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【ドラマウォッチ】「海に眠るダイヤモンド」(第3話)

2024-11-11 12:11:30 | ドラマウォッチ

「今回は杉咲花がかわい過ぎた」
「毎回いづみさんが誰だか分からなくなる演出がすごい」

https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1453197

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【ドラマウォッチ】「バントマン」(第5話)

2024-11-11 12:00:09 | ドラマウォッチ

「中日愛を語るシーンだけでいいドラマに見えてきた」
「バントじゃなくてたまにはホームラン狙いにいきましょうよ」

https://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/1453188

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『六人の嘘つきな大学生』

2024-11-11 11:37:05 | 新作映画を見てみた

『六人の嘘つきな大学生』(2024.11.6.東宝試写室)

 大手エンターテインメント企業「スピラリンクス」の新卒採用の最終選考に残った6人の就活生への課題は「6人でチームを作り、1か月後のグループディスカッションに臨むこと」だった。

 全員での内定獲得を夢見て万全の準備で選考日を迎えた6人だったが、急に「残るのは1人だけ。その1人は皆さんで決めてください」という課題の変更が通達される。会議室という密室で、共に戦う仲間から一つの席を奪い合うライバルとなった彼らに追い打ちをかけるかのように、それぞれに当てた6通の怪しい封筒が発見される。

 そして次々に暴かれていく、6人のうそと過去の罪。互いが疑心暗鬼になる異様な雰囲気の中、犯人と1人の合格者を出す形で最終選考は幕を閉じる。

 悪夢の最終選考から8年がたったある日、スピラリンクスに1通の手紙が届いたことで犯人の死が発覚する。犯人が残したその手紙には、「犯人、〇〇さんへ。」という告発めいた書き出しに続き、あの日の全てをくつがえす衝撃的な内容が記されていた。残された5人は、真犯人の存在をあぶり出すため、再びあの会議室に集結する。うそに次ぐうその果てに明らかになる、あの日の真実とは…。

 伏線回収で人気を博している浅倉秋成の小説を基に、就職活動の場を舞台に6人の大学生たちの裏の顔が暴かれていく“密室サスペンス”的な要素と、暴かれたうそと罪の真相を検証しながら、それぞれが自らの人生と向き合っていく“青春ミステリー”の要素を掛け合わせて映画化。6人を演じるのは、浜辺美波、赤楚衛二、佐野勇斗、山下美月、倉悠貴、西垣匠という若手俳優陣。監督は佐藤祐市、脚本は矢島弘一。

 前半のグループディスカッションに備える6人の和気あいあいとした様子が一気に変調する後半とのギャップが目を引く。ディスカッションドラマとしては、密室で有罪か無罪かを裁く陪審員たちの動静を描いたシドニー・ルメット監督の『十二人の怒れる男』(57)やその影響を受けた三谷幸喜脚本の『十二人の優しい日本人』(91)をほうふつとさせるものがある。

 この映画では「美しい月の裏側は見えない」ことに例えて、人の一面だけを見て判断する面接試験に対する疑問を投げかける。自分も面接される側はもちろん、する側も経験し、人が人を選ぶ理由の曖昧さや理不尽さも承知しているので、追い詰められた彼らの姿を見ていると切なくなるところがあった。

 犯人の動機がいささか弱い感じがしたのが難点だが、全体的にはなかなかよくできた青春ミステリーという印象を受けた。

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「BSシネマ」『海峡』

2024-11-11 08:00:11 | ブラウン管の映画館

『海峡』(82)(1982.11.4.有楽座)

 健さんのストイックに耐える姿はいささか食傷気味である。この映画で感動を覚えたのも青函トンネルの貫通シーンぐらいのもので、後はひたすら耐える健さんと、それを陰ながら慕い続ける吉永小百合の姿を延々と見せられるのだから、もう勘弁という感じになるのだ。

 森谷司郎監督は、『八甲田山』(77)の成功以降、『漂流』(81)そしてこの映画と、自然に立ち向かう人間の姿をテーマにしているにも関わらず、スペクタクルの中で人間を描き切れずに空回りの大作を連発している感がある。そこにいつもながらの健さんの姿を置かれれば、見る側は「あーまたか…」という気分になる。単純に夢を成就させた男の姿として見ればいいのかもしれないが、主人公がかっこよ過ぎて違和感を覚える。

 また、脇役の描き方の失敗も大きい。健さん、森繫久彌、三浦友和がメインにしても、青函トンネルなどという一大事業を描くには、それに携わる多くの人々のドラマが不可欠なはずだ。ところが、3人の主役の姿は浮かんでも、その他大勢の人々の姿はあまり浮かんでこない。通り一遍の描写で終わってしまっている。こうした大事業では、その他大勢の力の結集が感動を呼ぶはずなのだが…。題材としては『黒部の太陽』(68)にも匹敵するはずのものだっただけに残念な気がしてならない。木村大作のカメラワークは素晴らしかった。

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「BSシネマ」『南極物語』

2024-11-09 08:00:31 | ブラウン管の映画館

『南極物語』(83)(1983.9.12.日比谷映画)

 南極大陸に残された兄弟犬タロとジロと越冬隊員が1年後に再会する実話を基に創作。自然の力、南極の美しさや怖さ、そして犬たち…。これらは確かによく撮れているし、一見の価値はあるのだが、映画全体から見ると、もう一つ心に迫ってくるものがなかった。良く言えば、『キタキツネ物語』(78)を撮った蔵原惟繕独特の世界と言うこともできるのだが、どちらも人間が欠落しているのだ。

 高倉健(例によって、寒いところでのストイックな演技、ご苦労様)、渡瀬恒彦らが大熱演しているのは間違いない。だが、例えば、『マタギ』(82)で描かれた自然や動物と人間との関係、『八甲田山』(77)における自然対人間の、人間の部分が、この映画からは浮かび上がってこない。

 確かに、犬たちは見事な演技?を見せる。だが『キタキツネ物語』の岡田英次同様、小池朝雄のナレーションなしでこの映画を見たら、犬たちが何をしているのかよく分からない。百歩譲って、人間を全く頭に入れずに、犬中心で見たとしてもやはり駄目な気がする。蔵原監督をはじめとするスタッフは、南極の景観や犬たちに気を取られて、人間ドラマの部分を軽んじ過ぎてしまったのではないか。

 と、くどくどと批判めいたことを書いてきたが、極寒の中でのスタッフ、キャストの苦労も知らずに、ただ完成された映画を見て、その出来不出来を論じてしまっていいのか、という人情は残るのだが…。

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【ほぼ週刊映画コラム】『レッド・ワン』『ヴェノム:ザ・ラストダンス』

2024-11-08 08:13:54 | ほぼ週刊映画コラム

共同通信エンタメOVOに連載中の
『週末映画コラム』

今週は
まさかほろりとさせられるとは…
サンタクロースが誘拐された!『レッド・ワン』
シリーズ最終章『ヴェノム:ザ・ラストダンス』

詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1452857

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