山からの帰りに立ち寄った果物屋でミカンを買うとオヤジが出てて来て話好き。話を聞いてあげるとオマケに柿を1個くれた昔はこういう商売があったなぁと柿を磨きながら感慨にふけっていると左腕が痛い。袖をめくって見て見るとすりむいて血だらけ。アッそうだアケビを取り損なって坂を下りようとしたときに枯木を掴んでしまって枯木が折れて枯木ごと地面にたたきつけられたんだ。忘れてた。オレは負傷者だと思うと腕がさらに痛い。あの時、山の野原で昼飯を食ってたんだ。そしたらシェルパ君が上を見上げて「アケビが笑ってる」と。みんなで見上げると口を開けたアケビが5個高い木の上にぶら下がっている。「登れるかな」と一番体重の軽いガムシャラ君がつぶやく。確か40~50の間の体重だったと思う。みんなは見てるだけだったけどガムシャラ君が木に登る。細い木だ。その先にアケビはある。地上からおよそ8mの高さ。身は軽いんだけど力というか腕に力がない。途中で落ちそうになったので助けに行く。木までの土手というか坂を上る。こんな木なんかオレの体重では登れないから下で支える。ガムシャラ君があきらめて降りてきたところを支えて補助。それからオレが先に坂を下りたんだ。急勾配だったから木を持ったところその木が枯れていたんだ。藪で暗くて枯れてるかどうかわからなかった。その木に全体重を預けたもんだからポキッといって坂の下までダイブ。帽子は吹っ飛び受け身なく肩からズン。幸い地面がフカフカの土だったから事なきを得たが一歩間違えばアケビを取り損ねて半身不随ってことに。みんなに「あほだ、馬鹿だ」と言われただろうな。それでも俺たちは少年のようにキラキラと輝いてあのアケビがどうやったらとれるか夢中になって話し合った。いやぁ、久しぶりに面白かったなぁ。下に降りていくと「植物採集厳禁」という看板のオチがあったけど自然の恵みを見つける取るって原始人になったみたいで面白いね。すりむいた腕は風呂に入るとヒリヒリいたんだけどね。少年の頃の空の高さを思い出していた。
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