a letter from Nobidome Raum TEE-BLOG

東京演劇アンサンブルの制作者が、見る、聞く、感じたことを書いています。その他、旅公演や、東京公演情報、稽古場情報など。

西へ、東へ。

2011-10-17 18:07:37 | 旅公演
いよいよ、旅公演が本格的になってきました。

昨日出発した『銀河鉄道の夜』班は、
明日長崎で公演です。
そろそろ仕込みが始まるころですね。

今日出発した『ラリー』班は、
明日は青森・弘前で公演です。

まさに、西と東、真逆の方に向かって、
公演に旅立っています。

ここまで極端なのは、あまりないのですが、
2班旅に出る中、
劇団では夕方まで、
スープ劇場Ⅴ『野の涯』の稽古でした。
稽古場には若い研究生たちがいて、
劇団も、少しずつ層が厚くなってきたなぁと、
感慨もひとしおです。

公演に関してはHPの下見案内をご覧ください。

クリスマス公演のチケット予約もスタートしております。
また、
まだここには書けない、
来年の企画も東京演劇アンサンブルらしい企画を考えています。

みなさまのお近くでの公演の時は、
ぜひ、ご覧いただければと思っています。

スープ劇場Ⅴ 『野の涯』 公演のお知らせ

2011-10-13 16:29:14 | 芝居小屋企画
2011年11月19日(土)14時開演
ブレヒトの芝居小屋

野の涯
作・演出=広渡常敏
演出補=志賀澤子

出演=伊藤克


自由民権運動下に起こった秩父事件。
困窮に追われた農民たちによって結成された秩父困民党。
彼らは自ら独立し、『自由自治元年』を掲げた。
非暴力を唱え、
減税や、借金帳消しなどを訴えた。
しかし、
その理想郷の夢はあっという間に潰えてしまう…。
そこから、長い逃亡生活の末、
北海道に行き着いた井上伝蔵を中心に、
“陸沈”した人々の物語。

広渡常敏が、
ラジオドラマとして書き下ろしたシナリオを、
独り芝居として脚本化した。
1995年に伊藤克により初演した作品。
久しぶりの上演となります。

スープ劇場での上演ですので、
終演後にはアフタートークを準備しています。

ぜひ、足をお運びください。

料金
一般=1,500円
ケンタウルスの会会員=1,000円

全席自由

お申込み・お問合わせ
東京演劇アンサンブル劇団事務所 TEL:03-3920-5232

アントウニオウへの手紙

2011-10-03 12:44:06 | 東京公演
アントウニオウからメールが来ました。

「僕のお客さんから届いたシャイロックの感想文です。
もしもお役に立つようなら、レターなどに転載OKと、本人の許可をもらっています。
ちなみに名前の公表可です。」
竹口



とのことでした。
こちらで紹介させていただこうと思います。


今年
3月11日の東日本大震災で福島第一原発が事故を起こした際、
仕事を放り出して真っ先に東北、
あるいは日本から逃げ出したのはフランス人と中国人だと聞いた。
なぜか?
フランスは原発先進国であるがゆえに、
原発事故の恐ろしさを熟知しているからであり、
中国人は「お上(政府)の言うことは信じられない」環境に育ったからだという。

では、われわれ日本人はどういう風に海外から見られたかといえば、
大震災直後にもパニックに陥らず、
秩序を乱さず、
他人を思いやると賞賛されたと聞く。
だが本当にそうだろうか?
逃げ出さなかったフランス人や中国人もいたはずだし、
パニックになった日本人もきっといたはずだ。

われわれはしばしば「だから中国人は!」などと総括しがちだ。
しかし、そこにいるのが「中国人」ではなく、
「李さん」という親しい友人だったらどうだろう?
友人に「君は中国人だからこうなんだ」と決め付けるだろうか?
歴史的な背景から時に反目しあう中国人と日本人であっても、
名前があり、
血の通った付き合いのある友人を国籍や民族で差別したりはしないはずだ。

東京演劇アンサンブルが今回上演した「シャイロック」は、
まさにそうした「人は人として他人にどう向き合うのか」ということを問いかけた芝居だった。
そこに出てくるシャイロックとアントウニオウは、
人種の壁を越えた親友であるがゆえに苦しみに突き落とされる。
イギリス人作家アーノルド・ウェスカーの描く苦悩は、
太宰治や夏目漱石などとも通じる極めて日本的なものでもあった。
それはこのテーマそのものが人種を超えて普遍的なものであることを気づかせる。

一方で、心の奥深くしみついた憎しみによって壊れていく恋人の愛や届かない親から子への愛、
といった「かなわない愛情の形」も絡み、
人を愛するということの難しさも考えさせられた。
シャイロックが娘のジェシカへ注いだ愛情は、
娘にとっては過分で疎ましくあったかもしれない。
しかし、われわれは知っている、
ジェシカはその愛情にいつかきっと気づく日がくることを。

東日本震災で壊滅的なダメージを受けた今、
日本は新たな「絆」を必要としている。
愛は見返りを求めない。
シャイロックが命がけで守ろうとした友情、真実の愛、には覚悟すら必要だった。
それが自分にあるか、もういちど問いただしてみようと思う。

(木本一彰)

『シャイロック』観客アンケートより…2

2011-10-01 16:10:34 | 東京公演
東京演劇アンサンブル公演、
『シャイロック』にご来場いただいたみなさま、
まことにありがとうございました。

後半のアンケートもいくつかご紹介したいと思います。





演技はもとより、
場面転換のスムーズさにかなりの練習をされている片鱗を感じました。
一番最初の場面など、
音もなくあらわれた書籍に、マジックを見ているような驚きを覚えました。
また、衣裳がとても素敵でした。


松下さんのセリフにぐっとひきこまれました。
かなりの長ゼリフなのに、
テンポが良くて、
長ゼリフッぽさを感じさせないです。
当時のヴェニスの空気感が良く出ていて、
照明、舞台美術も含めて、ひたりました。




つい先日、本家シェイクスピアの『ヴェニスの商人』を見ました。
この『ヴェニスの商人』は、
とても上演数の多い芝居ですが、
同じ芝居なのに役者さんや演出方法が違うと舞台の衣裳がずいぶん違うことに驚いていた処でした。
その観劇後、ふと目にした新聞にこの『シャイロック』が紹介されていたので、
すぐにWebで申し込みました。
シャイロックとアントーニオが親友同士だった、
という前提がとても新鮮に感じられました。
実際に『シャイロック』を拝見して、
最初からぐいぐいと惹き込まれました。
まずはとにかくお芝居がうまい!
シャイロックとアントーニオが本の目録を作成している場面。
せりふまわしのうまさ、
口跡の明晰さ、
間の取り方などなど、素晴らしいです。
出だしのあの場面でもう芝居と役者さんの虜になっていました。
本当です。
芝居が跳ねた後、
親しく役者さんとお話がしたかったし、
このアンケートにも提出したかったのですが、
この日はすぐ後に予定があったので、
さっさと失礼してしまいました。
残念です。
いい戯曲でいい芝居でしたが、
難を云えば冗長すぎるところが何か所もあるところでしょうか。
役者さんたちもセリフをおぼえるのがとてもたいへんでしたでしょうが、
こちらも集中力が続かず聞き飛ばしてしまったようで、
あとあと自分の中で混乱してしまった処がありました。
だからという訳ではないのですが、
幕間に原作の脚本を買い、
帰りの電車で脚本を読んで、
復習しがてら確認しました。。。
いずれにしてもいいお芝居をありがとうございました。





まず印象に残ったのは、この芝居には、多くのさまざまな階層の人物が登場してくるが、
各々が皆役柄にふさわしい衣裳をまとっていたことである。
舞台装置が簡素であるだけに、
なおのことその事が作品の時代的雰囲気を醸し出しているような気がする。
それはさておき、
私たち日本人にとって、
ヨーロッパにおけるユダヤ人の存在というのが、
どういう意味を持っているのかということは、なかなかわかりにくい。
この問題の根源には、キリスト教誕生以来の歴史的、宗教的背景が存在しているのではないかと思うのである。


まだまだアンケートを頂いていますが、
とりあえずご紹介はこの辺で……。
また、舞台芸術の情報サイトCorichにも、
感想をアップしてくれている方もいます。
http://stage.corich.jp/stage_done_detail.php?stage_main_id=23085
こちらもぜひご覧ください。


劇団は、
明日からは『ラリー』班が岩手に出発します。
明後日から『銀河鉄道の夜』班は静岡です。
秋は、どちらも旅公演が詰まっていたりします。

また、旅公演の案内も更新しますので、
ぜひ、足をお運びください。

ご来場、誠にありがとうございました。