『どん底』の公演初日まで、残すところ10日をきりました!
そんな今日は、どん底に関係する2つの文章を紹介したいと思います。
まず、ひとつめは今回の公演『どん底』の演出家の三由寛子の文章です↓↓
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「いま、ぶつけよう。アンサンブルの『どん底』」
6.23、沖縄慰霊の日の安部首相演説に対し、
「帰れっ!」「何しにきたっ!」という怒声が響いた。
それに対し、ツイッターなどで「沖縄県民は民度が低い」という発言があったという。
そもそも差別意識の含まれる「民度」という言葉が、
深い思考も想像力もないまま使われ、SNSなどによって公にされる。
そのような内実の無いコトバたち、
熟考や当事者意識のないコトバたち、
それが、今の政権を支えている気がしてならない。
私たちの演劇というのは、それとは真逆の行為だ。
はじめは印刷された「記号」でしかないモノたちを、
俳優がひとつひとつ自分の言葉にしていく。
自身の想像も及ばないような人間の生き方に飛び込み、血肉化していく。
インクであった「文字」が、
かけがえのない登場人物の、
かけがえのない役者ひとりひとりの言葉になっていく。
血肉化された言葉は、
温かみと、溢れる内実を持ち、
その後の俳優の生き方にのっぴきならぬものとなる。
稽古場で行われるその作業こそが、
いま私にとって、現政権に抗うことになっている。
今までアンサンブルは、
沢山の、ほんとうに大切な人たちと出会った。
彼らの絶望と怒りと闘いを前に、
当事者でない私たちは、言葉を失くす。
この間の6.14TEE憲法集会での、樽川和也さんの語り――福島県・須賀川の農家――汚染された作物・自死した父・東電、
国への思いを話された――あの語りを前にして、
自分たちの「表現」の薄さ、
無力さを感じた劇団員も多いのではないか?
「表現にまつまるいやらしさを排除しよう」
これは、広渡さんがずっと言ってきたことだ。
でも、ならそれは、どうすれば!?
私たちは「当事者」にはなれない。
役の人物になり替れるわけじゃない。
だけど、だからこそ、「当事者」「登場人物」の怒りの芯の部分、
魂に飛び込むことから始めるしかない、
それも言葉を通してだ。
それが役者の、役をやる、という仕事ではないだろうか。
110年前から、国境を越え、時代を越えて上演されてきた『どん底』。
作者の、当時のロシア民衆の願いは何だったのか。
この110年、上演に携わってきた人々の、
そして、いまの私たちの願いは何なのか、
『どん底』にぶつけよう。
時や地理を隔てても同じ人間、
かれらの叫びが分からないわけがない。
「生きさせろ」「人間というのは、もっといいものではないのか?」。
【人権】【人間の尊厳】。
誰かに「積極的人権主義」などと言い換えられる前に、
いま、この言葉に、この人類の英知・大発見に、魂をあたえよう。
2015.6.28 三由寛子
この文章は劇団で発行している機関紙に載せたものです。
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そしてもうひとつ紹介する文章は、
6月14日にブレヒトの芝居小屋で行った憲法集会でコーディネーターとしてお話しして下さった馬奈木厳太郎さんの文章です↓↓
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こんにちは。弁護士の馬奈木厳太郎です。
“象徴的貧困”(スティグレール)と“どん底”(ゴーリキー)(太文字)
貧困をネットで検索すると、
相対的貧困、貧困ビジネス、自己責任、経済的徴兵制などさまざまなトピックが示されます。
相対的貧困とは、等価可処分所得が全人口の中央値の半分未満の者を指し、
国内の所得格差に注目する指標です。
数年前の調査では、年収125万円以下を指し、人口の約16%が該当。
日本はOECD30カ国のうち4番目に貧困率が高い国となっています。
こうした貧困が、子どもや労働者、高齢者などの間で拡大しています。
一方、生産や経済生活における貧困とは異なる文脈で、
“象徴的貧困”が語られることがあります。
これは、過剰な情報やイメージを消化しきれない人間が、
貧しい判断力や想像力しか手にできなかった状態をいい、
仕事、通勤、睡眠以外のほぼ全ての時間がテレビやネットに費やされる状況をとらえています。
こうした事態は、経済生活における生産手段の機械化による「作る知」の喪失に対し、
消費者における「生きる知」の喪失として語られ、
「生きる知」はもはや自己の実際の経験によってではなく、
マニュアルやマーケティングによって決定されてしまい、
その結果「生きている」という存在感覚自体が喪失されるとされます。
理性的な判断が嫌悪され、
シニシズムやニヒリズム、ゼノフォビアが蔓延する現代の心的生活の悲惨を表すものです。
相対的貧困と“象徴的貧困”は現代日本の一断面を示すものですが、
経済と精神の陰惨さが何をもたらすのか、
その脱却の展望をどう見出すのかをめぐっては、多くの議論があるところです。
1954年に創立された東京演劇アンサンブルは、
「演劇行為の中に人間の変化の契機をつくる」ことを標榜する劇団ですが、
この9月10日からゴーリキーの“どん底”を公演します。
彼らはこれらの問題を、ことばといのち、そして人間の尊厳ととらえ、
彼らなりの模索と格闘を表現することにしています。
20世紀初頭のロシアの経済生活の貧困は、
同時に新時代への息吹を準備するものであり、
私たちにとっても示唆的だと思われます。
興味のある方は、よろしければ公演をご覧ください。
私自身も何かしらを得たいと期待しています。
こちらの文章は馬奈木さんの持っている連載のコラムで紹介して下さった文章になります。
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1901年〜1902年にかけてマクシム・ゴーリキイが書いたこの脚本が名作といわれ、
今に至るまで様々な国、様々な劇団、また映画などで取り上げられ、演じられています。
現代に通じることがたくさん詰まった【どん底】お見逃しのないよう!!!
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東京演劇アンサンブル公演
どん底
2015年9月10日~20日
ブレヒトの芝居小屋
作……M・ゴーリキイ
訳……神西清
演出……三由寛子
音楽……池辺晋一郎
装置……三木元太
照明……真壁知恵子
効果……大場神
衣裳協力……竹内陽子
宣伝美術……本多敬
舞台監督……三木元太
効果オペレーター…篠原祐哉
制作……小森明子・太田昭・辻尾隆子
制作チーム……TEE運営委員会
演出助手 ……奈須弘子・永濱渉
舞台監督助手……入江龍太・雨宮大夢・大橋隆一郎
料金
前売一般=3800円 前売学生=3000円 Low Price Day=2500円
全席自由
■キャスト
ミハイル・イワーノヴィッチ・コストゥイリョフ=竹口範顕
ワシリーサ・カールポヴナ=折林悠
ナターシャ=星野瑠莉
アブラーム・メドヴェージェフ=尾崎太郎
ワーシカ・ペーペル=小田勇輔
アンドレイ・ミートリイチ・クレーシチ=本多弘典
アンナ=冨山小枝
ナースチャ=山崎智子
クワシニャー=名瀬遙子
ブブノーフ=志賀優寛
サーチン=大多和民樹
役者=熊谷宏平
男爵=坂本勇樹
ルカ=浅井純彦
アリョーシカ=上原和幸
クリヴォイ・ゾープ=和田響き
だったん人=三瓶裕史
浮浪人たち=三浦潤子・上條珠理・正木ひかり・永野愛理・雨宮大夢・大橋隆一郎・永濱渉
9/10 Thu 19:00
9/11 Fri 19:00◆1
9/12 Sat 14:00
9/13 Sun 14:00
9/14 Mon ×××
9/15 Tue 19:00★
9/16 Wed 19:00★
9/17 Thu 19:00
9/18 Fri 19:00◆2
9/19 Sat 14:00
9/20 Sun 14:00
◆1=アフタートーク=堀潤さん
◆2=アフタートーク=白井聡さん
★=Low Price Day=2500円均一
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