a letter from Nobidome Raum TEE-BLOG

東京演劇アンサンブルの制作者が、見る、聞く、感じたことを書いています。その他、旅公演や、東京公演情報、稽古場情報など。

ある家族、2つの物語。

2012-08-31 16:28:05 | 東京公演
いま、稽古場で格闘が続いている2つの作品は、
ある家族の物語である。
『大麦入りのチキンスープ』は、
1936年~1956年という、
第二次世界大戦前から戦後約10年。
ロンドンのイーストエンド舞台にしたサラ・カーンとハリイ・カーンの夫婦の物語である。


一方『ぼくはエルサレムのことを話しているのだ』は、
1946年~1959年という、
いわゆる戦後から、イギリスの片田舎ノーフォークに移住した、
サラとハリイの娘アダとその夫デイブの物語である。


この2作に『根っこ』を加えたものが、
ウェスカーの初期三部作と言われている。
今回は、特に“カーン一家の物語”に焦点を当てたこの2作を同時に上演する。

そのため今回は、ほとんど同じ舞台装置を使って、
2作品を上演するのだが、
初めて東京演劇アンサンブルの公演に参加していただく、
舞台美術の池田ともゆきさんには、
ずいぶん骨を折ってもらった。
その甲斐あって、抽象的な舞台美術でありながら、
まったく見違えるような空間を創出することができた。
その辺も期待していただきたい。
演劇ならではの楽しみだ。

そして、ブログのほうでは出演者を紹介していこうと思いますが、
せっかく2作品、同じ家族のお話ということで、
それぞれ違う俳優が、一つの役をやることになります。
ですので、
その辺で紹介できればな、と。

まずは、サラ・カーン。
カーン家の母親。
ロンドンの下町ともいえるイーストエンドに住んでいるカーン家。
ヨーロッパにファシズムの影が色濃くなってきたころ、
彼女は行動派のコミュニストとして、
デモに参加し、
2人の子どもを育てていた。
まさに革命前夜とも思える高揚した運動が、
徐々に失速し、
戦争へと向かっていく。
彼女は子育てをし、
理論ばかりで行動しない夫とのけんかをし、
希望を見失いそうな日々の暮らしの中でも、
彼女は、地に足をつけて、
変わらぬ思いを抱き生きていく。
しかし彼女の生活が決して楽で裕福なわけではない。
夫のハリイが卒中で倒れ、寝たきりになっても、
娘のアダが、理想主義に生きようとイギリスの郊外に引っ越すことになっても、
彼女の明るさが、強さが、家族の芯に通っていることが、
カーン家を支えている。

そんなサラ・カーンを、
『大麦入りのチキンスープ』では、名瀬遙子が演じる。

彼女芝居に向かう姿勢が、
そのまま、このサラにかぶってしまう。
そういう意味で、絶妙なキャスティングだろう。
この生きにくい世界で、
それでもなお、希望を胸に生きようとする姿は、
この芝居の芯を担うに必然ともいえる姿だと思う。
久しぶりに、彼女の“勇姿”が観れて、嬉しい。

そして、
『ぼくはエルサレムのことを話しているのだ』では、真野季節がサラ・カーンとなる。

いまやベテランと言える女優となり、
『ラリー』の旅公演でも大先輩として、
若い俳優たちに少なからぬ影響を与えている。
はかなさと、骨太さという両面を持った彼女。
新しい生活を始める娘夫婦たちを見守る姿は、
やはり、彼女そのものであると感じずにはいられない。
赤い傘の似合う彼女を、見逃さないでほしい。

いよいよ公演まで1週間を切りました。
できれば、両作品見てほしいです。
時系列から行けば、『大麦…』→『ぼくは…』なのだが、
きょう、たまたま『ぼくは…』→『大麦…』の順で見たら、
これが意外に面白い!!
どちらのパターンでも、お勧めです。

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ウェスカー連続上演

アーノルド・ウェスカー/作 木村光一/訳

大麦入りのチキンスープ  入江洋佑/演出 
ぼくはエルサレムのことを話しているのだ 志賀澤子/演出

2012年9/6~17
◆=大麦入りのチキンスープ
●=ぼくはエルサレムのことを話しているのだ 
*=Low Price Day
※=アフタートーク
9/6木 19時◆
9/7金 19時●
9/8土 14時◆/※/19時● 
9/9日 14時●/※/19時◆
9/10月 19時◆*
9/11火 19時●*
9/12水 19時●
9/13木 19時◆
9/14金 19時◆
9/15土 14時●/※/19時◆
9/16日 14時◆/※/19時●
9/17月 14時●
開場は開演の30分前

会場:ブレヒトの芝居小屋(西武新宿線武蔵関より徒歩7分)
全席自由

前売(一般)3800円/前売(学生)3000円
当日(同一料金)4500円
10日(月)と11日(火)はロープライスデー 2500円均一
2作品セット券(2作品セット)=6200円

公演の詳細はHPへ
webチケットの申し込みはこちらへ


初日まで、10日前。

2012-08-28 13:54:51 | 東京公演
ウェスカー連続上演

アーノルド・ウェスカー/作 木村光一/訳






大麦入りのチキンスープ  入江洋佑/演出 
ぼくはエルサレムのことを話しているのだ 志賀澤子/演出


2012年9/6~17
◆=大麦入りのチキンスープ
●=ぼくはエルサレムのことを話しているのだ 
*=Low Price Day
※=アフタートーク
9/6木 19時◆
9/7金 19時●
9/8土 14時◆/※/19時● 
9/9日 14時●/※/19時◆
9/10月 19時◆*
9/11火 19時●*
9/12水 19時●
9/13木 19時◆
9/14金 19時◆
9/15土 14時●/※/19時◆
9/16日 14時◆/※/19時●
9/17月 14時●
開場は開演の30分前

会場:ブレヒトの芝居小屋(西武新宿線武蔵関より徒歩7分)
全席自由

前売(一般)3800円/前売(学生)3000円
当日(同一料金)4500円
10日(月)と11日(火)はロープライスデー 2500円均一
2作品セット券(2作品セット)=6200円


まもなく稽古が佳境な今度の公演は、
イギリスの劇作家アーノルド・ウェスカーの三部作から、
2作品を同時に上演します。

同じ舞台装置で、同じ家族の物語。
少し時間軸と焦点をずらして描かれている作品です。
まだ、社会主義という思想が理想であったころ、
そう生きようとした人たちの物語。
希望と挫折と未来が描かれています。

思想というには余りにも稚拙な政治と社会に浸食されているこの国で、
なお、いま、理想の未来を思い描くことができるのか?
今を生きるすべての人たちに観てほしい作品です!!
アフタートークも決まりました。
そちらもぜひぜひご注目ください。


作品HP
http://www.tee.co.jp/stage-shoukai-image/wesker/wesker.html


アフタートーク日程(修正ズミ)
9月8日(土)14時開演 大麦入りのチキンスープ終演後
木村光一(演出家) × 入江洋佑(東京演劇アンサンブル)
9月9日(日)14時開演 ぼくはエルサレムのことを話しているのだ終演後
七字英輔(演劇評論家) × 志賀澤子(東京演劇アンサンブル)
9月15日(土)14時開演 ぼくはエルサレムのことを話しているのだ終演後
川成洋(大学教授) × 入江洋佑(東京演劇アンサンブル)
9月16日(日)14時開演 大麦入りのチキンスープ終演後
山本健一(元朝日新聞記者)× 志賀澤子(東京演劇アンサンブル)
 

夏は終わり・・・?

2012-08-08 16:37:46 | Weblog
というわけではありません。

夏の前半に、
もろもろ公演が立て込んでおり、
怒涛の期間を過ごしていました。
ブログでもお知らせしていた通り、
劇団の公演にとどまらず、
非戦を選ぶ演劇人の会や、
児演協などなど、
多彩な公演にかかわりました。

携帯に残っていた写真の紹介とともに、
簡単な報告です。

児演協新人合同公演『パーシーとアラビアの王子』
沖縄でのけいこ風景。
東京演劇アンサンブルからは、三木元太と木戸真紗美が参加しました。


沖縄では、児演協の講座も行われました。


沖縄ですから、まぁ、こんなことも・・・。


児演協九州講座メンバーです。
半分は、もう、帰京してしまいましたが…。


児演協合同公演のもう1作品は、
『空の村号』という作品です。
作=篠原久美子、演出=関根信一、
東京演劇アンサンブルからは洪美玉が参加しました。
2011年3月11日以後の日本の児童・青少年演劇が、
何ができるか。
そのひとつの形として、
提示したドラマリーディングでした。
同時期に開催していたキジムナーフェスでは、
『災害とアート~芸術家の役割は何か~』
というシンポジウムが行われ、
パネリストの一人、
ドイツのステファン・フィッシャー・フェルスさんが、
ドイツの実践ではなく、
日本の実践の紹介をしたそうです。
その最後に、
「自分が観劇した篠原久美子の書いた『空の村号』の上演が素晴らしかった」と発言されたそうです。

そして、それを聞いた会場の外国人で、
『空の村号』を観劇した人たちから、
大きな拍手が起こったとのことです。
本当に、うれしい限りです。
大きな収穫だったな、と思います。


劇団では、
『ラリー ぼくが言わずにいたこと』の六行会フェスティバル公演と、
『目をさませトラゴロウ』の公演がありました。


『目をさませトラゴロウ』は、
福島の喜多方発21世紀シアターにも参加し、
たくさんの子どもたちを熱狂させました。
ほんと…熱狂でした。


そして、昨日帰京し、
トラゴロウもしばしのお休み。

洗って、干されてます。



そんなこんなで、
とにかく前半に目白押しだった公演が、
一段落。
今日からは、
ウェスカー作品上演に向かって、
まっしぐら!!
そちらもご期待ください。

夏の公演のお知らせ…4

2012-08-05 09:15:09 | 旅公演
遅くなりました。
夏のもろもろの公演、
ラストを飾るのは、
『目をさませトラゴロウ』
喜多方公演です。

8月6日
13時半~
喜多方プラザ・大ホール


喜多方発21世紀シアターに参加します。

このフェスティバルは、
日本の演劇フェスティバルの中でも、
官民一体となったすばらしい運営で、
参加するのが楽しみなフェスティバルです。

上演の喜びと共に、
フェスティバルそのものを楽しみたいです。


とっても楽しいサイコーの舞台です。
子どもから大人まで、
最後まで楽しめます。

喜多方にいらっしゃる人、
急に思い立った人、
ご来場をお待ちしております。