埼玉県新座市、野火止の産業道路付近——
工場が建ち並ぶ中、異彩を放つ「東京演劇アンサンブル」の看板。

ここでは3月上演予定の『白い輪、あるいは祈り』の稽古真っ最中だ。
「このど助平!」
力強い声が稽古場に響き渡る。

——俳優・永野愛理の魅力に迫る!

____________________________________
熊本県出身の永野は、県内のこども劇場の会員で幼少期から演劇に触れてきた。

小学校6年生の時からロックバンドGLAYの大ファンに。
バンギャ(バンドギャル)の道を歩む。

高校卒業後は上京し、コンサート制作の専門学校のスタッフ科に進学。
上京後は学生寮で生活していたが、妹が東京の大学に進学するタイミングで二人暮らしをすることに。
引越しを手伝いにきた母の一言がきっかけで、人生が変わる。

永野:普段は市政だよりなんて家に届いてても開かなかったんだけど、たまたまお母さんが読んでて、「この辺で演劇のワークショップやってるんだね〜」って。専門学校卒業の年で来年は就職だから、その前に趣味で習い事みたいなのやっておきたいなと思って応募しました。
西東京市保谷こもれびホール主催の演劇ワークショップには、
東京演劇アンサンブルの劇団員が講師として参加していた。
劇団員の町田聡子は、永野に初めて会った時のことをよく覚えているという。

町田:初日のオリエンテーションの時に、劇団員から「皆さんから何か質問はありますか」って聞いたら、みんな手あげない中で、愛理が、真っ直ぐ手を挙げて「はい!」って。それがすごく印象深かったの。

永野:わたし何言ったかひと言も覚えてない(笑)
その1年後、劇団代表の志賀澤子からの勧めで東京演劇アンサンブルに入団。
1年間の研究生期間を経て2012年、劇団員に。
劇団員3年目、デーア・ローアー作『無実』のメインキャストに抜擢される。

永野は盲目のポールダンサー、アプゾルートを演じた。
永野:劇団に入ったばかりの頃は、周りの同期と比べて専門学校とか他の場所で演技経験がなかったのがコンプレックスで。
『無実』の時は自分に能力があったからというよりも成長するために重要な役に選ばれたと思うんだけど、こんな役を任せられて身が引き締まる思いがしました。
その後も数々の舞台で活躍。

『消えた海賊』マルガリータ(2016年〜)

『おじいちゃんの口笛』ウルフ(2020年〜)

『宇宙のなかの熊』ポリー(2021年〜)
道具や衣裳の製作など、俳優以外の仕事も妥協せず熱心に取り組む姿に、劇団の後輩も刺激を受けている。
研究生の林亜里子は、永野について…

林:入団したばかりの頃に初めて参加した大道具製作で、ペアになって教えてくださった先輩が愛理さんでした。
手先が器用で教え方も分かりやすくて、その後も色々とお世話になりすぎているのですが…劇団の先輩としてはもちろん、人として心から尊敬しています。
まだ出会って2年も経っていない私なんかが語るのは恐れ多すぎるのですが!
もう!
正直に思っていることを申し上げますと!!!
芯の強さがありながら、謙虚で、自分を大きく見せようとしない、飾らない、自然体。
日常生活でも舞台上でも愛理さんのそういう所がとても素敵なんです。
まもなく入団15年目に突入する永野。

永野:昔の台本を読み返して、なんで当時こんなこともわからなかったんだろう!?とか、あのとき演出家が言ってたのってこういうことだったんだ!とか、昔はわからなかったことがわかるようになっていることに気がつくと、少しずつ進歩しているのかなと感じます。
____________________________________
東京演劇アンサンブルは昨年、劇団創立70年を迎えた。
3作にわたる創立70年記念公演で、永野は2作連続主演を務めた。

第1弾『茶番劇 行ったり来たり』ハヴリチェク(2024年3月)

第2弾『ヤマモトさんはまだいる』ニノ(2024年9月)
そして今年3月の第3弾『白い輪、あるいは祈り』では、ヒロインのグルシェを演じる。
グルシェは内乱の中で置き去りにされた赤子を拾い、我が子として育てることを決心する。

少女の顔から母親の顔へと変化してゆくグルシェ。
毎日、目が離せない。

ぜひ劇場でご覧ください。

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


東京演劇アンサンブル創立70年記念公演Ⅲ
白い輪、あるいは祈り
〜『コーカサスの白墨の輪』(ベルトルト・ブレヒト)より〜
鄭義信/作・演出
2025年
3/19 (水) 19:00
3/20 (木) 14:00/19:00★
3/21 (金) 14:00/19:00
3/22 (土) 14:00/19:00★
3/23 (日) 14:00
※★=Low Price Day
チケット(全席自由)
前売一般/4,300円
前売U30/3,300円
ペア/8,000円
Low Price Day/3,000円
当日/4,800円
お申し込みはこちら
スタッフ
脚本・演出/鄭義信
音楽/久米大作
舞台美術/池田ともゆき
衣裳/木場絵里香
照明/増田隆芳
音響/藤田赤目
振付/広崎うらん
擬闘/栗原直樹
メイク/高村マドカ
歌唱指導/吉村安見子
舞台監督/三木元太
宣伝美術/小田善久 伊波二郎
制作/太田昭 小森明子
出演
アツダク/洪美玉
グルシェ/永野愛理
シモン/雨宮大夢
浅井純彦
菊地柾宏
公家義徳
志賀澤子
鈴木貴絵
竹内茉由架
戸澤萌生
永濱渉
奈須弘子
二宮聡
林亜里子
原口久美子
彦坂紗里奈
福井奏美
細谷巧
町田聡子
真野季節
三木元太
公演HP