TENZANBOKKA78

アウトドアライフを中心に近況や、時には「天山歩荷」の頃の懐かしい思い出を、写真とともに気ままに綴っています。

読書三昧 滝口康彦氏の短編歴史小説

2012年12月23日 | エッセイ


 今日はクリスマス。
予報通りに西高東低の冬型が強まり、ホワイトクリスマスとなった。
今日の雲仙普賢岳はこんな感じだろうかと、今年2月に登ったときの写真を貼ってみた。
足の怪我さえなければ今頃は…。

 この3連休は、山にこそ登れないが実に充実している。
足が思うように動かない分、読書三昧。
思う存分に滝口康彦氏の小説を堪能しているからだ。

 今図書館から借りているのは、昭和56年に出版された「恨み黒髪」と
昭和54年の「葉隠無残」の2冊。
この1週間で短編を合計で14作読んだことになる。
老眼の進んできた目は悲鳴をあげているのだが、心は感動で打ち震え、頭は喜び冴えわたっている。

 昨年出版された文庫本「一命」を、ある書評で「滝口康彦氏のベスト版」と紹介しているのだが、それはどうだろうか。
確かに、「一命に」に収録されている6編はどれも珠玉の歴史小説に相違ないが、氏の作品群から「ベスト」として何点かを抽出することは容易なことではないからだ。
先に挙げた2冊の中からだけでも、「恨み黒髪」「秋月の桔梗」「切腹にあらず」「遺恨の譜」「血染川」「朽ち葉の記」と、どれも「ベスト版」に選ばれてもおかしくない傑作である。2冊読んだだけでこれである。これからどんな作品に出会えるか楽しみでならない。
 ところが、残念なことに、先に挙げた「一命」をのぞいて、氏の本はそのほとんどが今では絶版になっている。件の2冊だって図書館の書架には置いてなかった。図書館備え付けのパソコンで蔵書を検索し、別階の保管庫にあるものを出してもらったのである。
 氏の作品が私の住む諫早図書館にないわけないと思っていた。
作品が優れていることもだが、何よりも氏は長崎県のご出身だからだ。
地元が生んだ偉大な作家の作品を地元の図書館に置いてないわけがない。
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邂逅 滝口康彦氏

2012年12月23日 | エッセイ


 写真は10月に鹿児島に行ったときのもの。
太陽がまさに山に隠れようとする瞬間の輝き、名付けて
「ダイヤモンド薩摩富士」

 今日は天皇誕生日。この3連休は、霧氷を見に冬山に登ろうと楽しみにしていたのだが…。
家から1歩も出ることなく読書三昧。

 1週間前の12月16日、レクリェーションでバレーボールをしていて
右足首をねんざする。
いまだに、内出血の跡も痛々しく、どす黒くハムのように腫れ上がっている。
しばらくは松葉杖生活で車の運転もできない。

 そんなわけで、今は山をあきらめ、読書にハマっている。
滝口康彦氏の作品にハマっているのだが、これが面白い。
1つの作品を二度、三度と読み返す。
40ページ前後の短編だが、奥が深い、深すぎる。
滝口氏の作品をどうしてもっと早く読まなかったのだろうかと、
悔やまれてならない。

 33年ぶりの邂逅。
実は33年前に、私は滝口氏に会っている。
有難いことに、滝口氏のご講演を拝聴していた。
講演の内容はいまだに鮮明に覚えているというのに、
氏の作品を手にしなかったことが悔やまれる。

 再会のきっかけは「切腹」という映画だ。
1962年上映の古い映画だが、いまだに人気がある。
昨年(2011年)も市川海老蔵主演で再び映画化されるほどに。
私が見たのは、古い方のそれだが、主演仲代達也。
他に丹波哲郎、三國連太郎、岩下志麻…とそうそうたる顔ぶれ。
(今から50年も前だから出演者も当然のことながら若い)

社会の底辺に生きる浪人の悲哀を痛切に描き出した映画で、
胸に迫るものがある。
何という重いテーマなんだと感動にひたりながら,
あらためてスタッフやキャストの一覧を見てみたら、
原作「『異聞浪人記』滝口康彦」と書かれていた。

 「滝口康彦」、頭の中で何かがスパークした。
知っている、聞いたことがある…。
古い資料を調べた。
はたして、33年前、大学4年生の時の九重研修。
その折りの特別講演の講師がまさに滝口康彦氏だった。
「書くことの周辺」という演題で話をされたのだった。

 あのとき、文章や、ことばへのこだわりを話された滝口氏の作品が
この映画だったのかと、また別の感動に包まれた。

 1年前海老蔵主演で話題になり文庫本も出ていた。
「一命」。
今では絶版となっている氏の作品群の中から
代表的な短編6話が納められている。
たちまち虜になった。鳥肌が立つような深い読後感。
33年間の空白が悔やまれるが、新たな目標もできた。
生き甲斐と言っても良いかもしれない。
あと何年生きるかわからないが、
残りの読書人生の全てをかけて氏の作品を堪能したい。
先にも書いたように、一つの作品を二度も三度も読み返しながら。

 ぜひ登ってみたいと思う山がいくつもある。
羅臼岳、トムラウシ、剣、石鎚、南アルプス…。
それと同じくらい滝口氏の作品を読みたいと思っている。

 久しぶりのブログだが、しばらくは滝口氏のシリーズが続きそう。
少なくとも松葉杖がとれるまでは。
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