温泉津地区重要伝統的建造物群保存地区。かって銀の積出港として栄えた温泉津地区の町並みは、町歩きそのものが魅力一杯で、ついつい、あっちにふらり、こっちにふらり(笑)。
そんな町歩きの紹介、トップは、温泉津町小浜・三島家の3階建て主屋の正面右側。満面の笑顔で、自分の体の何倍もある大きな黒鯛を抱えた「恵比寿さん」。
「恵比寿さん」の後ろの「魚籠(ビク)」には、立派な福笹。福笹は、京都ゑびす神社が「家運隆昌・商売繁盛」の縁起物として頒布したのが最初。「節目正しく真っ直ぐに伸び」「弾力があって折れない」「葉が落ちず常に青々と茂る」・・と良い事尽くめの福笹に鯛や小判の福飾りをつけ、「商売繁盛、笹もってこい」と囃す十日戎、全国的に有名です。
製作者は石州左官『三島健治』。実家である三島家は旅館業を営んでいましたが、あとを継がず石州左官としての道を選びました。そうして大正7年、実家の壁面に見事な「恵比寿」を彫り上げました。恵比寿さんが抱え込もうとする大きな黒鯛をアップに!口元から覗く歯、ウロコの臨場感・・本物以上に本物らしくぬめりさえ感じられます。
これも『三島健治』の手になる「安田家」の看板鏝絵。こちらは大黒様、恵比須様と同じく大正7年の作。
大黒様の下には「呉服 太物 諸油 雑貨 安田商店」と描かれており、手広い商いの様子が伺えます。「呉服」は「絹の着物」に使われた呼称で、絹と比較して太い木綿、麻などは「太物」と呼んでいました。「諸油」は、ランプ用その他、種々の油の事で、この店では油の量り売りも行っていたようです。
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鏝絵目当てで、駆け足で通り過ぎた感じが否めない温泉津の町並。二度目の訪問では温泉津の由来ともなった温泉を堪能。私たちが利用させて頂いたのは日本温泉協会の新基準による審査で、全項目にオール5を受賞した天然温泉「薬師の湯」。
最高の温泉と、温泉津に現存する温泉施設としては最古の「薬師の湯:震(しん)湯」で過ごした贅沢な時間。忘れ難い思い出となりました。
暮れ行く気配の中でふと入り込んでしまった路地の佇まいに思わず足が止まります。北前船で栄えた町の面影が色濃く残る蔵通り。魅力的ではあるけれど町歩きには遅すぎる・・・
そう言えば温泉津湾の近くで見かけたあの幾つかの祠・・山肌をくりぬいた中に並べて納められていたあの祠は、何時からあの場所にあったのだろう・・
訪問日:2011年5月15日&2015年5月23日
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