車泊で「ご当地マンホール」

北は山形から南は大分まで、10年間の車泊旅はマンホールに名所・旧跡・寺社・狛犬・・思い出の旅、ご一緒しませんか。

年の初めの神楽三昧「女狐退治」

2022年01月13日 10時00分00秒 | 日本の伝統・芸能・技の美

月一の舞ですっかり「宮乃木神楽団」の神楽に魅せられた二人。とは言え彼らが出演する神楽はいずれも遠すぎ、結局望みを果たせぬままに日が過ぎていきました。ある日ネットサーフィンで神楽の催しを検索していた時「因原神楽交流大会」の出演団体に「宮乃木神楽団」の名前が(⌒∇⌒) 島根県川本町因原・・前日から現地に行けば十分に列に並べます。

2015年4月19日、「因原神楽交流大会」にて、「宮乃木神楽団」による【女狐退治】

舞台の幕開け・・・・白無垢の内掛けを目深に羽織って登場したのは、恐ろしい牙を持つ妖狐・・

のように見えた筈なのに、陽の下に現われたのは、白銀の毛を持つ美しい女性。その顔を覆うのは深い深い悲しみの色・・・

「愛しい我が子はもうこの世にいない。あの小さな可愛いお前を守ってやれなかったわが身が悔しい・・なぜ? なぜ?!どうしてまだあんなに小さかったあの子が死ななければならなかったのか・・・」

人の気配に急ぎ身を隠す女。ほどなく、花道より登場したのは、父の仇を討つため九州・筑前の国から諸国遍歴の旅を続ける【岩見重太郎・重蔵兄弟】。旅の途次、大願成就の祈願のため防府天満宮に立ち寄ったところ、父の仇を討つためには、3つの難を乗り越えねばならぬとの御告げを受けます。

「周防長門の地でわが子をマタギに討たれた女狐が、人間に恨みを晴らさんと災いを重ねている。お前たち二人は長門に出向きこれを退治せよ」・・これが兄弟に課せられた第一の難関でした。

山道を行く二人の前に現われたのは、鄙には稀な美しい里娘。『およし』と名乗る娘に、「この里に人を食い殺すと言う獣が出ると聞いたが、何か知らぬか?」と声をかける岩見兄弟。

「見つけてどうされるのか」と尋ねる「およし」。「里の人たちに害をなす悪しき獣、我ら兄弟が退治する」と答える「岩見兄弟」。

その瞬間、美しかった「およし」の姿は消え失せ、そこに居たのは齢数百年を重ねた怪しい女狐。自分たち兄弟も父を殺され、その仇討をするために旅を続けている身。 たとえ狐とは言えども子を殺された母親の心情は察せられる・・ひたすらに子を思う母心に同情し、その恨みを忘れて山に帰れと諭す『重太郎』。

『重太郎』の真摯な言葉に、一度は人間を許そうと思いながら、それでも、どうしても、我が子を殺された恨みが捨て切れない『女狐』。「どうしても、どうしても愛しいあの子が殺された事が許せない!!」「およし」の血を吐くような言葉が、観客たちの心に重く響いてきます。

恨みの念から逃れる事が出来ない母狐。重太郎の優しい言葉に気持ちが動くたびに『女狐』は我を失い、憎しみだけが膨れ上がり、その怨念に支配されてしまうのです。

「そうだ、私は人間が許せないのだ。可愛いあの子を殺した人間が、どうしても、どうしても許せないのだ。私を邪魔するものは誰であろうと許さない。だから、私はお前たち人間を取り食らってやる!!」

そうして・・・完全に『妖狐』となってしまった『女狐』・・・その顔には先ほどの美しい里娘・およしの面影は微塵もなく、憎しみに取り付かれてしまった醜い獣の姿が。

「これほど道理を尽くしても分らぬとあらば致し方なし。我ら兄弟、防府の神のお告げに従い、汝を成敗してくれる」

すでに子を失って嘆く母の想いも消え去り、今はただ凄まじい怨念だけに支配され、牙をむいて重太郎兄弟に襲い掛かる『妖狐』。

流石の岩見兄弟も、怨念の塊と化した妖狐の力は凄まじく、戦いのさ中に弟・重蔵は命を落としてしまったのです。

弟の死を前に、気力を振り絞る重太郎。彼の放った矢は見事『妖狐』の体を貫き、こうして女狐は退治されました。

「父の仇討の為に、共に苦しみを分かちここまで来た弟よ・・お前を助けてやれなかった兄を許せよ・・・」重蔵を失った悲しみを胸の奥深くに刻み、重太郎は一人、次の難を払うべく旅をつづけるのでした。

勝手にセリフを作って紹介した「宮乃木神楽団」の「女狐退治」。やっぱり最高です。衣装も良いのですが、特に面が最高!その時々の見る側の気持ちによって、生身の人間のようにさまざまに変化して見える凄さ。むろん、舞い手の技量があってこそなのは言うまでもありません。さて次のチャンスは何時になるのか。広島と京都のこの距離が恨めしい(^^;)

2022年 一月十三日

  


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