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1987年4月1日の国鉄分割民営化によるJR各社誕生から今年で34年が過ぎました。JR化直後に登場した車両でも一般的な鉄道車両の寿命(30〜45年)に近くなります。
実際の所は、車両の作りや運用により寿命は大きく異なるので、随分前に全廃されたJR時代の車両もいれば、未だ国鉄時代の車両も残っているのは、先日までの「今も残る現役国鉄形」シリーズで紹介したとおりです。
JR化後の最初の10年間(1987年4月〜1997年3月)で登場した新形式車両を初期世代として、現状を交えてシリーズで紹介していきます。JR化後しばらくは、205系や211系のように国鉄時代の車両をそのまま製造したものも多いため、JR化後の新形式のみを掲載します。
撮影できないままに廃車された車両もありますので、そちらは写真無しで文章だけ。また、事業用車や試験車両については、ほとんど写真が無いので省略させて頂きます。
今回はJR東海の車両です。
JR東海は東海道新幹線の経営への批准が圧倒的に大きく、営業距離がJR各社の中でも2番目に短い(1番短いのは四国)こともあり、国鉄型車両の置き換えがJR各社の中で最も早く進みました。現在では211系0番台の4両編成2本しか国鉄型は残っていません。一方で、JR初期の時代に投入した車両も淘汰は始まっており、今後315系電車の投入で211系5000番台、213系5000番台、311系の置き換えが予定されています。気動車はキハ85系がHC85系で置き換えられる予定です。
300系
製造1990年〜1998年。東海道・山陽新幹線を0系、100系の時速220km/hの限界から、一気に270km/hまで引き上げた第3世代の新幹線車両で、初代「のぞみ」です。1990年に先行試作車が登場し、1992年から量産が始まりました。最高速度を上げるために、アルミ合金と車内設備の見直しによる撤退した軽量化とGTO素子によるVVVFインバータ制御方式の採用など、いくつもの新しい技術が投入されましたが、初期は故障が絶えなかったようです。また、軽量化の影響で乗り心地は犠牲になっており、乗っていると突然ガクンと来る衝撃がよくありました。2012年にN700系へ置き換えられて引退。当初はリニア・鉄道館に先行試作車と量産車の両方の先頭車が保存されていましたが、のちに量産車の先頭車は撤去、解体されています。
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300系新幹線。「のぞみ」用にデビューしましたが、後継の700系の登場後は徐々に「ひかり」「こだま」運用にシフトして行きました。300系の座席配置は以後の東海道新幹線車両の基本となったので、700系、N700系、N700A系、N700S系まで全て同じ座席数(16両編成で1323名)になっています
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リニア・鉄道館に両方の300系があった頃。先行試作車は先頭の側面にふくらみがあるが、量産車はないので見分けがつくのですが、量産車は全廃されてしまいました
311系
製造1989年〜1990年。東海道本線の名古屋地域における新快速は当初117系で運用されていましたが、2扉で昇降時間がかかるのが問題でした。そこで、211系をベースに3扉転換クロスシートの4両編成で登場したのが311系です。直流近郊形電車にあたり、4両編成15本が製造されましたが、国鉄型の置き換えというより、新快速の改善が目的でしたので、導入以降も113系や115系は残りました。313系の導入後は、主に東海道本線の浜松〜米原での普通列車運用となっています。なお、211系5000番台や313系と連結しての運転も可能です。今後315系での置き換えが予定されています。
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311系の新快速。もともと新快速用に登場した電車ですが、現在ではあまり見られません
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現在は普通列車が主な運用となっている311系
371系
製造1991年。小田急3000形SSEで運行されていた「あさぎり」は、小田急線内は特急ロマンスカーですが、JR線内は急行「あさぎり」で、小田急新宿〜御殿場での運転でした。この3000形SSEの老朽化に伴う車両置き換えと、列車のJR線内特急化および沼津への延伸運転のため、JR東海と小田急で特急電車を製造して運行することになりました。これにより登場したのが371系です。小田急は20000形RSEを登場させています。7両編成のうち2両が2階建構造です。1本しか製造されなかったことで非常にレアな車両でした。予備車がないので、検査時は小田急20000形RSEが、「あさぎり」を運行しましたが、「ホームライナー」運用までは代走しなかったそうです(なんかしたという記事をどこかで見た覚えもあるのですが)。2012年に「あさぎり」が御殿場折り返しへ戻され、小田急60000形MSEでの運行になったので、371系は臨時列車運用になりました。2015年に廃車後、富士急行へ先頭車1両と中間車1両が譲渡され、富士急行8500系「富士山ビュー特急」となっています。
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371系「あさぎり」。100系新幹線をイメージさせながらも斬新なデザインで、登場当時は私にとって憧れの電車でした
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富士急行8500系。水戸岡電車に改造されていて、内装は完全に作り直しています
373系
製造1995年〜1996年。身延線で運行されていた急行「富士川」の165系の置き換えと、東京発着の大垣夜行の165系置き換え快速「ムーンライトながら」化、飯田線で運行開始した165系急行「伊那路」の特急格上げなどを目的に登場した特急形電車です。普通列車での運用もあることから、2扉の回転式リクライニングシートながら、デッキは扉なしで簡易化されていて、扉も両開きです。3両編成14本が製造されましたが、とにかく運用範囲が広く、「ふじかわ」「伊那路」「ムーンライトながら」「ホームライナー」「セントラルライナー」から普通列車まで様々な列車で運行されました。「ムーンライトながら」の臨時列車化による運用終了後は、少し運用が少なくなっています。
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373系「ふじかわ」。165系急行「富士川」の置き換えに登場した373系は、その後様々な列車に投入されました。現在でも「ふじかわ」で運行しています
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373系特急「伊那路」。もともと飯田線には急行列車も廃止されていたところを、あえて165系急行「伊那路」を走らせて、後継に373系「伊那路」を走らせるという段取りが取られました。これは、当時のJR東海飯田支店長さんに先見の明があったと思います。165系「伊那路」がなかったら、373系をいきなり特急で走らせることもなかったでしょう
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373系快速「ムーンライトながら」。165系を使った普通列車(快速運行)の大垣夜行を全車指定席(当初は小田原以東を一部自由席)で運行しました。この列車の送り込みおよび返却の普通列車が夜に静岡発東京行き、朝に東京発静岡行きがあり、乗り得列車として鉄道ファンには知られていました
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373系普通列車。飯田線で早朝に駒ヶ根6:12発天竜峡行き1500M、天竜峡8:16発飯田行き1505Mで間合い運用されています。現在も残る乗り得列車です
383系
製造1994年〜1996年。中央本線・篠ノ井線の名古屋〜松本〜長野は高速バスとの競争が激しく、老朽化しつつあった国鉄時代の381系「しなの」を置き換えて快適性の向上を図ることになり、登場したのが383系です。自然振り子式で乗り心地に難があった381系に対して、制御式振り子を採用して速度を一時しつつ乗り心地が向上しました。381系で展望グリーン車改造車が走っていたこともあり、流線型スタイルの先頭車と、貫通扉スタイルの先頭車があります。以前はJR西日本へ乗り入れて大阪発着の「ワイドビューしなの」での運用もありました。現在は、「ワイドビューしなの」での運用を中心に、「ホームライナー」でも運用されています。
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383系「ワイドビューしなの」。登場後27年ですので、あと3年後くらいには置き換え計画も発表されるでしょうか。篠ノ井線・信越本線の松本〜長野はJR東日本の範囲にもかかわらず、JR東海の383系のみが特急として走っています
955形
製造1994年。300系新幹線の次の新幹線の開発に向けて、JR東海が製造した高速試験用新幹線電車「300X」です。6両編成1本が製造され、先頭車は両側で形が違います。1996年には、超電動リニアを除いて日本の鉄道史上最速となる、443km/hの記録を達成しています。700系開発へのデータを蓄積して2002年に廃車となりました。先頭車2両は、片方は米原の鉄道総研風洞技術センターで保存され、もう片方はJR東海浜松工場で保存後に、リニア・鉄道館へ移されています。
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米原の鉄道総研風洞技術センターで保存されている300X。こちらはカスプ形と言われる先頭車で、新幹線の試験車両の中でもかなり特異な形です。近江鉄道の車内から姿を見ることができます
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JR東海浜松工場で保存されていたころの300X。こちらはラウンドウェッジ形と言われる先頭車です
キハ11形
製造1988年〜1999年。キハ35系、キハ58系などで運行されている非電化区間の旧型国鉄車置き換えと、閑散路線のワンマン運転化のために登場した気動車です。セミクロスシートのトイレ無しで暖地向け0番台、寒冷地対応100番台、子会社の東海交通事業用200番台が登場しました。その後、車体を鋼鉄製からステンレスに変更して、トイレを取り付けた300番台が登場しています。太多線、高山本線、紀勢本線、参宮線、名松線で運用されましたが、老朽化に伴う後継のキハ25形投入により、300番台以外は全廃されました。100番台1両と200番台はひたちなか海浜鉄道へ譲渡され、またミャンマーへ渡った車両もあります。
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暖地向け0番台。名松線は0番台での運行が基本でした
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太多線を走る100番台。太多線は以前はキハ11形ばかりでした
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東海交通事業所有ながらJR東海線内運用だった200番台
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300番台はトイレ無しの0番台と連結しての運用が当初は多かったです。0、100、200番台の廃車後は、名松線での単独運行、東海交通事業線での運行が中心となりました
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東海交通事業のキハ11形200番台。100番台ベースですが、ステップ廃止などの差異があります。また塗装も変更されています。4両製造のうち2両は常にJR東海へ貸し出しとされていました
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ひたちなか海浜鉄道所属となったキハ11形。元々ある3710形と外観が似ていますが、車内はこちらがセミクロスシート、3710形はロングシートになっています
キハ75形
製造1993年〜1999年。キハ58系、キハ65形、キハ40系で運行されていた武豊線の列車の置きかえと、快速「みえ」の置き換えで登場した快速用気動車です。3扉の転換クロスシート車で、最初に快速「みえ」用に登場した0・100番台、「みえ」増発と急行「かすが」の置き換えで投入した200・300番台および400・500番台がありましたが、いずれもその後に寒冷地対応改造や、ワンマン運転化改造などで番台が現在は1200・1300番台、3200・3300番、3400・3500番台等になっています。武豊線の電化で武豊線運用は無くなり、快速「みえ」と、高山本線、太多線での運用になっています。
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快速「みえ」で走るキハ75形。列車によっては2+2の4両編成で運行されます
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武豊線を走っていたころのキハ75形
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急行「かすが」で走っていたころのキハ75形
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現在は太多線/高山本線の直通運用が多くなっています
キハ85系
製造1988年〜1992年。国鉄形気動車特急キハ82系を置き換えてスピードアップするために投入されたJR化後の新開発気動車特急としては最初の車両です。ステンレス車体を採用し、大型の窓を採用することで、眺望を確保しました。このスタイルは以後のJR東海の特急形車両の基本になり「ワイドビュー」の最初の車両となりました。カミンズ社製のエンジンを2基搭載し、高出力で電車特急並みの性能を誇ります。「ワイドビューひだ」「ワイドビュー南紀」として運行され、一部「ホームライナー」でも運行されました。また、急行「たかやま」置きかえの関係で、大阪発着の「ワイドビューひだ」もあります。今後は老朽化によりHC85系への置きかえが予定されています。
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高山本線と東海道本線を走る特急「ワイドビューひだ」。最長で9両編成も走り、気動車特急としてはかなり編成が長いです
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紀勢本線と関西本線を走る特急「ワイドビュー南紀」。一時は全列車にグリーン車を連結していましたが、新型コロナ流行による需要減少により、現在は2両編成が基本になっています
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「ホームライナー太多」で運用されていたキハ85系。現在は運用は無くなっています。当時は中央本線経由で美濃太田行きでした
キヤ95系
製造1997年と2005年。クモヤ193系50番台の老朽化置き換えと、JR西日本からキヤ191系のかり出しで行っていた電気・軌道検測を自社で完結するために登場した検測車です。1997年3月にDR1編成が運用開始し、2005年4月にDR2編成が運用開始しています。「ドクター東海」の愛称があり、JR東海の在来線の他、JR東海と線路が繋がる第三セクターや子会社各線(あおなみ線、伊勢鉄道、天竜浜名湖鉄道、東海交通事業城北線など)の検測も行っています。運用は非公開ですが、名古屋所属なので近鉄米野駅から姿を見ることもよくあります。
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飯田線検測で入線したDR1編成
以上です。
JR東海は車両の新陳代謝が早く、JR化初期の車両もすでに大半が置き換え予定が出ており、新幹線に至っては初期世代の300系どころか700系も全廃済みです。一方で、懸念された在来線の路線廃止は未だ全くなく、今後も置き換え後の車両で運行されるのでしょう。
実際の所は、車両の作りや運用により寿命は大きく異なるので、随分前に全廃されたJR時代の車両もいれば、未だ国鉄時代の車両も残っているのは、先日までの「今も残る現役国鉄形」シリーズで紹介したとおりです。
JR化後の最初の10年間(1987年4月〜1997年3月)で登場した新形式車両を初期世代として、現状を交えてシリーズで紹介していきます。JR化後しばらくは、205系や211系のように国鉄時代の車両をそのまま製造したものも多いため、JR化後の新形式のみを掲載します。
撮影できないままに廃車された車両もありますので、そちらは写真無しで文章だけ。また、事業用車や試験車両については、ほとんど写真が無いので省略させて頂きます。
今回はJR東海の車両です。
JR東海は東海道新幹線の経営への批准が圧倒的に大きく、営業距離がJR各社の中でも2番目に短い(1番短いのは四国)こともあり、国鉄型車両の置き換えがJR各社の中で最も早く進みました。現在では211系0番台の4両編成2本しか国鉄型は残っていません。一方で、JR初期の時代に投入した車両も淘汰は始まっており、今後315系電車の投入で211系5000番台、213系5000番台、311系の置き換えが予定されています。気動車はキハ85系がHC85系で置き換えられる予定です。
300系
製造1990年〜1998年。東海道・山陽新幹線を0系、100系の時速220km/hの限界から、一気に270km/hまで引き上げた第3世代の新幹線車両で、初代「のぞみ」です。1990年に先行試作車が登場し、1992年から量産が始まりました。最高速度を上げるために、アルミ合金と車内設備の見直しによる撤退した軽量化とGTO素子によるVVVFインバータ制御方式の採用など、いくつもの新しい技術が投入されましたが、初期は故障が絶えなかったようです。また、軽量化の影響で乗り心地は犠牲になっており、乗っていると突然ガクンと来る衝撃がよくありました。2012年にN700系へ置き換えられて引退。当初はリニア・鉄道館に先行試作車と量産車の両方の先頭車が保存されていましたが、のちに量産車の先頭車は撤去、解体されています。
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300系新幹線。「のぞみ」用にデビューしましたが、後継の700系の登場後は徐々に「ひかり」「こだま」運用にシフトして行きました。300系の座席配置は以後の東海道新幹線車両の基本となったので、700系、N700系、N700A系、N700S系まで全て同じ座席数(16両編成で1323名)になっています
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リニア・鉄道館に両方の300系があった頃。先行試作車は先頭の側面にふくらみがあるが、量産車はないので見分けがつくのですが、量産車は全廃されてしまいました
311系
製造1989年〜1990年。東海道本線の名古屋地域における新快速は当初117系で運用されていましたが、2扉で昇降時間がかかるのが問題でした。そこで、211系をベースに3扉転換クロスシートの4両編成で登場したのが311系です。直流近郊形電車にあたり、4両編成15本が製造されましたが、国鉄型の置き換えというより、新快速の改善が目的でしたので、導入以降も113系や115系は残りました。313系の導入後は、主に東海道本線の浜松〜米原での普通列車運用となっています。なお、211系5000番台や313系と連結しての運転も可能です。今後315系での置き換えが予定されています。
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現在は普通列車が主な運用となっている311系
371系
製造1991年。小田急3000形SSEで運行されていた「あさぎり」は、小田急線内は特急ロマンスカーですが、JR線内は急行「あさぎり」で、小田急新宿〜御殿場での運転でした。この3000形SSEの老朽化に伴う車両置き換えと、列車のJR線内特急化および沼津への延伸運転のため、JR東海と小田急で特急電車を製造して運行することになりました。これにより登場したのが371系です。小田急は20000形RSEを登場させています。7両編成のうち2両が2階建構造です。1本しか製造されなかったことで非常にレアな車両でした。予備車がないので、検査時は小田急20000形RSEが、「あさぎり」を運行しましたが、「ホームライナー」運用までは代走しなかったそうです(なんかしたという記事をどこかで見た覚えもあるのですが)。2012年に「あさぎり」が御殿場折り返しへ戻され、小田急60000形MSEでの運行になったので、371系は臨時列車運用になりました。2015年に廃車後、富士急行へ先頭車1両と中間車1両が譲渡され、富士急行8500系「富士山ビュー特急」となっています。
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371系「あさぎり」。100系新幹線をイメージさせながらも斬新なデザインで、登場当時は私にとって憧れの電車でした
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富士急行8500系。水戸岡電車に改造されていて、内装は完全に作り直しています
373系
製造1995年〜1996年。身延線で運行されていた急行「富士川」の165系の置き換えと、東京発着の大垣夜行の165系置き換え快速「ムーンライトながら」化、飯田線で運行開始した165系急行「伊那路」の特急格上げなどを目的に登場した特急形電車です。普通列車での運用もあることから、2扉の回転式リクライニングシートながら、デッキは扉なしで簡易化されていて、扉も両開きです。3両編成14本が製造されましたが、とにかく運用範囲が広く、「ふじかわ」「伊那路」「ムーンライトながら」「ホームライナー」「セントラルライナー」から普通列車まで様々な列車で運行されました。「ムーンライトながら」の臨時列車化による運用終了後は、少し運用が少なくなっています。
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373系「ふじかわ」。165系急行「富士川」の置き換えに登場した373系は、その後様々な列車に投入されました。現在でも「ふじかわ」で運行しています
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373系特急「伊那路」。もともと飯田線には急行列車も廃止されていたところを、あえて165系急行「伊那路」を走らせて、後継に373系「伊那路」を走らせるという段取りが取られました。これは、当時のJR東海飯田支店長さんに先見の明があったと思います。165系「伊那路」がなかったら、373系をいきなり特急で走らせることもなかったでしょう
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373系快速「ムーンライトながら」。165系を使った普通列車(快速運行)の大垣夜行を全車指定席(当初は小田原以東を一部自由席)で運行しました。この列車の送り込みおよび返却の普通列車が夜に静岡発東京行き、朝に東京発静岡行きがあり、乗り得列車として鉄道ファンには知られていました
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373系普通列車。飯田線で早朝に駒ヶ根6:12発天竜峡行き1500M、天竜峡8:16発飯田行き1505Mで間合い運用されています。現在も残る乗り得列車です
383系
製造1994年〜1996年。中央本線・篠ノ井線の名古屋〜松本〜長野は高速バスとの競争が激しく、老朽化しつつあった国鉄時代の381系「しなの」を置き換えて快適性の向上を図ることになり、登場したのが383系です。自然振り子式で乗り心地に難があった381系に対して、制御式振り子を採用して速度を一時しつつ乗り心地が向上しました。381系で展望グリーン車改造車が走っていたこともあり、流線型スタイルの先頭車と、貫通扉スタイルの先頭車があります。以前はJR西日本へ乗り入れて大阪発着の「ワイドビューしなの」での運用もありました。現在は、「ワイドビューしなの」での運用を中心に、「ホームライナー」でも運用されています。
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383系「ワイドビューしなの」。登場後27年ですので、あと3年後くらいには置き換え計画も発表されるでしょうか。篠ノ井線・信越本線の松本〜長野はJR東日本の範囲にもかかわらず、JR東海の383系のみが特急として走っています
955形
製造1994年。300系新幹線の次の新幹線の開発に向けて、JR東海が製造した高速試験用新幹線電車「300X」です。6両編成1本が製造され、先頭車は両側で形が違います。1996年には、超電動リニアを除いて日本の鉄道史上最速となる、443km/hの記録を達成しています。700系開発へのデータを蓄積して2002年に廃車となりました。先頭車2両は、片方は米原の鉄道総研風洞技術センターで保存され、もう片方はJR東海浜松工場で保存後に、リニア・鉄道館へ移されています。
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米原の鉄道総研風洞技術センターで保存されている300X。こちらはカスプ形と言われる先頭車で、新幹線の試験車両の中でもかなり特異な形です。近江鉄道の車内から姿を見ることができます
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JR東海浜松工場で保存されていたころの300X。こちらはラウンドウェッジ形と言われる先頭車です
キハ11形
製造1988年〜1999年。キハ35系、キハ58系などで運行されている非電化区間の旧型国鉄車置き換えと、閑散路線のワンマン運転化のために登場した気動車です。セミクロスシートのトイレ無しで暖地向け0番台、寒冷地対応100番台、子会社の東海交通事業用200番台が登場しました。その後、車体を鋼鉄製からステンレスに変更して、トイレを取り付けた300番台が登場しています。太多線、高山本線、紀勢本線、参宮線、名松線で運用されましたが、老朽化に伴う後継のキハ25形投入により、300番台以外は全廃されました。100番台1両と200番台はひたちなか海浜鉄道へ譲渡され、またミャンマーへ渡った車両もあります。
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暖地向け0番台。名松線は0番台での運行が基本でした
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太多線を走る100番台。太多線は以前はキハ11形ばかりでした
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東海交通事業所有ながらJR東海線内運用だった200番台
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300番台はトイレ無しの0番台と連結しての運用が当初は多かったです。0、100、200番台の廃車後は、名松線での単独運行、東海交通事業線での運行が中心となりました
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東海交通事業のキハ11形200番台。100番台ベースですが、ステップ廃止などの差異があります。また塗装も変更されています。4両製造のうち2両は常にJR東海へ貸し出しとされていました
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ひたちなか海浜鉄道所属となったキハ11形。元々ある3710形と外観が似ていますが、車内はこちらがセミクロスシート、3710形はロングシートになっています
キハ75形
製造1993年〜1999年。キハ58系、キハ65形、キハ40系で運行されていた武豊線の列車の置きかえと、快速「みえ」の置き換えで登場した快速用気動車です。3扉の転換クロスシート車で、最初に快速「みえ」用に登場した0・100番台、「みえ」増発と急行「かすが」の置き換えで投入した200・300番台および400・500番台がありましたが、いずれもその後に寒冷地対応改造や、ワンマン運転化改造などで番台が現在は1200・1300番台、3200・3300番、3400・3500番台等になっています。武豊線の電化で武豊線運用は無くなり、快速「みえ」と、高山本線、太多線での運用になっています。
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快速「みえ」で走るキハ75形。列車によっては2+2の4両編成で運行されます
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武豊線を走っていたころのキハ75形
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急行「かすが」で走っていたころのキハ75形
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現在は太多線/高山本線の直通運用が多くなっています
キハ85系
製造1988年〜1992年。国鉄形気動車特急キハ82系を置き換えてスピードアップするために投入されたJR化後の新開発気動車特急としては最初の車両です。ステンレス車体を採用し、大型の窓を採用することで、眺望を確保しました。このスタイルは以後のJR東海の特急形車両の基本になり「ワイドビュー」の最初の車両となりました。カミンズ社製のエンジンを2基搭載し、高出力で電車特急並みの性能を誇ります。「ワイドビューひだ」「ワイドビュー南紀」として運行され、一部「ホームライナー」でも運行されました。また、急行「たかやま」置きかえの関係で、大阪発着の「ワイドビューひだ」もあります。今後は老朽化によりHC85系への置きかえが予定されています。
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高山本線と東海道本線を走る特急「ワイドビューひだ」。最長で9両編成も走り、気動車特急としてはかなり編成が長いです
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紀勢本線と関西本線を走る特急「ワイドビュー南紀」。一時は全列車にグリーン車を連結していましたが、新型コロナ流行による需要減少により、現在は2両編成が基本になっています
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「ホームライナー太多」で運用されていたキハ85系。現在は運用は無くなっています。当時は中央本線経由で美濃太田行きでした
キヤ95系
製造1997年と2005年。クモヤ193系50番台の老朽化置き換えと、JR西日本からキヤ191系のかり出しで行っていた電気・軌道検測を自社で完結するために登場した検測車です。1997年3月にDR1編成が運用開始し、2005年4月にDR2編成が運用開始しています。「ドクター東海」の愛称があり、JR東海の在来線の他、JR東海と線路が繋がる第三セクターや子会社各線(あおなみ線、伊勢鉄道、天竜浜名湖鉄道、東海交通事業城北線など)の検測も行っています。運用は非公開ですが、名古屋所属なので近鉄米野駅から姿を見ることもよくあります。
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飯田線検測で入線したDR1編成
以上です。
JR東海は車両の新陳代謝が早く、JR化初期の車両もすでに大半が置き換え予定が出ており、新幹線に至っては初期世代の300系どころか700系も全廃済みです。一方で、懸念された在来線の路線廃止は未だ全くなく、今後も置き換え後の車両で運行されるのでしょう。
ただ、「南紀」はビジネス需要が本来見込める津までは近鉄が圧倒的に優勢で、観光需要が新型コロナ蔓延で大幅縮小しているので、現在は辛い状態ですね。昨年一度「ひだ」には乗りましたけど、「ひだ」も乗客は少なかったです。