書く Ⅰ
出掛ける時は何時も
何の書き込みもない
真っ新な用紙を携える
今日、降ってくるものが
昨日の埃で汚れぬように
*
こんな調子で
原稿用紙の桝目を埋めてゆくと
そのうちに
書く事が無くなってしまうか
書ける場所を失うか
或いは
書く能力に翳りが出てしまうのか
・
吉凶や禍福や運不運は
大概は順番でやって来るから
ときどき心配になる
・
こんなに書けるという裏には
若しかしたら
一生分の桝目を使い切ってしまうという
隠された陰謀があるのではないかと・・
*
ここ一週間前から
右膝のお皿の周囲に鈍い痛みが走るのだ
歩き過ぎているのか?
適度を超過してしまったか?
同じように
降ってき過ぎで
書き過ぎではないかと
秘かに気を揉み訝っている
痛みという気懸かりが
知恵熱や成長痛や恋煩いの部類なら
むしろ歓迎だけど
書けることが無尽蔵であることの
証左の戸惑いなら
大歓迎だけれど・・
*
書けるという道具を持っているので
僕は
僕の均衡を
概ね良好に保っている
*
03/01 13:42:13