守田です。(20140124 23:30)
福島3号機に関する記事の続きです。
今回、3号機の床に非常に濃度の高い汚染水が確認されたのは18日ですが、その後、21日に東電は、再度のロボットによる確認で流量が大幅に減ったと発表しています。
しかしこのことで事態はますます分からなくなっています。東電は、核燃料を冷却して汚染された水が、格納容器の配管から漏れ出ていると発表していたのですが、それではなぜ今回、急激に減少したのか説明がつかないからです。
確認されていなかった汚染水が流れ出したことにも、それが急に減少したことにも、把握できていない何らかの状態が背後にあることが十分に考えられます。
そもそも東京電力は、肝心の核燃料が、どの辺に存在しているのかさえ、的確につかめてきていません。というのは、東電は長い間、3号機の核燃料は、一部はメルトダウンして漏れ出したものの、大半は圧力容器内部に残っていると判断していたのです。
ところがこの旧来の見解が、昨年12月13日の発表によって大きく変えられました。ほとんどが溶け落ちてしまっているというものにです。
東電の記者会見の様子を報道したANNのNEWS番組をご紹介します。
http://www.youtube.com/watch?v=8D7tLXKj-ww
ニュースで触れられているように、東電が見解を変えたのは、事故直後に行われた消防車による冷却水の注入が、これまでは炉心に届いていると思われていたものの、別の配管に入り込んでほとんど炉心に到達していなかったことが分かったからです。
実際に燃料の状態を調べた上での見解ではなく、どうも水が届いていなかったらしいということから、シミュレーションを変えて、燃料のほとんどが溶け落ちたことを推定しているのでしかない。
現実の燃料の状態は、放射線量が高すぎて確かめようがなく、推定に頼るしかないわけですが、今回のように前提が変われば、当然にもまた判断が大きく変わることになります。
しかもこの注水がうまくいってなかったという判断自身も、2012年6月に東電が事故調査報告書を出したものの、未解明なものが多いとして調査項目にあげてきた52項目のうちの10件の分析結果としてやっと発表されたものの一つです。
つまり東電自身があげた未解明点だけでもまだ42項目もある。それをあと2年かけて解き明かしていくというのですが、本当にまだまだ分からないことだらけなのです。
そしてだからこそ明らかなのは、現在、3号機がどのような危険を抱えているのかも、皆目見当がつかない状態にあるということです。何よりもこの点が重要です。
実際、昨年7月に3号機上部から水蒸気が発生しだしたときも、東電は理由が分かりませんでした。現在も同じです。炉内の床に大量の汚染水が流れているのが分かっても、なぜ、どこから流れてきているのかも分からない。
それが急に少なくなっても、その理由も分からない。謎だらけ。把握できないことだらけです。
政府が直視すべきなのは、何ら原子炉の実態が把握できていない、この極めて厳しい現状です。何度も言いますが、コントロールできているとかいないとかそんなレベルではありません。
もの凄く危険な、溶け落ちてしまった核燃料の状態が、皆目、分からないのです。それでつい一月前までは、ほとんどが圧力容器の中にあると言っていたのに、突然、ほとんど落ちていたに変わってしまった。
当然ですが、ほとんどが圧力容器の中にあるほうが、落ちてしまった状態よりずっとましです。圧力容器と、格納容器と二つの容器の中にまだあることになるからです。
しかしどうもそうではなかった。つまり想定していたより、ずっと危なかったということです。しかしこれまで東電は、より危険性が低い判断をしていた。それが事故後、2年9か月も維持されてきたのです。
だとするならば、当然にも、今も把握されていない危険性がたくさんあることが予見されます。だからこそ、危機に備える必要があるのです。現状の悪化への備え。いざというときの避難体制の確立を中心とした対応策を積み上げることです。
にもかかわらず政府はこの危機を直視しようとしない。いやできないのでしょう。危機を直視する精神力に欠けているからです。今の政府には、この国に住まう人々を本当に守ろうとする気概と責任感が著しく欠けているのです。
これに対して私たちは、あくまでも危機を直視し、避難体制を民衆の手で、下から作り出していく必要があります。災害心理学に言う「正常性バイアス」にかかったこの国の状態を変える事こそが、たくさんの命を守るために最も必要なことです。
ちなみに東京都知事選が華々しくスタートしていますが、残念ながら、この福島原発の危機が、選挙の争点に挙げられていません。
もちろん、極端な右傾化を強める安倍政権の暴走は食い止めるべきですが、しかし私たちは同時に、あるいはそれよりも、日本にとって、世界にとって、まったく状態すらつかめていない福島原発の存在そのものがものすごい脅威であることを忘れてはなりません。
どの候補も、東京オリンピック反対を掲げたら、それだけで票が取れなくなってしまうのかもしれませんが、それでも僕は、こんな危険な原発を抱えた日本で、オリンピックなどやるべきではないという声を東京から上げて欲しいです。
いや選挙でそれが争点にならない限り、他ならぬ僕自身が、例えどれほど小さな声に過ぎなかろうとも、「オリンピックどころの話ではない。そんな予算があるのなら、すべてを福島原発事故の真の収束に使うべきだ!被曝対策、避難や治療に使うべきだ!」と言い続けようと思います。
福島3号機をめぐる情報は、このように読み解くべきだと僕は思います。この視点に立ち続けた原発のウォッチを続けます。