明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(791)「明日に向けて(788)(789)」の記事への細川弘明さんからのご指摘と記事修正のお知らせ

2014年01月30日 19時00分00秒 | 明日に向けて(701)~(800)

守田です。(20140130 19:00)

みなさま。
京都精華大学の細川弘明さんより、「明日に向けて(788)非常に危険な福島4号機プール燃料取り出し作業が現在も進行中!注視を!(上)」について、全体の主旨には同意いただけるもの、細かい点で気が付いたことがあるというご指摘をいただきました。
どの点も非常に納得がいきましたので、ブログ・HP上の文書はすでに正しく書き直し、修正を加えたことのみ明記しましたが、非常に示唆に富んだご指摘ですので、みなさまにもご紹介したいと思います。
なお、今回のご指摘で、僕の原子炉構造への理解がまだまだ欠けていることが分かりました。とくにシュラウドの理解ができていませんでした。みなさんに誤った内容をお送りしてしまったことをお詫びします。さらに頑張って知識の向上に努めます。細川さんには大感謝です!

以下、守田の初校と、細川さんのご指摘を並べましたのでご覧下さい。とくに僕はシュラウドをめぐるくだりを読んで、目からうろこが落ちる気がしました・・・。

守田初校
ちなみに燃料棒とは、正確には直径1センチ、長さ4メートルに、ウランのペレットを積み上げたものです。ジルコニウムという金属で覆われています。
使用済み燃料棒とはウランの核分裂反応が終わり、核分裂生成物=放射性物質がたくさん生まれている状態の燃料棒のことです。
 
細川さんの指摘
●「核分裂反応が終わり」といってしまうと、もう核分裂しないように誤解されますので、「原子炉内で、核分裂反応が一定程度すすんだために、ウランの一部がさまざまな種類の核分裂生成物(=死の灰=放射性物質)に変化した状態の燃料棒」くらいの書き方のほうがよいかもしれません。
使用済み燃料であっても、通常の燃焼度のものであれば未分裂のウランが相当多く残っていますから、メルトダウンして再臨界して核分裂反応が再開する恐れがあります。


守田初校
1号機や3号機が、原子炉の上にあるオペレーションフロアで爆発が起こったのに 対し、その下の階での爆発でした。
 
細川さんの指摘
●1号機については、オペフロ(5階)のひとつ下層(4階、ICの階)で最初の爆発がおきた可能性が高いです。

守田初校
なぜかというと、4号機は原子炉を覆っているシュラウドというカバーのような部品の点検・交換が予定されていたのでした。このシュラウドも繰り返し損傷が発見されてきた問題部品なのですが、そのため原子炉の中に水がはってあり、上部の原子炉ウェルも水で満たされていました。
 
●シュラウドは、原子炉(圧力容器)の内側の構造物です。炉心を覆うかたちで配置されていますが、原子炉を覆っているわけではありません。
沸騰水型炉(BWR)では炉水が炉内で沸騰するため、その気泡のサイズと移動をコントロールする(大きな気泡が偏在すると中性子が減速されず核反応が暴走するので、それを避ける)ためにシュラウドのような内釜を設置して冷却水の流れに制限を加えています。
これがあるために、鉛の粒を投入しても炉底のデブリまたは炉底をメルトスルーしたデブリに到達する前に炉内でひっかかってしまうので、金属による冷却という絶妙の方法が使えません。
もう少し正確に書くと、現在の冷却水注入系統だと、鉛の粒はシュラウドの外側(圧力容器の壁とシュラウドのあいだ)に入ってしまい、そこで沈殿してしまうことになるようです。沈殿しなくても、再循環系をぐるりとまわってからでないと炉心(シュラウドの内側)に到達しないので、それまでのどこかでひっかかってしまう)

***

なお同じく(789)にも以下のようなご指摘をいただいています。
この点も重要ですので、みなさんにご紹介します。

守田オリジナル
また作業時に繰り返される余震が重なった時もハイリスクです。地震の揺れによって燃料集合体がラックにひっかかったり破損してしまう可能性もある。
もっと危険視されているのが、燃料集合体で満杯になったキャスクを吊り上げて、トラクターに降ろす時に地震に見舞われること 。東電はクレーンを二重にしてあるので大丈夫だと言っていますが、東電の「大丈夫」はまったく信用がおけません。
 
細川さんの指摘
●書いておられることは、その通りなのですが、同じ作業は、通常の原発で定検のたびにおこなわれている(しかも二重クレーンではない!)ので、4号炉プールからの燃料回収の技術的難度と危険性をあまり強調するのは、どうかなと思います。
1~3号炉については、技術的難度がきわめて高く、また、4号炉と違って建屋の耐震補強がなされていませんから、そちらの危険性はきわめて高いと思います。
防災体制なしで進めてよい作業ではない、という守田さんの主旨には賛成です。

これに対しては以下のようにお答えしました。結果的に修正は入れていません。

守田の回答
細川さんのご指摘になるほどとは思うものの、通常の交換と比べて、プール内のがれきが多いことや、いったん上に吊り上げて、地上まで降ろすため、高さがかなり高くなる点など、やはりより危険性があるとはいえるのではないでしょうか。
文章の訂正がしにくいことからも、この点はそのままに残させていただきたいと思いますがいかがでしょうか?
ただし必要以上に危険を強調すると、かえって論理的説得力が失われていくわけで、今後、この点を論じるときは、 細川さんのご意見を頭に入れて、トーンを調整しようと思います。

細川さんのご返事
●高さも通常の交換と同じでは? 大飯の燃料棒交換なんかは、もっと落差があると思います。(「だから安全だ」とは言いませんが。)
もちろん細かながれきが隙間に入り込んでいるのは気懸かりです。
文章については、間違いというわけではないですから、守田さんのご判断でよいと思います。

***

細川さん、ありがとうござました!

コメント
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