明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(942)京都市、滋賀県近江八幡市、岡山県吉備中央町、同瀬戸内市などでお話します!

2014年09月26日 23時00分00秒 | 講演予定一覧

守田です。(20140926 23:00)

今宵はもう一つ、情報発信をすることをお許し下さい。
9月から10月の講演スケジュールをお知らせします。・・・頑張ります!

まずは明後日、日曜日(28日)の企画のご案内をします。

第40回国際婦人年京都集会で講演します。
午後1時半から4時半まで。
会場は弁護士会館です(京都市中京区)

今回は、瀬戸内市在住の蝦名宇摩さんとのコラボ。彼女が先に津軽三味線を披露してくださり、その後に僕がお話します。
ちなみに奄美大島出身の蝦名さんは津軽三味線とともに島唄、三線の修得。さまざまな大会で優勝された凄腕!
彼女は同時に福島原発事故直後に埼玉県から必死の覚悟で飛び出した避難者でもあります。しかもその時に、僕が発信していた「逃げて下さい」というメールをリアルタイムで受け取りながら、西へ西へと向かってくださいました。

あの時、どこかの誰かに届いて役に立って欲しいとの思いで、必死で情報を出し続けたのですが、それをリアルタイムで読んで下さり、役立てて下さった方でした。昨年12月に岡山県津山市の講演のときに三味線を持って駆けつけて下さり、初めてお会いしました!
現在は岡山県に移住。福島の子どもたちを瀬戸内に保養で呼ぶ「瀬戸内交流プロジェクト」にも取り組んでいて、僕を何度も岡山に呼んでくださっています。今後もさまざまな形でコラボしていくことになると思います!
とにかく三味線が凄いのでぜひお聞きにいらしてください。9歳の娘さんの蓮津(れつ)ちゃんも美声と太鼓を披露してくれます。

その後に僕が講演。以下のタイトルでお話します。
「福島は今・・・原発事故、放射能汚染はどうなっているのか」
~チェルノブイリ・トルコ・福島・避難者・京都の女性の繋がり、祈りの権利を求めて~

今回のお話で一番、強調したいのは福島原発事故による汚染の実態です。「福島は今・・・」とタイトルに載せましたが、東北・関東の現状についても触れます。
セシウムの汚染について、よく使われている早川由紀夫さんのマップなどでご紹介するとともに、2011年秋に明らかになった東北・関東の焼却場からのセシウム検出データを振り返ります。
またストロンチウムやプルトニウム、ウランの飛散情報にも触れます。

その上で、健康被害についてお話します。データ的に確認できるものとして、福島県の子どもたちの甲状腺がんについて触れます。
またこの春に大騒ぎになった『美味しんぼ』騒動なども振り返りたいと思います。

続いて、こうした現状を私たちが越えて行く一つの大きな方向性としての国際連帯についてお話します。
3月のベラルーシ、ドイツ、トルコ訪問、8月のトルコ再訪、10月のポーランド訪問(予定)などに触れます。
以上を1時間半の枠の中でお伝えします。

僕の講演のあとに福島から京都に避難移住されている方より「福島から避難して」というお話があります。
またこれを踏まえて「原発賠償訴訟について」のお話もあります。
お近くの方、ぜひお越しください!
(ちなみに前夜27日にも左京区のキッチンハリーナで投げ銭ライブを行います。こちらは18時30分から。じっくり聞きたいという方はこちらにもどうぞ。ただし満員になったら入れませんのであしからず・・・。)


続いて10月9日の滋賀県大見八幡市で「集団的自衛権は戦争への道」というタイトルでお話します。
午前10時から。サン・ビレッジ近江八幡にてです。

集団的自衛権を持つ意味についてのお話になりますが、とくにハイライトしたいのは中東のシリア・イラク情勢です。
今、アメリカは台頭する「イスラム国」に対して、シリア領内での空襲を開始しました。しかしロシアは反対しており、国連安保理での決議があげられない状態にあります。
僕自身は国連安保理で決議が上がったとしても、アメリカが空襲を行うことには反対ですが、今回の空襲に対してはアメリカの国内外からですら法的根拠がないという指摘が出ています。

アメリカは自衛権の行使だとして合法性を主張しており、さらに集団的自衛権の行使として、エジプトなどアラブの数国を引き込んで攻撃を行っています。
このようにアメリカは、自衛権も集団的自衛権も強引に使って、戦争を正当化しようとしています。
今回の攻撃にすぐに自衛隊が参加することはないでしょうが、集団的自衛権の行使が決まれば、こうした戦闘に自衛隊が参加することになります。

しかもこの空襲開始のタイミングで安倍首相が、国連の場で、この法的根拠のない攻撃を絶賛し、資金面での協力を約束してしまいました。
安倍首相のこの発言は、イスラム国だけでなく、アメリカの度重なる軍事侵攻に批判的な人々の日本への不信感や怒りを呼び覚ますものでしかありません。
これまで中東ではとても良かった日本へのイメージを悪化させ、在外日本人の安全も著しく低めることになってしまっています。

まさに集団的自衛権は戦争への道。
みなさんと平和を作る道を一緒に考えていきたいです。

10月12日から14日まで岡山県に行くことになりました。

12日は吉備中央町でお話します。
タイトルは「原発は?福島は今、どうなってるの?
子どもたちを守るため、できることは?
福島・東京・東日本の現状、これからの健康被害と対応、食べ物のことなど─」

午後4時から6時まで。吉川公民館(ホール)にてです。

13日は瀬戸内市長船長町の「福岡住宅」でお話します。
水害対策・原子力災害対策についてです。午前10時からです。

14日も同じく瀬戸内市中央公民館で水害対策・原子力災害対策についてお話します。
こちらも午前10時から。なお13日、14日ともに蝦名宇摩さんが声掛けしてくださいました!

以下、それぞれの企画の詳細を貼り付けておきます。

***

9月28日 京都市

2014年 第40回国際婦人年京都集会
13:30~16:30
京都弁護士会館
参加費1000円

第一部…「津軽三味線」蝦名宇摩さん、
第二部…講演 守田敏也さん「福島は今…原発事故、放射能汚染はどうなっているか」、
    報告「福島から避難して」「原発賠償訴訟について」

主催:国際婦人年京都連絡会(075-256-3320)
後援:京都府、京都市

連絡先 09052525764(井坂)

***

10月9日 近江八幡市

「安倍サンやめて!」懇談会 第2弾
「集団的自衛権は戦争への道」

日時  2014年10月9日(木) 午前10時~12時
場所  サン・ビレッジ近江八幡 ミーティングルームA・B
近江八幡駅南口出口から徒歩約9分 (男女共同参画センター北隣りです) 
お話  守田敏也さん(フリーライター)
参加費500円

今、日本は大国の中で唯一、第二次世界大戦後、軍隊が他国民を殺したことのない国として、アフガニスタンや中東、アラブでも良いイメージを持たれています。
しかし、集団的自衛権が行使されると、日本とは関係なくても自衛隊が海外で戦争し、人殺しをさせられるようになります。
自衛隊が参戦すると、日本の良いイメージが壊れるだけでなく、戦争の当事者として報復の対象にもなり、安全保障に逆行してしまいます。
自衛隊が戦争をしないように、人殺しをさせられないように、一緒に平和について考えましょう!

主催:平和をまもるために戦争許さない会
世話人代表:鈴木悛亮  世話人:真野生道、福井勝、峯本敦子、高谷順子
連絡先 070-6505-9741(高谷順子)

***

10月9日 近江八幡市

午後2時ごろより会場をあらためて放射線防護に関する講演会を検討中。
会場等が決まり次第、また案内を出します!

***

10月12日 岡山県吉備中央町

3.11 原発事故をもう一度考える‥
守田敏也 講演会

原発は?福島は今、どうなってるの?
子どもたちを守るため、できることは?
福島・東京・東日本の現状、これからの健康被害と対応、食べ物のことなど─

10/12(日)
開演16:00~18:00(開場15:30)
吉川公民館(ホール)
〒716-1241 吉備中央町吉川3930-8 TEL.0866-56-7020 
参加費 500円

***

10月13日 岡山県瀬戸内市

 

いつ起きるかわからない南海トラフの地震や、台風による災害など、私たちの身の回りには多くの災害の可能性が潜んでいます。
今回の会では、兵庫県篠山市の防災計画に関わっている守田敏也さん(フリージャーナリスト)と、
東日本大震災で被災し、瀬戸内市に子どもと移住してきた渡辺由紀子さんをゲストに迎え、
実際の災害時の状況とその時に私たちがとるべき行動、そして子ども連れでの避難生活などをテーマに防災講義を行います。

 

≪時間≫  10月13日(月・祝)10時~12時
≪場所≫  ふれあいプラザ
≪参加費≫ 無料
※参加者に防災グッズプレゼント

 

≪講演会の流れ≫
 9:45 会場
10:00 開演 
10:10 渡辺由紀子講演
10:30 守田敏也講演
11:30 質疑応答 
12:00 終了

 

≪講演者プロフィール≫
守田敏也
京都市在住兵庫県篠山市原子力災害対策検討委員会委員。同志社大学社会的共通資本研究センター客員フェローなどを経て、現在フリーライターとして活動中。
原子力政策に関して独自の研究・批判活動を続け被災地にも度々訪問。物理学者矢ヶ崎克馬氏との共著岩波ブックレットから『内部被曝』を上梓。
ブログ「明日に向けて」を通じて、連日、原発情報を発信中。
※会場で守田さんの本や講演会のDVDを販売しております。

 

渡辺由紀子
東京都出身。4姉妹の母。結婚後、宮城県南三陸町でカキ養殖と民宿を経営していたが、東日本大震災で津波被災。
南三陸町での再建を断念したが、素晴らしいご縁に恵まれ、瀬戸内市牛窓でカキ養殖業を再開する。
また、震災前より、誕生学アドバイザー・産後教室講師として、小学校や保育所や産後ママクラスなどで
ゲストティーチャーとして「いのちのお話」を届ける活動を続けている。

 

主催 福岡住宅町内会

 

***

10月14日 岡山県瀬戸内市

つむぐる&カンガルーポ合同企画
親子がそろって生き延びるための防災講座

もはや災害はヒコゴトじゃない!!
これからの防災をリアルに考える学習会

2014年10月14日(火)10:00~12:00瀬戸内市中央公民館 参加費200円
フリージャーナリスト守田敏也さんのお話&みんなでカフェ交流会

いつ起きるかわからない南海トラフの地震や、台風による災害など、身の回りで起きるかもしれない災害。そんな、もしもの為の防災講座を行います。実際の災害時はどんな感じなのか?
子どもを連れての避難生活は?その時、私たちはどう動くべきなのか?今回は、ゲストに守田敏也さん(フリージャーナリスト)をお迎えします。
守田さんは兵庫県篠山市の防災計画にも関わっていらっしゃいます。お話の後はカフェ形式で、先生を囲んでみんなで楽しくおしゃべりしましょう。
知らないより、知っていたほうが良い!備えあれば憂いなし!もしもの時の備えとして、ぜひご参加ください。定員30名くらいまで 

お申し込みは 文化☆体験ネット西大寺子ども劇場
●TEL&FAX 086-942-1544  
Email:info@npo.sakuraweb.com

主催:つむぐる
NPO法人文化☆体験ネット西大寺子ども劇場

 

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明日に向けて(941)訃報!宇沢弘文先生がお亡くなりになられました!

2014年09月26日 18時30分00秒 | 明日に向けて(901)~(1000)

守田です。(20140926 18:30)

社会的共通資本を守り、育み、発展させることを訴え続けた宇沢弘文先生がお亡くなりになられました。僕にとっても大恩ある方でした。
18日のことだそうです。ショックで正直なところかなりおろおろしている自分がいます。
何はともあれ今日はみなさんに、宇沢先生ご逝去の報をお伝えします。

各社のニュースでも報道されていますが、NHKは宇沢先生のお元気な時のお姿が流してくれています。ぜひご覧ください。短いですがいかにも宇沢先生らしい語りを観ることができます。
他紙の報道も貼り付けておきます。

宇沢先生。
生涯を貫いて豊かな社会の実現のためのご奮闘され、心に響く思想、論文、言葉をたくさんのこしていただき、本当にありがとうございました。どれほど感謝してもしきれません。
先生のご努力にお応えし、社会的共通資本を守り発展させるため、核のない平和な社会を実現するために、今後もなお一層、身命を賭した努力を続けます。
先生。どうか安らかにお眠りください。合掌。

***

経済学者の宇沢弘文さん 死去
NHK 9月26日 10時42分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140926/k10014886591000.html

日本を代表する経済学者で、公害などの社会問題の解決にも尽力した東京大学名誉教授の宇沢弘文さんが今月18日、肺炎のため東京都内で亡くなっていたことが分かりました。86歳でした。

宇沢さんは鳥取県の出身で、東京大学理学部数学科を卒業後、経済学の研究を始め、アメリカに渡りシカゴ大学の教授などを歴任しました。
経済成長や消費者の行動を数学的な方法で分析する数理経済学の研究を進め、安定した経済成長のための必要な条件を、「消費」と「投資」の2つに分けて示した「2部門経済成長モデル」で注目を集めました。
昭和44年に東京大学の教授に就任したあとは公害問題などにも取り組み、自動車による交通事故や大気汚染などの影響を経済学的な視点で分析して、対策に必要な費用を利用者も負担して問題の解決につなげるべきだと指摘しました。
水俣病にも目を向け、自然環境や教育、医療など文化的で豊かな生活をするうえで欠かすことのできないものを「社会的共通資本」と位置づけ、効率や経済利潤から守るべきだと提唱しました。
その後、成田空港問題の平和的な解決に尽力したほか、地球温暖化の問題では、二酸化炭素を排出する企業などにコストを負担させる「炭素税」を導入するよう求めるなど社会的な提言を続けました。
こうした功績で平成9年に文化勲章を受章し、平成21年には環境問題の解決に尽くした研究者などに贈られる「ブループラネット賞」を受賞しました。
宇沢さんは3年前に体調を崩し、自宅で療養を続けていたということです。

「経済学の基礎作った功績は計り知れない」

宇沢さんの教え子で学習院大学経済学部の宮川努教授は「研究熱心な方で、授業のあとは毎回、われわれ学生と一緒に夕食を食べながら経済学のさまざまな話を聞かせてくださいました。
一般的に『経済学』と呼ばれている学問の基礎を作ってきた研究者の1人で、その功績は計り知れません。
経済発展によって人々の暮らしを豊かにするための研究だけでなく、公害問題など、経済発展がもたらす負の側面にもしっかりと目を向けてその解決に努力され、社会的な影響は非常に大きい」と話しています。

***

理論経済学者の宇沢弘文さん死去 環境問題でも積極発言
朝日新聞 2014年9月26日10時35分
http://www.asahi.com/articles/ASG9V316KG9VULFA005.html
 
世界的に知られた理論経済学者で、公害や地球環境問題にも積極的な発言を続けた東京大名誉教授の宇沢弘文(うざわ・ひろふみ)さんが18日、脳梗塞(こうそく)のため、東京都内で死去していたことがわかった。86歳だった。葬儀は近親者で営まれた。喪主は妻浩子さん。
鳥取県生まれ。東京大理学部数学科を卒業後、経済専攻に転じた。1956年に渡米し、スタンフォード大準教授やシカゴ大教授などを歴任。市場に任せる新古典派の成長理論をベースにした数理経済学者として活躍した。
消費財と投資財をつくる部門がそれぞれどのような過程を経て資本蓄積がなされるかを考察した「2部門経済成長モデル」などの研究で評価された。

ベトナム戦争に深入りする米国への批判から、68年に帰国。翌年、東大経済学部教授に就いた。74年に都市開発や環境問題への疑問を提起した「自動車の社会的費用」を発表。環境や医療、福祉、教育などで構成する「社会的共通資本」の整備の必要性を説いた。
東大を定年退職後は新潟大、中央大を経て同志社大社会的共通資本研究センター長に。ノーベル賞受賞者らが名を連ねる国際学会エコノメトリック・ソサエティーの会長や、理論・計量経済学会(現・日本経済学会)の会長も務めた。
83年に文化功労者、97年に文化勲章を受章した。ノーベル経済学賞の候補としても長年、名前が挙がり続けた。
地球環境問題の啓発に力を注いだほか、93年に設立された「成田空港問題円卓会議」のメンバーとして国と農家の調停役を引き受けた。
2000年代前半には「脱ダム」政策を掲げた田中康夫・長野県知事(当時)の諮問委員会に参加。環境税や旧住宅金融専門会社(住専)問題、教育、医療制度のあり方でも積極的に発言した。

「近代経済学の転換」「地球温暖化の経済学」など多数の著書がある。

***

宇沢弘文東大名誉教授が死去 経済成長論で先駆的業績
日経新聞 2014/9/26 1:30
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGH2500O_V20C14A9MM8000/

日本の理論経済学の第一人者で、文化勲章を受章した東京大学名誉教授の宇沢弘文(うざわ・ひろふみ)氏が18日、肺炎のため東京都内で死去していたことが明らかになった。86歳だった。既に密葬を済ませている。

1951年、東京大学理学部卒業と同時に特別研究生となり、経済学の研究を始めた。後にノーベル経済学賞を受賞した世界的な経済学者、ケネス・アロー氏の招きで56年に渡米、スタンフォード大助教授やシカゴ大教授などを歴任した。68年に帰国し、翌年、東大経済学部教授に就任した。
得意の数学をいかして60年代、数理経済学の分野で数多くの先駆的な業績をあげた。経済が成長するメカニズムを研究する経済成長論の分野で、従来の単純なモデルを、消費財と投資財の2部門で構成する洗練されたモデルに改良。理論の適用範囲を広げ、後続の研究者に大きな影響を与えた。その業績の大きさからノーベル経済学賞を受賞する可能性が取りざたされたこともある。

70年代に入ってからは研究の方向性が大きく変化した。ベストセラーになった「自動車の社会的費用」(74年刊)では、交通事故や排ガス公害などを含めた自動車の社会的コストを経済学的に算出し、大きな話題を集めた。地球温暖化をはじめとする社会問題にも積極的に取り組み、発言・行動する経済学者としても知られていた。
83年に文化功労者、89年に日本学士院会員に選ばれ、97年に文化勲章を受章した。「近代経済学の転換」「経済動学の理論」など多数の著書がある。2002年3月には日本経済新聞に「私の履歴書」を執筆した。

***

故宇沢弘文氏、公害など社会問題批判 多分野に「門下生」
日経新聞 2014/9/26 1:30
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGC2500E_V20C14A9EE8000/

宇沢弘文氏は経済学者として海外でもその名を知られ、ノーベル経済学賞の有力候補として期待された数少ない日本人だった。理論経済学で大きな業績を残した一方で、持ち前の批判精神から1970年代以降は一貫して「人間性の回復」を訴え、行動し続けた。
宇沢氏が経済学者として頭角を現したのは、50年代後半から60年代にかけての米国時代。初期の業績は、市場による調整機能を重視する「新古典派」理論に基づく成長理論。同氏の名を冠した「宇沢2部門成長モデル」という専門用語ができたほどで、発展途上国の支援策を検討する際などに幅広く利用され、新興国の台頭を陰で支えた。
しかし帰国して間もなく、研究対象を公害問題や環境問題に移した。74年に出版した「自動車の社会的費用」は大きな反響を呼んだ。熊本県・水俣などの公害現場に何度も足を運んだほか、成田空港問題でも円卓会議の座長として国と農家の和解に向けて努力した。

自らの思想信条へのこだわりと、フットワークの良さも人並みはずれていた。日本のどこかで公害問題が起きていると聞けば、リュック一つ背負って直ちに現地に飛び、実地調査する生活を続けた時期もあった。
また、学校、病院といった社会的インフラから自然環境までを包含する「社会的共通資本」という概念の重要性を提唱。環境、教育、医療などについても積極的に発言した。地球温暖化を防ぐため、二酸化炭素の排出1トンあたりの税率を1人あたり国民所得に比例させる「比例的炭素税」の導入などを提言した。

功績は経済理論の構築にとどまらない。教育者としての影響の大きさはよく知られている。2001年にノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大学教授をはじめ世界中の様々な分野で「門下生」が活躍している。
日本に戻ってからの教え子では、岩井克人・国際基督教大学客員教授が代表格。40歳代の若手も含め、日本で活躍する経済学者の多くが宇沢氏の薫陶を受けた。
(経済解説部 松林薫)

***

訃報:宇沢弘文さん86歳=経済学者、消費社会を批判
毎日新聞 2014年09月26日 02時31分(最終更新 09月26日 09時29分)
http://mainichi.jp/select/news/20140926k0000m040147000c.html

東大名誉教授で世界的な経済学者である宇沢弘文(うざわ・ひろふみ)さんが18日、肺炎のため死去した。86歳だった。葬儀は親族で営んだ。喪主は妻浩子(ひろこ)さん。

1951年東大理学部数学科卒。経済学に転じ、56年に渡米、58年に米スタンフォード大経済学部助手となり、のち助教授、准教授。カリフォルニア大経済学部助教授、シカゴ大教授を経て、69年から東大経済学部教授。80?82年に学部長を務める。
83年に文化功労者、97年に文化勲章受章。数理経済学の分野で多くの実績を上げ、新古典派経済学の発展に大きな影響を与えた。

しかし、70年代以降は市場原理優先の新古典派理論を批判する立場に転換。環境保全への視点から生産、消費優先の先進国の在り方に疑問を呈してきた。二酸化炭素の排出に対し、国民所得に比例した「炭素税」を各国に課すことも提案。東大教授時代は、電車や車を使わず、自宅からジョギングで通っていた。
一時は、ノーベル経済学賞に最も近い日本人学者といわれた。

東日本大震災直後の2011年3月21日、脳梗塞(こうそく)で倒れ、その後、自宅などでリハビリを続けていた。
主要著書に「近代経済学の再検討」「自動車の社会的費用」「地球温暖化の経済学」「社会的共通資本」などがある。

***

宇沢弘文さん死去:数理経済学で実績 温暖化防止訴えも
毎日新聞 2014年09月26日 07時10分
http://mainichi.jp/select/news/20140926k0000m040145000c.html

18日に亡くなった文化勲章受章者の宇沢弘文・東大名誉教授は、マクロ、ミクロ両経済学の分野で先駆的な業績を上げ、世界計量経済学会会長を務めるなど、世界的な経済学者として活躍した。
同時に環境破壊など現代文明に対する鋭い批判者としても知られ、地球温暖化防止などを訴え続けた。

宇沢さんは1951年に東大理学部数学科を卒業。生命保険会社に一時勤務したが、経済学に転じ、渡米。スタンフォード大で助教授、准教授を歴任。カリフォルニア大経済学部助教授、シカゴ大教授を経て、69年から東大経済学部教授となった。
50年代から70年代にかけ、数理経済学の分野で数多くの実績を上げた。特に高い評価を受けたのは、消費財と資本財の2部門の成長モデルの構築。農業と工業が成長を遂げるため、土地、資本、労働など生産要素が部門間でどう移動すればいいかを理論的に実証した。

しかし70年代以降は、次第に市場原理を優先する現代新古典派理論に疑問を抱き、同理論を激しく批判する立場をとった。公害など環境問題に対応できていないという不満からだった。地球温暖化など環境問題への発言は多く、生産、消費優先の先進工業国のあり方に疑問を投げかけた。
90年8月には、毎日新聞のインタビューに対し、「石油、石炭をふんだんに消費し、環境保護の費用を出し惜しんできた工業文明のツケが、今、私たちに回ってきている」とし、「将来の世代と開発途上国に負担を肩代わりさせないよう、生産、消費のコストに温暖化を減らす費用を急ぎ組み込まねばなりません」と語った。
当時、宇沢さんが提唱した「炭素税(カーボン・タックス)」を世界各国に課すというアイデアは、その税収で大気安定化国際基金を設け、発展途上国の森林作りなどに役立てるという狙いだった。そうした環境面での国際貢献で日本が先頭に立つよう、強く訴えた。

企業活動と環境保全をどう両立させるかについて、宇沢さんは「経済成長率が高いということは、地球の温暖化や日本の経済摩擦のような好ましくない問題を引き起こす。本来なら経済成長率は低いほど望ましい」とさえ述べていた。
97年に地球温暖化防止に向け、京都議定書が締結され、先進国が温室効果ガス削減目標を定めたが、日本で官民による環境保全の流れを作る上で、宇沢さんの主張は大きな影響を及ぼした。
近年は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の反対運動に携わり、日本の農業保護などを訴えていた。

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