守田です。(20150515 22:00)
福島第一原発1号機建屋カバーの解体作業が始まりました。放射能が飛散する可能性があるので要注意です。
このカバーは放射能の継続的な飛散がある1号機に設けられたものです。放射性物質の浮遊、拡散防止を目的としてきました。
しかし1号機の中には2、3号機と同じように使用済み燃料プールがあります。ここに392体の燃料集合体が沈められており、一刻も早く降ろした方が良い。そのためにカバー解体が必要とされているのです。
実はこの作業は昨年の10月22日から試験的に行われています。まずはパネルを少しだけはずし、中に放射能飛散を抑える薬剤を撒き、飛散が抑えられるかのテストを行ったのです。
これに基づいて本年3月に本格的な作業が開始される予定でしたが、2013年8月19日に行われた3号機のガレキ撤去時に、相当量の放射能を飛散させてしまったことが事後的に発覚したことや、サイト内で死亡事故などが起こった影響で延期されていました。
今回もまずは1週間かけて48か所の穴から薬剤を散布し、放射能の飛散を抑えたことを確認しながら作業を進めるとされています。
しかし不安が残るのは、これまで東電が繰り返し甘い見通しや、嘘の発表を繰り返してきたことです。とくに2013年8月の3号機ガレキ撤去では、東電の発表で4兆ベクレルもの放射能を飛散させたにもかかわらず、なんと1年近く秘密にしていました。
明らかにされたのは2014年7月16日だったのです。これらについては以下の2つの記事で特集してあります。これらからこのカバー解体工事期間、福島第一原発により近い地域を中心に、放射性物質の飛散への注意をこれまで以上に強める必要があります。
明日に向けて(954)要注意!福島原発1号機のカバー解体が22日から始まります!
20141016
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/b0fc0fec3cb9187e66931def004845c2
明日に向けて(896)昨夏、がれき撤去で福島原発から膨大な放射性粉じんが飛んでいた!
20140719
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/18ec6ca3381185dae0d4e5b316d8c520
さて今回の工事の特徴として、毎日新聞が次のように報じています。
「屋根は幅約7メートル、長さ約43メートルのパネルを6枚並べた構造。
8月中旬ごろまでにパネルをすべて取り外し、その後、放射性物質飛散防止のため防風シートなどを取り付ける。放射性物質の飛散を防ぎながら作業を進めるため、解体には約1年半かかる見通し。」
幅約7メートル、長さ約43メートルのパネルを6枚はずすだけで今から3ヶ月もかかるとされているところから考えられるのは、相当、慎重に進めるべき仕事と東電が考えていることです。
またパネルをとってからさらに防風シートなどが取付けられるわけです。それを含めた解体が約1年半かかるのですから、これまたかなりの慎重さが求められるのだということです。
もちろん作業には十分に慎重さを期してもらいたいですが、問題なのは、もし途中で放射能を飛散させてしまったときに、東電がただちに住民にそれを伝えるとは考えられず、こちらの側が疑い、警戒し続けざるを得ないことです。
作業工程の発表からも作業の困難さが垣間見えるのですから、もっと率直にそのことを明らかにし、放射能の飛散がありうることもはっきりと社会に告げ、いざというときの放射線防護を十二分に呼びかけて仕事を進めるべきです。
にもかかわらず嘘をつき続けるので、現場作業の困難さ、福島第一原発の深刻な状況への理解も生まれません。それはそもそもの目的の燃料プールの核燃料おろしの作業にも共通する問題です。
同じく毎日新聞の記事には2019年度に核燃料取り出しを始め、2025年度に原子炉内に溶けた核燃料デブリの取り出しを始めると書かれていますが、実はそれも昨年の試験的なパネル外しのさいに大幅に延期された計画です。
というのは昨年10月まで、東電は1号機の核燃料取り出しを2017年度に始めると言っていたのでした。しかしパネルを外した一週間の調査で2019年度からに延期され、デブリ取り出しも2020年度から2025年度に延期されたのです。
ここでも実際にあったことは、パネルを開けて調べてみたら、1号機の状態が思ったより悪く、とても2017年度からの取り出しなどできないことが分かったということでした。いやすぐに発表されましたから、予想されていたのだとも思われます。
この際、東電の担当者は「そもそもデブリの状態が分からない」とも述べました。それらからも2019年度からの燃料の取り出しも2025年度からのデブリの取り出しも、根拠なしに語られている可能性が高いです。この点は以下の記事を参照して下さい。
明日に向けて(967)福島1号機 燃料棒取り出しは極めて困難!
20141107
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/da656ba70392764d8ad907fe30275c06
こうした事実が明らかにしているのは、一つに、今、行っているのは事故の収束作業であって、廃炉工程になどまだまったく入れていないのだということです。
それを無理やり「事故は収束した」だとか「原発はコントロールされている」だとかの大嘘をついているから、事態の危険性を明らかにできず、被曝防護を訴えながらの作業が行えないのです。ここが根本的矛盾であり、私たちの危機そのものです。
ともあれこの報道からこれから行われる作業が放射能が飛散するかもしれない危険作業だということがはっきりとしているのですから、私たちは身構えた方が良いです。8月まではカバーを外しその後に防風シートを張るのですから長きにわたる警戒が必要です。
どうすれば良いのかというと空間線量をチェックし続けることですが、この点でこの間、原発の周辺で何度も空間線量測定器の不具合が言われ、異常値を示すたびに「壊れていた」とされることが続いていて、なんとも厳しい状態が続いています。
こうした重要な計測器でのエラーが繰り返されていると当たり前のことですが警戒心は落ちてしまいます。それこそ毎日、「オオカミが来たぞ」と言われて、実際には「何もなかった」と事後に訂正されることが続いてきたからです。
いや2013年8月19日には多くの人が気が付かない間に、少なくとも半径50キロの地点まで放射能が新たに運ばれてきていたのですからより状態は悪い。本当に苦しい状態です。
具体的な対処法を考えてみたいと思います。まずガイガーカウンターを持たれている方は、それで日常的に近くのモニタリングポストを点検するとともに、同じく計測器を持っている友人・知人間で情報のシェア体制を作っておくと良いと思います。
自分の身の回りで異常値が出ているときにすぐに連絡を取り合い、一斉に異常値が出ているときは危険性が高まっていると考えて退避行動をとる。
自分の機材や身の回りのものだけが異常値を示しているときは、とりあえずその場を離れる。そうした対応を行うのが合理的なように思えます。
また暑い最中にマスクの着用は大変、苦しいことだと思いますが、しかしとくに福島原発方面から風が流れてくる時は着用した方が良いです。
マスクをできずとも、まめにうがいをすればそれなりの効果があるのではないかと思えます。少なくともやらないよりはやった方がいいです。
ただ夏にこうした防御を重ねることは本当に困難で、それだけで気が疲れてしまいます。被曝防護はall or nothingではなくて「少しでもやった方がまし」と考えて、可能な努力を重ねられて下さい。
もちろん可能な方、機会をうかがっている方がおられるならば、この時期に避難移住されることをお勧めします。
そうでなくても夏に向けて積極的に保養に出られると良いと思います。
それらも適わない方もたくさんおられると思います。その場合も健康生活に留意し、うがい、手洗いなどで日常的にまめに放射能を落とすなどして対処されてください。
お仕事やお知り合いを訪ねるなどでこの時期に原発の近くを訪れられる方にも十分な警戒を呼びかけたいと思います。
こうした心配が杞憂に終わり、放射性物質の大量飛散などないままに、カバーが解体され、燃料棒が取り出されることを願うばかりですが、これまでの東電の仕事の進め方、体質を考えたときに、やはり防護を訴えざるを得ません。
どうかお身体をお守りください。
重要情報ですので、毎日新聞の記事を貼り付けておきます。
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福島第1原発1号機:建屋カバー解体開始…来秋完了目指す
毎日新聞 2015年05月15日 11時50分(最終更新 05月15日 11時51分)
http://mainichi.jp/select/news/20150515k0000e040200000c.html
東京電力は15日午前、福島第1原発1号機の廃炉に向けて、原子炉建屋全体を覆っているカバーの解体作業を始めた。来秋までに解体し、建屋内のがれきを撤去した上で、使用済み核燃料プールからの核燃料取り出しを目指している。
1号機建屋の最上階には使用済み核燃料プールがあり、392体の核燃料が残っているが、周辺には原発事故によるがれきが散乱したままで、核燃料取り出しの障害となっている。
そこで、事故後に放射性物質の飛散を防ぐために設置した建屋カバーを取り外し、がれきを撤去する。
この日は、カバーの屋根に計12カ所の穴を開け、内部に飛散防止剤をまく作業を始めた。屋根は幅約7メートル、長さ約43メートルのパネルを6枚並べた構造。
8月中旬ごろまでにパネルをすべて取り外し、その後、放射性物質飛散防止のため防風シートなどを取り付ける。放射性物質の飛散を防ぎながら作業を進めるため、解体には約1年半かかる見通し。
計画によると、2019年度に使用済み核燃料プールから核燃料を取り出す作業を始め、25年度に原子炉内に溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しにかかる。廃炉作業の終了は2040〜50年ごろになるという。【斎藤有香】