明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1904)事故対策より自社を守るために悪知恵を回し続けてきた東電を罰し、まともな廃炉プロジェクトをたちあげるべきだ!(汚染水問題と東電の犯罪性―2)

2020年10月21日 11時00分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20201021 11:00)

福島原発からの汚染水の海洋放出を止めるための論稿の続きです。初めにFoE Japanの呼びかけている署名をご紹介します。26日午前7時まで。ぜひご協力ください。
フォーム1)https://pro.form-mailer.jp/fms/62f8c997208969
フォーム2)https://forms.gle/iFzGMWutM76PptTGA

東京オリンピック招致を利用して政府からお金を引き出した!


安倍首相の大嘘演説を報じるANNの報道(20130909)に英語が付記された画像 ネットより

前回、東京電力が2013年7月の参院選の後に、汚染水問題の告白を始めたことを記しました。すぐに政府が対策への乗りだしを発表しましたが、東電はその後に、汚染水タンクからの高濃度汚染水漏れなども発表しました。それは安倍首相のブエノスアイレスでの大嘘につながっていました。今回はこの点から述べたいと思います。

8月20日に東電は汚染水を汲み上げたタンクから300トンも汚染水が漏れたことを発表。しかもベータ線を出す放射性物質が1リットルあたり8000万ベクレルと高濃度でしたから、300トンだと240兆ベクレルにもなりました。
しかしこのころは「過去最大」「高濃度」などの見出しの付いた情報が連日出され、聞いている側が麻痺して何が「高濃度」なのかも分からなくなっていました。重大事実を人々に受け入れさせる東電のいつものテクニックでした。


タンクからの汚染水漏れを報じる日経新聞 20130820

こうした流れの中で9月8日にブエノスアイレスでオリンピックの開催地を決める会議が行われました。東電はこれに向けてさらに汚染水問題の「告白」を続けました。情報は世界にも流れてオリンピックを獲得したい日本政府を窮地に追い込んでいきました。
だから安倍首相はブエノスアイレスでこう言わねばならなかったのです。”Let me assure you, the situation is under control”=「私はみなさんに原発は統制のもとにあることを保証いたします」と。
安倍首相は「東京に悪影響を及ぼすことはない」とも語り、さらに「汚染水の影響は福島原発の港湾内〇・三平方キロメートル内で完全にブロックされている」「必ず責任を完全に果たす」と言いきりました。

これは決定的でした。汚染水問題は、東電の責任から政府の責任になってしまったからです。対策費も東電ではなく私たちの血税が投入されることになったのです。
東電が計算ずくで動いていました。選挙だけではなく、その後の東京オリンピック招致会議も考えた上で、世界中の人々の不安の高まりを利用したのです。

安倍首相は東電の狙った通りに「必ず責任を完全に果たす」と世界に公言してしまいましたが、東電はこの効果を最大化するために、直後の9月9日に安倍発言の一部否定まで行ってみせました。
「(汚染水は)完全にブロックされているとは言い難い」と言ってのけたのです。嘘つきが嘘つきの発言を否定したわけです。
大嘘をついた安倍首相との対比を際立たせ、あたかも東電の方が正直であるかのように見せるとともに、首相を一層苦しい立場に追い込むことで、より政府が東電をかばい、汚染実態を隠さざるをえなくするためでした。


安倍首相発言を否定する東電の会見 The Huffington Post 20130909


政府のお金を引き出して壁を作ったが・・・

その後の対策はどうなったのでしょうか。私たちの税金を使って東電は海側に汚染水の流れを止める壁を作り、2015年10月26日に完成させました。
東電はこの段階で1日290トンだった汚染水の流出が10トンにまで減らせたと語りました。しかしそれは2013年夏からの2年間でも、およそ300トンもの汚染水が毎日、垂れ流しにされていたことを物語っています。


遮水壁は壊れた建屋を作った鹿島が受注 鹿島HPより

しかも流出量がかなり減ったはずの壁の閉合の少し前でも、放射性セシウムが1日当たり16億ベクレル、ストロンチウム90などのベータ線を出す放射性物質70億ベクレルが出続けたことが発表されています。
ようするに汚染水漏れはずっと止まっていないのです。しかし東電は漏れた量をきちんと発表せず実態を隠し続けています。

2014年7月8日の日経新聞の発表によれば、そもそもこの海側遮水壁の建設が地層を大きく乱したために、地下水の流れが変わり、より深部に向かって汚染水が移動した可能性が伝えられています。
日経はこう述べています。「実は、福島第1原発の地下構造や地下水の流れはほとんどわかっていない。建設時のデータなどをもとに想像しているにすぎないのだ。」・・・遮水壁の効果も疑念にさらされたままです。

また壁が閉合する前の測定でセシウムよりもストロンチウムなどベータ線を出す放射性物質が4倍以上も多かったのに、ストロンチウムの検査がほとんどなされていないことも大きな問題です。
水産物を主に測定しているのは水産庁ですが2017年度の検査でセシウムの値が測られた水産物が16929点だったことに対し、ストロンチウムは2011年4月から2019年2月まででわずか198点しか測られていません。

しかもこの間にも東電が、建屋の屋根に溜まった放射性物質が雨に流され、側溝から海に流れ出していたことを把握していながらも、一年間も放置していたことが明らかになりました。(2015年2月25日)
明らかになっているのは発覚したものだけ。実際にどれだけの汚染が繰り返されているか、想像を絶するものがあると言わねばなりません。


汚染水を東電が再び三度、無視していた 東京新聞20150225

にもかかわらず安倍首相がブエノスアイレスで大嘘をついて東京オリンピック開催権を手中にしてしまったがゆえに、政府も経産省も東電をかばい続けることになってしまったのです。
のちに安倍首相は森友問題で「私や妻が関わっていたら国会議員を辞める」と断言し、官僚たちが文章改ざんを強いられることになって、その末に赤木さんが自死されましたが、東電の方は安倍首相の大嘘をまんまと利用し続けています。


海を守るためもう意図的な放出を少しもさせてはいけないし、東電にこれ以上現場を任せていてはいけない!

東電の意向を踏まえていま政府は「トリチウム以外を規制値まで取り除いたものを海に放出する」ことを方針決定しようとしていますが、しかしここにも騙しのテクニックがあります。あたかもこれから初めて放射能汚染水を流すような口ぶりであることです。
しかしすでに東電は膨大な放射性物質を海に流してきたのです。またいまも流出が完全に止まっているわけではないのです。この点を追求しなければ。
そもそも原発サイトの地下構造や地下水の流れ、海への漏れ出し地点などには不明な点も多く、海側の壁で本当に10トンまでとどまっているのかどうかも相当にあやしいです。

これらから導かれる結論は以下です。
(1)さんざん海を汚してきた東電を厳重に罰しなければなりません。また当然にももうこれ以上の意図的な放出を認めてはなりません。海洋放出以外の方法はいくらでもあり真っ当な検討を進めるべきです。
(2)東電が隠してきた汚染実態を把握するため、セシウムと同じくらいのストロンチウム検査を行い、発表すべきです。トリチウムについてももっと厳しく検査すべきです。
(3)自社の損得ばかり考え、当初は汚染水問題をないものとしてきた東電=犯罪集団=原子力マフィアに代えて、もっとまともな廃炉プロジェクトを立ち上げるべきです。最低でも原子力市民委員会などによる市民側からの監査体制が必要です。

以上の点を訴え続けましょう!

#汚染水海洋放出反対 #海を汚すな #放射能を海に流すな #東京電力 #東京オリンピック

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