明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1908)日本は放射能汚染水処分に関する人権義務を無視してはならないー国連エキスパート

2020年10月29日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20201029 23 2:30)

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の声明をご紹介します!

前回、福島原発からの放射能汚染水海洋放出の動きに対して、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が6月9日に声明を出したことを紹介しました。
コロナ過で十分な国際的な討論もできない中で、日本が拙速な決定を下すべきではないというもので、大変、説得力に富んでいました。今回その全文をご紹介します。

***

日本は放射能汚染水処分に関する人権義務を無視してはならない!ー国連の専門家から
https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=25940&LangID=E

ジュネーブ(2020年6月9日)
国連の人権に関する専門家は本日、COVID-19危機が過ぎ、適切な国際協議が開催できるようになるまで、福島第一原発からの放射能汚染水の海洋投棄に関する決定を延期するよう日本政府に要請した。
独立のエキスパートはこう述べた。「われわれは日本政府が、有意義な協議のための時間や機会を作ることをせずに、放射能汚染水の海洋への放出のタイムラインを加速させたとの報告を受けて深く懸念している」。
信頼できる情報筋は、2020年のオリンピックが延期されることにより、日本政府が放射能汚染水放出に関する新たな意思決定プロセスを進めることが可能になったと指摘している。

彼らは、COVID-19が日本のすべての影響を受けたコミュニティ、および先住民族を含む近隣諸国のコミュニティのインプットの機会を限定させている間に、政府が現在の公開協議に対して短期間の延長しか行っていないことは著しく不十分であると述べた。

「COVID-19は、これからの世代の人々と地球に対し、深刻な影響を与える決定から注意をそらすための小手先の手段として使用されてはならない」と専門家は述べた。
「それらは地元の日本の漁村の生活にだけでなく、人権にも、そして国外の人々にも深刻な影響を与えてしまう。」

「容量を増やすために追加の貯蔵タンクのための十分なスペースが利用可能だ。またもともと2020年のオリンピックが終わるまでは公開協議が行われることは予想されていなかった。
このため急いで決定する必要はまったくない」彼らは述べた。

「われわれは、日本政府に対し、国内外の人々や諸国民(諸民族)に影響を与える可能性のある放射能汚染水の処分に関する協議のための適切なスペースと機会を設けることを求める。
さらに、日本政府に対し先住民族(あるいは土着の人々)の権利を尊重することを求める。人々が事前の行き届いた情報をもとに判断できる自由を確保し、またそのような判断を形成するために集い、結社する権利を尊重することを求める。」

専門家たちは彼らの懸念を日本政府に伝えた。国連の専門家は以前、一般大衆にとって「許容できる」とされる放射線の曝露レベルが増加されたこと、また原発事故後の除染作業に立場の悪い労働者が使用されていることに懸念を表明した。


OHCHRの出版物 「人権をすべての人の現実に!」


人権の観点からプロセスを問題視

全体としてとても素晴らしい内容になっています。そもそも東京オリンピックを開催するなら言い出さなかったであろうことを、延期になったから言い出していること、だから切迫性はないことなどとても鋭く見抜いています。
また何より、周辺国や地域を巻き込む問題なのに、コロナ禍で国際的な討論などがしにくいときに拙速に進めようとするのは、人権を尊重しない態度だと鋭く指摘しているのも素晴らしい。
先住民族を始めとする人々の人権へのリスペクトも呼びかけていて、すごいなと思いました。

なおこの声明は、有害物質の処理、食糧の権利、平和的集会・結社の自由、先住民族の権利を担当する4名のエキスパートが共同で行ったとされています。
タイトルで英文ではnuclear waste disposal、直訳では核廃棄物処分という言葉が使われていますが、公益財団法人人権教育開発センターがこれを紹介する際に「放射能汚染水」と訳していたのでそれにならいました。

また「indigenous peoples」をどう訳すか難しかったです。indigenousは先住民族を指す言葉。しかしこの文章を読んでいるとどうも地元の方たちのことも指しているように思えました。
その上で長らく国連で働いてきた友人にアドバイスをもらったところ、「これを書いた人々はしっかりと日本のことを見ていて、かつて東北から関東ぐらいまでアイヌ方たちが住んでいたことを踏まえているように思える」
「確かなことは分からないけれど、ともあここはー先住民族(あるいは土着の人々)ーと訳すので妥当なのではと。それでこう訳しました。この点、より正しいことが分かる方は教えてください。

ともあれこれらの言葉の選び方でも、人権を強く意識しており、だからこそプロセスを問題にしていることが伝わっています。
このように放射能汚染水海洋放出問題は人権問題でもあります。この点を広めていきましょう!


声明文 詳しくは添付のアドレスからご覧ください。

#汚染水の海洋放出決定に抗議します #福島原発 #放射能汚染水 #国連人権高等弁務官事務所 #OHCHR

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