明日に向けて

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明日に向けて(2425)国の調査は結論ありき!  ―三田茂医師講演・「原爆ぶらぶら病」と『能力減退症』=被爆者と『新ヒバクシャ』その類似性 全文文字起こしその2

2024年07月24日 00時30分00秒 | 明日に向けて(2401~2600)

守田です(20240724 00:30)

三田茂医師講演を動画をご覧下さい

岡山の三田茂医師講演の全文文字起こしの2回目をお届けします。まずは動画をご紹介します。

今回は18分50秒から37分18秒までを掲載します。

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三田茂医師講演 「原爆ぶらぶら病」と『能力減退症』=被爆者と『新ヒバクシャ』その類似性、共通性ー被爆・被曝の新しい理解・病悩の解決の可能性 全文文字起こし その2

◯国の調査は結論ありき~1979年の「原爆被爆者二世の健康に関する調査研究」について

これはその医学会のスライドではなくて、一部の方しか知らないけど、みなさん知っているのかな?



昭和54年1979年、「原爆被爆者二世の健康に関する調査研究」なのですけど、「原爆症調査研究班」、厚生省からの委託みたいな形でこういう調査を行いました。まあ、研究者の面々を見ると「これは大丈夫か?」と言うような面々ですけれど。僕から見れば。
それで中身を見ると、1979年なので、まだ手書きですね。「二世のみなさんの健康検査をしたら、例えば赤血球がこれぐらいでした。5歳まで。10歳まで。15歳まで。男性。女性。これぐらいの平均値でした」ということが手書きで書いてあります。



これと比較するという事で、ここに小宮先生の「臨床血液学」という昔のバイブルみたいのがあるのですけれど、日本人のその年齢ごとのいろんな項目の平均値が記してあるものが、ひとつポーンとコピーして入っている。それで赤の書き込みがありますが、これは僕が「ちょっとおかしいぞ」と思って全部計算し直して、何%ぐらいおかしいかを入れたところです。それで、本当のところが分からないように結論が出されているというのが、僕の見立てです。それでこれを説明しますね。

まず血液の中の白血球の数。4000から10000まで。これが5歳まで、10歳まで、15歳まで、20歳でここまでが未成年。こっちが成人です。




小宮先生のバイブルによると「日本人平均はこんなふうです」と書いてあります。「赤ちゃんは9500ぐらい、子ども達で8000ぐらい、大人になると6500ぐらい」というのが昔から言われていることです。これは、医者は誰も異議のないところだと思います。

それで被爆二世のみなさんの1970年代の調査によると、赤が広島、青が長崎、緑が広島と長崎以外に住んでいる二世の人の結果です。



全部で17000名も行っているのですよね。すごい調査だと思います。それで広島が3000人、長崎2000人、その他が12000人。だから、「その他に住んでいる人」が、一番数が多いということです。どう思います?なんか二世の方がやっぱり低くないかと僕は思うのです。

ちょっと分かりにくいので、一番数が多い「その他に住んでいる人たち」ね、広島・長崎以外に住んでいる人たちの数を見ると、どうでしょうね。




全体的にやっぱり白血球は少ないと思う。特にこの子どもたち、それから未成年のあたりの白血球の数は、日本人平均と比べてすごく下がっていると思うのですよね。まあ大人になってくるとあんまり目立たなくなる。そう思います。

これが広島。やっぱり同じような感じだと思います。



みなさん、「白血球ってこんなものかもしれないよ」と思うかもしれないですけれど、1万何千人調べた平均ですから。

子ども、赤ちゃんたちの値が7500というと、ちょっと僕たちは「え?」っと思うわけです。成人、二十歳前後の人が6000というと、「ちょっと少ないね、これは」と思うわけですね。


これを、こういう僕が作ったようなグラフは無しですよ。数字だけ書いている。違うところで比べたら数字だけ出してある。それで「日本人の平均値と比較して大差ない」。これがこの調査の結論です。



ちなみにこのページの下の黒い線、これは僕が『新ヒバクシャ』に対して行った調査の数字です。僕はこの数字を見て「『新ヒバクシャ』は日本人の平均より低い。白血球が下がっている」と結論を出している。被爆二世のみなさんの時よりも低いですね。首都圏の311で被曝した人たちの方が。



次に赤血球。赤血球は血液の赤さの指標です。



これも小宮先生の平均は、子どもたちは13.5、大人でも15は超えないですね。

被爆二世のみなさんの結果の図をお見せします。




これを見て、純粋に見て小児15歳以下は赤血球の濃さが低い、二十歳ぐらいからはちょっと濃い。貧血。多血。多血って血が多いということなのですけれど、こうした傾向が明らかになるのではないかなと思う。

実際に診療していても、例えば検査をしていても血色素量が15.5なんて言ったら「あなたずいぶん血液が濃いですね」とそういう感じの人です。平均値がそうだっていうことですからね、これは。
やっぱりちょっとガタガタしているので、一番数の多いこの広島・長崎以外のを見るとこんな感じ。




明らかに僕は「小児で下がっていて成人で高い」と思いますけどね。
これを「大差がない」と言ってる。 


このグラフを出して「大差がない」と言っているのではないですよ。数字だけを見せて「大差がない」と言っている。

これがお小水。おしっこの検査で、尿糖、糖が出ているかどうかです。


おしっこに糖が出るというのは、ほぼイコール「糖尿病です」ということです。

これはね、他のデータには書いてなくて、この報告書には。学校健診のことしか書いていない。学校健診、小学校・中学校・高校ぐらい。糖尿病の子なんてそういるものではなくて、0.0何パーセントぐらいです。だからほぼセロです。




赤が広島。まあいいのかな?これぐらいだったら。


緑が広島・長崎以外。青が長崎。この長崎の20歳から25歳が16%パーセントということは、これ12000人も調べているのだから、「長崎の被爆二世は調べたら6人に1人が糖尿病だ」という事ですよ。「それはおかしいだろう」と言うのだったら、「検査がおかしいだろう」ということになると思う。まあ、こういうことです。




「尿所見の異常値の出現頻度が、長崎が広島に比べて多い」と書いてありますが、そうですよね。この赤より青の方がずっと多い。これはOK。「この理由は不明であるが」とありますが、不明なんですね、これじゃね。
それで「後述する後で述べる精密検査結果と併せて判断すると」と書いてあるのだけれど、精密検査は行われていないのです。後述もしていないです。だってやってないのだから結果なんか書いてない。
それで「必ずしも本質的なものであるとは言えない。被爆2世健診の尿所見が放射線被ばくと関係ない集団のそれと」というのはこの線ですね、黒い線。その一般の人たちのそれと「ほぼ同様であることが理解できる」というのがこの報告の結果です。

「尿蛋白」。これ全部やっていると時間がないので、ちょっと目立つところだけ選んでみなさんにお見せしています。


尿蛋白は腎臓が悪い時に出て来ることがある。悪くなくても出ることもある。ですから学校健診で、3~4%ぐらい陽性になるのは、まあそうなんだろうなって思います。


広島の赤、まあそんなものかな。


これが長崎とそれからその他。


その他がすごく多いのですけど、これも同じ文言で「大差ない」と。それで「精密検査している」というけどしていない。

これが「尿の潜血」。


血液の反応。これも病気ではなくても出ることはある。学校健診で1.5%ぐらい出ているみたいです。これは異議のないところかな。それぐらい出るかもなって思います。こんなふうに。


多いですよね、尿潜血。血液の反応が出る人が多い。さっきも言ったように、311の『新ヒバクシャ』を三田医院で診察していて、血尿の人が多かったです。あと同じ時期に東葛地域の被曝の強かったと思われる人たちは、「目で見た血尿」の報告が多かったです。なんか、関係するような気がする。
それから、あとでまた出てきますけれども、アンケートの時にも比較的若い年齢の、尿路結石が多いのですよね。被爆二世のみなさん。そういうのも関係しているのかなと思う。でも、(調査班は)これも「異常なし」と読んでる。

「ウロビリノーゲン異常」というグラフをお見せします。


おしっこの検査の中にウロビリノーゲンと言う検査があるのですが、その異常ってね、まずないです、普通にやってて。だからこれもすごい異常。ウロビリノーゲンが異常という事は、ほぼイコール肝臓が悪い。

日常診療で普通に来た方に検診して、ウロビリノーゲンが陽性になるなんて見たこともなくって、ウロビリノーゲンが陽性ということは、ほとんど「黄疸が出てる」ことと同じぐらいなのです。だから、顔を見て黄色というのと同じぐらいのことですけど、高いところで8パーセントぐらい。だから12~13人に1人はウロビリノーゲンが出てるなんてもう「この検査大丈夫か!」と思うのと、でもほかの検査も似たようなところがあるので、やっぱり「まずいんじゃないかな」と思うわけです。

それで、ここに書いてある結論を読みます。




「被爆二世の健康状態は、一般国民の健康状態と全く変わりない」と書いてある、グラフ化していませんからね。数字だけ出して、「変わりない、変わりない」と言ってるわけです。
「被爆2世であることに対する不安を持っている者がかなりおり」とありますが、不安と言うのは自分の健康がどうもおかしい。遺伝は大丈夫?とこういう不安を持っているわけです。「それに関連した自覚症状の訴えも多い」とあります。
「自覚症状は非常に疲れやすくて眠気が強くて、頭痛が絶えない」。この時の調査でみなさんそう言った。それで、「これは不安だからなった」と言っているのです。決めつけているのね。「だから今後は不安解消を目的としたカウンセリングが大事なんだ」と、こういう結論ですね。
国の結論ってみんなそう。「なんかちょっと心配し過ぎだから、いい加減にしろよ」と、そういう事です。

「被爆二世については原爆放射線に起因する健康被害は発生していないというのが現在の学問的事実である」。ここから始まっています。国のやること、国に準じた施設がやることはみんなここから発生している。多少の先行実験はあるけれどもここから始まっています。ですから、「今回の被爆二世健診結果はあらためてこの事実を肯定したものである」てされている。
下手なことをやると、こういうふうにされるのですよね。ちゃんとこれを吟味すれば、「そうじゃない」という反論ができると思うけれど、吟味しにくいようにやってくるので、こういうのはダメ。こういう事に協力してはダメだと思う。




◯2007年「被爆二世健康影響調査報告」も結論ありき、今後のゲノム解析なども同じだ

これが「被爆二世健康影響調査報告」。


これは平成19年、だから2007年とかかな、「被爆二世健康影響調査 科学・倫理合同委員会」というのがやっています。

これは放影研(注:放射線影響研究所)、まあABCC(注:原爆傷害調査委員会)ですよね。それが行った調査なのです。



これが「健康影響」なんていうけど、「健康影響調査は成人期に発症する多因子疾患、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症」、だから今で言う生活習慣病、昔で言うと成人病ですね。成人病のほうが本当のことを表していると僕は思いますけれども。
「(生活習慣病)の有病率と、放射線被曝との関連性」の有無を調べるとなっている。でも親の放射線被曝なんて本当に正確なことなんて分かりゃしないじゃないですか。それでそれを「関係があるかどうか調べるために検査しました」となっていて、「関係がない」という結論に持っていかれています。



国は被爆者、それから被爆二世・三世、『新ヒバクシャ』もそうだと思うけれど、健康に被害が出ているかどうかを見る時に、「白血病がどうなのか」「ガンがどうなのか」、こうやってみるわけですね。被爆者の白血病とガンが増えたのは認めているけど、二世のはたぶん認めていない。
「流早産」がどうなのか、それから、「出生時の異常・奇形」がどうなのか。これは被爆者の女性が被爆者だった時には、頻度が上がっているという事は認めているけれど、男性の時は認めていないと思います。
それで今回、「成人病」はないという結論にした。今後、「遺伝的影響」、これは「遺伝子」とか「ゲノム」が調べられるようになってきていますから、多分この辺を中心に遺伝的影響が「遺伝子を調べたら大丈夫、ゲノムを調べたら大丈夫、だから大丈夫」、こう持ってくると思う。これは予告です。僕の予告。こういうのはとても危ない。この話には乗ってはいけないです。

これは最近の「黒い雨訴訟」の時に一緒に発表されたのかな。放影研が行うそうです。もうこの時点で、「ウッ」と思わないといけない。「被爆2世ゲノム解析について説明会が行われました」というニュースですね。




多分今年度2024年度から7年間かけて行うそうです。すでに被爆二世、ここにいるみなさんではない被爆二世でしょうけれど、お小水とか血液を採ってあります。それから被爆者のお小水とか血液も採ってあります。それで、「こういうことをやっていいという許可を得てある」と言ってます。本当かどうか知らないけれども。

それでそのゲノムをみる。ゲノムというのは、遺伝子というものがあるでしょう。細胞の中の核に。そのDNAの配列のことですよね。それを見て「異常がありませんよ」ということを言うんです、これから。もう分かっている、結論が。そういう結論のためにやっている。それで先行調査があります。チェルノブイリでもゲノムはあまり動いてない。実は。それから被爆二世でも動いていない。これは何百例という先行調査が行われている。だから勝ち目のあるところで向こうは説得に出ている。

僕の言うキーワードをご紹介します。一番目は「エピジェネティクス」。




聞いたことありますか?「エピゲノム」とか。ゲノムはDNA配列とか、遺伝子などのもとになるものだけれども、「エピ」と言うのは「その上」とか「表面」とか「外」という意味です。「ゲノム以外のところでいろいろな遺伝がコントロールされているよ」という考え、勉強の仕方を「エピジェネティクス」と言うのです。

色々な「遺伝性疾患」というのが知られていますよね、昔から。被爆(被曝)の影響と言うのも研究されてきているけれども、どうもゲノムに異常があることというのは非常に少なくて、だから「DNAではなくて、それ以外のエピゲノムの異常の方がずっと多いよ」というのが、この20年ぐらいの学問の主流だと思います。
1990年代の一番終わりから21世紀の初め、このへんからはもうエピゲノムがどうなっているか、エピジェネティクスの研究が、一番進んだところでやられていることかな。
みなさん、これを知らないと「ゲノム大丈夫でしたよ」と言われると、「え?じゃあどういうこと?」とこれで終わってしまうわけだけれども。「エピジェネティクスについて何も考察がないの?」と、そこに持っていかないといけないと思う。

ちょっと話が飛んでしまうのですけど、「福島県民健康管理調査」というのが福島県で311の後に行われています。

これも向こうには前提がありまして、「福島県民の被曝というのは実は大した事はない」という結論が前もって決まっているのです。これは、本当かどうかは分からないような、いろいろなところの測定値をもとに、いろいろな複雑な、変な計算をして、「大して被曝していないよ」と言うところから調査が始まっています。


もうこんな結論じみた事を、10年ちょっとで言い始めているのだけれども、このスライドは福島県のホームページからとってきたものです。言いたいところを、黒くしてきましたけど「避難等の震災関連要因が生活習慣病等のリスクを高めている」とある。さっき国がその「成人病とか生活習慣病、こういうところでも遺伝的な影響を見るよ」と言っていたでしょう。これに関しては、「生活習慣病は避難とか移住なんかするから増えているのだ」ということです「避難・移住のストレス、そういうことがみなさんの不安の原因だよ」と行政は言っています。

ですから、今後行政がやっていくのは精神的健康へのケア。だから、みなさんの受けた被害を認めてどう補償するかとか、治療法を考えるとかではない。とにかく「ちょっと気にしすぎなんだよ、君たちは」というね、そういうところに持ってくのが向こうのやり方です。

大体見てもらったら分かるように、「うまく言いくるめる天才」みたいな感じだと思った方がいい。相手を見てものを考えないといけないので、そういうところを注意してもらいたいとそう思います。(37分18秒まで) 続く

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