守田です。(20141226 00:30)
「明日に向けて(1001)被曝防護徹底化の声をいかに広げるのか」の続きです。
僕は大新聞に社会のオピニオンが牛耳られていたり、一部の政治家や官僚に社会的権限が過度にたくされている今の日本のあり方を崩すことがとても大事だと思っています。その点では「崩した」というわけではないけれど、ここから逸脱している人々、新聞を読まず、選挙に行かない人も「そんなに悪くはないのでは」とも思うのです。
少なくとも政権べったりの読売新聞に書かれていることを真に受けて選挙に行っている人よりも、大新聞に胡散臭さを感じて読まなくなり、なおかつ政治に胡散臭さを感じて、投票にも行かない人に僕はより親近感を抱きもするのですがいかがでしょうか?
さらに朝日新聞について言えば、確かに集団的自衛権などには一生懸命に反対しているし、うなづける主張もそれなりにありますが、しかしこと放射線防護になると僕には読売新聞と朝日新聞の間にそれほどの違いを感じられません。
なぜか。ともに国際放射線防護委員会(ICRP)の体系のもとにはまりきった報道を行っているからです。そうなると1400万+1200万、実に毎日2600万ものICRPよりの見解がこの国にはまかれ続けているのです。
しかし凄いものでそれでもこの洗脳の渦から飛び出している人たちがいる。その最先端に立っているのが僕は危険な放射能汚染地帯から飛び出して、全国各地で避難生活を送っている人々や、汚染地で必死になって防護の生活を送っている人々だと思います。
その中には小さい子どもを抱えたお母さんたちが多いですが、それ以外に性別も年齢層も多様な方たちがいる。「母子」にはくくれない膨大な数の人々が、政府と大新聞の圧倒的な力の安全宣言に抗して、放射線から命を守るために奮戦しています。
凄いことだと思います。紙の爆弾数千万枚と毎日対峙し続けているのです。放射能を気にしすぎだと言う強烈な声、圧力、「放射能が危ないなどというな」という息ができなくなるような圧力に、今、この方たちは抗い続けているからです。
そして肝心なのは一度そうした立場に立つと、新聞の読み方が変わってくることです。それまで自分が無批判的に読んでいたこと、その意味では洗脳されていたことが見えてきます。覚醒するのです。
また洗脳から覚めてみると「偉い」と思っていた政治家が実につまらない人物ばかりであること、「知識が凄い」と思っていた科学者が実は初歩的な嘘ばかりついて、政府や大企業にすり寄っている人がほとんどであることも見えてきます。
いや日本の科学者の大半はきわめて真面目で誠実であり、実直な人が多いのですが、狭く設定された自分の専門領域への責任感で手いっぱいで、その一つ上のステージでの判断を何かに委ねてしまっている場合が多いのです。
それは自らの所属する職場や研究機関であったり、上司であったり、あるいはそれこそ大新聞であったりすると思うのですが、そのため専門外になるとその知性がたちまち発揮されなくなってしまいます。
つまり圧倒的多数の科学者たちの誠実さで私たちの暮らしの利便性や安全が担われているものの、ごくわずかな政治化した科学者たち、つまり政府や企業の利益によって動かされている科学界の重鎮たちに対して、科学者一般があまりにも弱いことも見えてきてしまいます。
僕は今、こうした覚醒の戦端にいる人々の中にこそ、新たな社会を作り出す可能性が宿りつつあると思います。その意味で日本の変革の最先端に、放射線防護で懸命に走っている多くの人々がいると僕は確信しています。
だからこうした覚醒をいかに育てるのか、あるいはいかにして、自らともにさらに覚醒していくのかがもっとも大事なことに思えます。そしてそのためには洗脳型ではない情報の発信の仕方、結論だけでなくものの考え方を提起する情報の出し方が強く問われていると思います。
情報を受け取った相手が同時に考え方を共有し、それを他に適用したり、改編したり、それでこちらにもフィードバックできるようなあり方です。これを僕なりに読者との弁証的な対話と考えています。
こうした覚醒しつつある人々に徹底してフォーカスするなかから世直しを志している人は他にもたくさんいます。その一人が映画監督の鎌仲ひとみさんだと僕は思っています。
彼女はまさに放射能と闘う女性たちにフォーカスして映画を撮り続け、『小さき声のカノン』を完成させました。そこに込められているのはどれもこれも大新聞に載っていない事実を発信している人々の姿です。しかも戸惑い、よろめきながらです。
鎌仲さん自身はこの映画を通じて、汚染地にいる子どもたちにとって保養に出ることがどれほど大事なのかを語っており、直接には保養をもっと広げようと意図しているのだと思いますが、そのこと自身が僕は今の日本のオピニオンのコントロール状況を変える大きなインパクトをもっていると思います。
端的に僕もそうした行為に学び、現に覚醒しつつある人、その意識相を紹介しつつ、一方でICRP批判をロジカルに進めながら、日本社会の同調的圧力を打ち破り、それぞれがもっと自由に発想していけるあり方を切り開いていきたいです。
すでに1000回に及ぶ記事の中でもたくさんの方を取材し、紹介してきてもいるので、それをもっと見えやすいように配置していくことも試みます。
そのことでもっとこの国の中で着実に進みつつある変革の機運をみなさんに紹介し、シェアしていきたいと思うのです。
僕はその活動を通じて、民衆の主体性の強化、能動性の開花をみなさんと一緒に導き出したいと思っています。
それがPower to the people=「権力を民衆へ!」の中身です。
誰かに任せるのではなく自らが民主主義を担って活発に動いていくこと、そうした人々に担われたラディカルなデモクラシーを強めるのが僕の役割です。
そのために僕は「明日に向けて」には課金せずにフリーアクセスを守りたいと思っています。
ネットを検索していて常々感じてきたのですが、大新聞のサイトで最初に課金したのは朝日新聞でした。しかしそれで朝日の読者以外には非常に読みにくくなってしまいました。プワと言われる若者たちなど真っ先に読めなくなった。
これに対してさまざまな検索エンジンとくっついて、無料でヒットしやすく記事を並べてきたのが産経新聞であったように思えます。この点で朝日新聞は失敗もしてきたのではないでしょうか。
さすがにそのことに気が付いたのか、朝日も途中から日に3本まで記事を無料で読めるように改めましたが、しかしこの朝日が課金をして読みにくくなる時期に、「慰安婦問題」をめぐる歴史を無視したひどい言質が強まって言ったようにも思えます。
それらを観ていると僕はブログを無料で開放し続けていくことがとても大事だと感じるのです。誰にも読めるようにしておきたい。とくに貧しい人にこそ読めるようにしておきたいと思います。
これは講演も同じことで、僕は原則的に謝礼を2万円以上でとお願いして講演を受けることにしています。もっと高く設定した方が良いと言ってくださる方もいるのですが、実際には2万円以上が無理な場合にも応じていて、金銭を理由に断ったことは一度もありません。
人々の命がかかっている状態、本当に苦しい状態で人々が放射線のことを知りたいときに、やはり情報は多くの人に払えるぎりぎりのコストで出すのがのぞましい。
もちろんこうしたことは僕一人の問題ではなく、すべてのジャーナリストの生活にも関わることであり、とにかく安く設定すれば良いと言う問題でもないことは承知しています。
しかし僕自身は少なくとも今しばらくはブログを無料開放しておきたいし、課金しないでやっていこうと思います。講演もできるだけ多くの方にとって呼びやすい講師でいようと思います。
その代わりと言っては何ですがこうした趣旨に賛同いただける方にカンパをお願いし、その力でブログや講演での発信を維持していきたいと思うのです。
かつて医師は貧しい人々からはほとんど医療費をとらなかったとか。その代りを一部の篤志家の方が果たしていたと聞きます。それと同じと言っては何ですがいつでも一番困った人が、のぞめば記事等が手に入る状態を一緒に作り出していただければと思います。
またそのためにお願いしたいのは、カンパだけではなく、ぜひ「明日に向けて」をより多くの方にご紹介いただきたいということです。
記事の全文および部分転載はどうかご自由にどんどんしていただけるとありがたいです。またFacebookでもTwitterでも記事を紹介しているので、シェアしていただいたりリツイートしていただけるとありがたいです。
また「明日に向けて」は無料MLでもお送りしているのでより確実に記事を手に入れたい方はブログよりメールアドレスをメッセージでお送りください。すぐに次号よりお届けします。
以上、私たちは、どういう形であれ一部の人々が決めたことがすぐに大多数の真理であるかのような言説のあり方が通用している今の社会を変える必要があり、僕はそのために奮闘していきたいです。
この仕組みこそが、放射線被曝の過小評価を許している元凶でもあるからであるとともに、こうした仕組みをひっくり返してこそ、本当に豊かな民主主義の展望が開けると思うからです。
そのための知を鍛える拠点の一つとしてともに「明日に向けて」を育てていただければと思います。どうかよろしくお願いします。
なお連載1000回を終えての考察はもう少し続けます。
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