守田です。(20150927 18:00)
兵庫県篠山市が安定ヨウ素剤配布の具体的スケジュールを決めました。来年1~3月に18回配ります。
ようやくここまで来たと言う感じです。
配布に向けて24日に、兵庫医科大学の上紺屋憲彦教授が、篠山市の医師、薬剤師に安定ヨウ素剤の服用方法や効能などの説明を行いました。
上紺屋教授はこれまでも看護師や保健師、市職員などへの講演を行っています。
篠山市もまた上紺屋教授の講演をDVD化し、全自治会での説明会も行ってきました。市職員400人があらかじめ学習し、説明者となって自治会を周りました。
ここまで準備を重ねての配布になります。
安定ヨウ素剤は、原発や核施設の事故の際に、飛来する放射性ヨウ素から甲状腺を守るための薬です。
安価ですが、甲状腺を守るのに大きな力を発します。なおかつ副作用の可能性もきわめて小さいものです。
原発は再稼働していなくても燃料プールがある限り大変危険です。福島原発事故の際、4号機燃料プールが大変な危機に見舞われました。
現在、全国の原発の燃料プールにはウラン換算でなんと17281トンもの核燃料が溜まっています。
燃料プールの容量総計は23801トンですから、なんと約73%もが埋まってしまっています。
といってもこの73%というのも「ニセ」の数字です。なぜならもともとの設計のままなら燃料プールはすでに完全に埋まってしまっていたからです。
燃料プールが満杯になると、核燃料の持って行き場がないので原発は運転できなくなる。だから本来、福島原発事故前に設計時点の想定に従うならば運転してはならない状態になっていたのです。
電力会社はこれに対して、「リラッキング」というとんでもないことを行いました。プールに沈めている使用済み核燃料集合体の間隔を詰めて、強引に容量を増やしてしまったのです。
核分裂性物質は、ある一定量が集まると勝手に核分裂を始めてしまう性質を持っています。だから扱いがやっかいで恐ろしいのです。
そのため「これだけの間隔がないと危険だ」と考えられて燃料プールへの収納の際の間隔が決められていたのですが、リラッキングは稼動を続けるために安全マージンを犠牲にして行ったものです。
ちなみにリラッキングを行って、管理容量を強引に増やしてもなお、93%まで埋まってしまっていたのが、福島第一原発だったのでした。
これらから大地震などに襲われた場合、燃料プールで使用済み核燃料が倒れるなどして集まってしまい、勝手に核分裂が始まってしまう可能性があります。
いやもともとの設計でも危険なのですが、リラッキングをしているためにより危険度が高いのです。核分裂が始まれば、新たに放射性ヨウ素が発生してしまい、原発から飛来してくる可能性があります。
この点から再稼働を考えなくても、安定ヨウ素剤は持っていた方が良いのです。多くの方が国内を旅行や仕事などで頻繁に移動していることを考えると、原発からの距離に関わらず所有した方が良いです。
ましてやあらゆる面にわたって無責任性を強めている政府が、川内原発の再稼働を強行してしまいました。内閣も原子力規制庁も九州電力もどこも安全性に責任をとっていないにもかかわらずにです。
これまで述べてきたように、4年以上停まっていた川内原発はそれだけでも危険です。ましてや加圧水型原発は蒸気発生器などで事故を繰り返してきている型の原発です。この点からも事故に備えた方が良い。
さらに今、世界では400基以上の原発がまだ稼動しています。そのどこで事故が起こっても不思議ではありません。
中国や台湾、韓国など、日本の近くの原発の事故で放射性ヨウ素が飛来する可能性もあるし、海外に滞在中に事故に遭遇する可能性もあります。
その点からも、私たちは世界が核の脅威から完全に脱することができるまで、安定ヨウ素剤を携帯する必要があるのです。
この点からぜひともみなさんにお願いしたいのは、篠山での取り組みを全国に拡大して欲しいということです。
篠山市は一番近い高浜原発から45キロから70キロに位置している市です。それでも兵庫県が行ったシミュレーションで、IAEA(国際原子力機関)が定めている安定ヨウ素剤服用基準の2倍の放射性ヨウ素が飛来しうるという結果が出ています。
これを大きな参考にして篠山市はただちに備蓄を行い、今、事前配布を行おうとしているのですが、同じくように全国で備蓄、事前配布を進めて欲しいです。篠山市の例を出して、お住いの地域の行政に強く要請してください!
これはけして再稼働を容認する行為ではありません。
むしろ安定ヨウ素剤を持ち、服用方法や効能をしっかりと知ることは、原発の危険性、放射能の危険性と身の守り方をきちんと把握していくことにつながります。
だからこそ国はこれまで避難計画やヨウ素剤の広域への配布を行ってこなかったのです。そしてそのために福島原発事故でも避けられるべき被曝が避けられなかったのです。いや避けられる被曝が避けられていない現実は今も続いています。
こうした状況を打ち破り、多くの人々が放射能の危険性と避け方を学ぶ一助としても、安定ヨウ素剤を誰もが持つことが大切です。
行政への交渉に当たっては、僕も参加する兵庫県篠山市原子力災害対策検討委員会が篠山市長と市民に提出した以下の提言を参考にしてください。
原子力災害対策計画にむけての提言 http://www.city.sasayama.hyogo.jp/pc/group/bousai/assets/2015/06/teigensyo.pdf
なお次回、この中かから安定ヨウ素剤について触れた章の全文をご紹介します。
この国はまったくといっていいほど住民の命を守ろうとしていません。政府はアメリカのしもべのようになって自衛隊をアメリカ軍のために差し出そうとしてさえいます。
このような状況だからこそ、自分たちで命を守る力をつけていく必要があります。市民の側から、草の根から「原発からの命の守り方」を学び、身に着け、広めていきましょう。
以下、神戸新聞の報道を貼り付けておきます。参考にして下さい。
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篠山市、ヨウ素剤配布で方針 医療関係者向けに研修会開催
神戸新聞 2015/9/26 05:30
http://www.kobe-np.co.jp/news/tanba/201509/0008429473.shtml
原発事故に備えて兵庫県篠山市が準備を進める安定ヨウ素剤の事前配布について、市は来年1~3月に計18回配る方針を固めた。
24日夕には市内の医師らを対象に研修会があり、兵庫医科大学の上紺屋(かみこんや)憲彦教授(放射線治療)が薬の服用方法や効能などについて、医師や薬剤師約30人に話した。(安福直剛)
市は年明け後に住民説明会を行い、会場で希望者に安定ヨウ素剤を配布する。まず18歳以下の子どもがいる世帯を対象に実施(5会場=休日に1日2回)。
次に全世帯向けに配布する予定(8会場=夜間)。日程は重ならないよう調整する。配布するヨウ素剤は約1万人分を想定している。
安定ヨウ素剤の事前配布について原子力規制庁は、医師による住民説明会が必要と定めている。市は、説明会とは別に昨年から全自治会で学習会を開いており、市医師会にも協力を求めてきた。
研修会で上紺屋教授は、放射性ヨウ素を体内に取り込んだ場合、甲状腺がんや成長障害などの甲状腺機能異常が起こり得ると説明。ヨウ素剤がこれらを防ぐことや、服薬の時期、量、副作用などについても話した。
河合岳雄市医師会長は「だいぶ理解が深まったのではないか。配布に向け、市民の疑問に答えられるよう、より具体的な研修も必要になるだろう」と話した。
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