守田です(20170706 16:00)
これらは「洪水、嵐、高潮、地震、津波」のリスクから算出したもので、原発のリスクは入っていません。スイスリーは世界の人々の「ワースト10の都市には移住すべきではない」と勧告すらしています。
これには今後30年に7割の確率で、50年だったら9割の確率で来ると言われる南海トラフ地震のリスクなども入っています。
またこのことを踏まえて元東京都職員の土木専門家、土屋信行さんが次のように述べています。
「日本を攻撃するのに、軍隊も核兵器も必要ない。無人機が一機、大潮の満潮時にゼロメートル地帯の堤防を一カ所破壊すれば、日本は機能を失う」(東京新聞2014年9月7日)
そもそも日本の近代の河川対策は洪水封じ込め型で、とにかく堤防をかさ上げすることの繰り返してきたので、実は利根川や淀川が有史以来、最大の水量をたたえてしまっているのです。だからこそ満潮時に堤防が大決壊すれば大都市が機能を失ってしまうのです。
にも関わらず政府は積極的な対応に踏み込んではいないし、野党の側からもこれを積極的に選挙の争点にしようとしているところはありません。国をあげて災害に甘い状態が現出してしまっています。端的に言って、国防がないがしろにされています。
私たちはだからこそここ数年、豪雨が降るたびに犠牲者は多くの被害を出していると捉えるべきではないでしょうか。自然の猛威ばかりでなく、事前の対策が悪いから被害を抑えきれていないのではないでしょうか。
では何をどうすべきなのか。僕は対策の柱として自衛隊の災害救助隊への改編を急ぐべきだと思います。
理由は簡単。実際に自衛隊は災害救助ばかりを担っているからです。しかし自衛隊のままで今後の災害の拡大に備えるのにはあまりに不十分です。
そもそも自衛隊は戦闘組織です。「敵」を殺すための組織であって、命を助けるために特化していません。その象徴が迷彩服です。敵に見えないことが重要なのです。しかし救助隊は要救助者に見えなくてはいけないのです。ここからしてまったく違う。
災害現場の映像をご覧になってください。消防関係の救助隊はほとんどがオレンジ色の服を着ています。目立ちやすいようにです。ところが自衛隊は迷彩服で、山岳や森林をバックにすると見事に見えなくなってしまう。
この格好で災害救助を続けるのはばかばかしい。効率が悪すぎるのです。誰がこのことを一番感じているかというと他ならぬ自衛官のみなさんだと思います。災害の現場で直感するはずです。これまでだってそれが生死を分けていることもあるはずです。
また戦車やジェット戦闘機があっても災害救助には何の役にもたちません。イージス艦があっても、台風一つ、撃ち落とせるわけでもないのです。
だとしたらこれらの予算を削り、その分、災害対策車両などを増やせばいいのです。その方が稼働率だって断然、あがるはずです。だって自然災害が次々と襲ってきているのですから。
さらに言えば日本の技術は優秀ですから、まだ世界に一台もないような新型の消防車や救急車を開発して積極的に使用すればいいのです。そうなれば世界に売って利益を得ることだってできます。世界が災害に喘いでいるからです。
しかも軍事技術が敵に知られないために秘密主義となり、その点からも自由な売買などできないことに対して、災害対策車両は、人の命を救うスキルの塊なのですからどんどん公開していけばいい。それで世界でおおらかに開発競争だってしたら良いのです。
いや何も車両を売るだけでなく、再編された災害救助隊をこそ、必要に応じて世界に派遣したら良いのです。そうすれば「あんなに良い国を襲うわけにはいかないだろう」と思ってもらえます。それこそが安全保障の要です。
いわゆる「テロ」と一方的に言われている武装襲撃事件などが起こる可能性だって大きく抑えられるでしょう。
お隣の国、中国の各地への進出に神経を尖らせている人々がいますが、そうであるならば中国で災害が起こった時に大々的に助けに行ってあげれば良いではないですか。それでこそ中国の姿勢に影響を与えることだってできます。徳を持ってです。
いやそんなことをしなくても、いまだって中国の庶民は私たち日本に住まうものたちのことをとてもよく思ってくれていることをぜひ知っていただきたいです。「爆買い」現象などはその象徴です。
あれは「日本の人々は誠実で真面目だから、けして消費者を裏切るようなものは作らない」というとてもおおきな信頼(過度の美化や美しき誤解も含んでいる)のなせる技です。
自衛隊を災害救助隊にどんどん変えて、災害対策を抜本的に強化すれば、自然災害の多発に対して私たちが命を守れる可能性をどんどんあげることができるし、さらにそれを必要に応じて派遣することで多くの国にこの国を「徳」のある国と受け止めてもらえる。
いやそれどころか、世界史の中で初めて他国の災害救助も考えた部隊を創出した国として歴史に残るかもしれない。未来世代にそんな名誉を贈りたいものです。
リアリティから考えても、理想から考えても、この道を歩むことが僕は最も合理的であり、妥当だと思います。
もちろんすぐにはそうならないので、民衆自身がもっと能動的に災害対策に取り組むこと、国や行政に対応をお任せする姿勢をあらため、あらゆる災害を想定して、対策をほどこし、避難訓練などを行っていきましょう。
そのためのノウハウの基軸にあることこそ、「正常性バイアス」「集団同調性バイアス」「パニック過大評価バイアス」などの災害を前にした心理的罠にはまらない心構えを作ることであり、そのためにも事前のシミュレーションを重ねるべきことを訴え続けていますが、同時にぜひみなさんに「自衛隊を災害救助隊に変えよう」という声をあげていただきたいです。繰り返しますがこれが最も合理性のある道だからです。
そうすると「それは理想主義だ。現実を見ていない」などという声が必ず出てくると思いますが、実はこの声を発している最大の母体こそ軍需産業だということを知っておきましょう。
武器を作り、売りさばき、定期的に使ってもらうことで生業を立てているこの産業界こそが、常に「武器をなくせというのは理想だ」「空論だ」「非現実的なロマン話だ」などと言い続けているのです。それやそうでしょう。そうでないと滅亡するのですから。
しかし反対に武器をもって平和が作れているのでしょうか?作れるはずなどない。そうしたら武器がいらなくなってしまい、弾があまって仕方がなくなってしまうからです。軍需産業は定期的に戦争がないと困るのです。
だから戦争は、武器製造者こそが武器とともに作り出しているものでもあることを私たちはしっかりと認識しておく必要があります。
そもそも、元東京との職員の方が言うように、もはやこの国を軍事で守ろうとするのも無理です。海岸線にたくさんの原発を作ってしまったし、石油コンビナートなどもたくさんあるからです。
しかもこの国の政府は実は心の底から北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を信頼していたからこそ、福井県にあんなにたくさん原発を建ててしまったのだとしか思えません。ある意味でかの国に甘えきっているのがこの国の歴代の指導者たちなのです。
もちろん僕自身もかの国が原発を襲うことなど考えているとはまったく思いません。その意味でこの国の歴代の指導者たちのこの信頼が間違っていたとも思えません。
ただだったらもはや軍事力ではこの国を守れないことのリアリティにたつべきなのです。信頼と徳をもってしかこの国は守れない。だからこそそれを大きく促進させるために、自衛隊の災害救助隊への改編を急げば良いのです。
もちろん隊員たちは人殺しの訓練を受けて来ているわけですから、そのマインドコントロールを解く必要があるでしょう。
しかしアメリカ軍と比較するならば、いまの自衛隊は教官も含めて、人を殺したことのない人々で運営されている組織です。世界でもっとも軍隊から遠い軍隊です。なので軍隊から災害救助隊への転換の道も他国に比べて大きく広がっていると思います。
だからこそ、自然災害の猛威を前に、私たちはこの国に、災害対策をもっと充実させることを訴えて行かなくてはならないし、そのおおきな柱として災害救助隊の創出を訴えて行きましょう。
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これらの点も含めて「原発からの命の守り方」について7日午後7時から舞鶴市で、8日午後1時半から宮津市でお話しします。舞鶴ではとくにヨウ素剤について詳しくお話しします。
ぜひお越し下さい。
「舞鶴でも出来る☆安定ヨウ素剤全戸配布!
~篠山市なの先例に学ぶ講演会~」
7月7日 (金) 午後7時~
舞鶴市総合文化会館 小ホール
入場無料
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「原発からの命の守り方」
7月8日(土)午後1時半〜
みやず歴史の館 大会議室
主催 原発ゼロをめざす宮津・与謝ネットワーク
本記事(1396)に誤記入と思われる部分がありましたので、コメントを投稿させていただきました。
・「かさ上げすることの」
→「かさ上げすることを」
・「それやそうでしょう」
→「それはそうでしょう」「そりゃそうでしょう」
・「元東京との」
→「元東京都の」