昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(四十九)の五と六

2012-11-03 15:47:41 | 小説
(五)

「あぁ、そんなところだ。」

「分かりました。
で、いつにされますか? えぇっと、こりゃいい!

明日が大安ですよ。
それじゃ、明日にでも出かけますわ。」

「いや、お前。
それはちょっと急過ぎないか?」

「何を言ってるんです。
こういうことは早いほうが良いんです。
奥さんも了解済みなんでしょう?」

「いや、それはまだ…。」

「事後報告でも良いじゃないですか。
いや、そのほうが良いかもしれません。
あのご気性だ、前もってだと何かと…」

口を濁す五平だが、その言わんとすることは武蔵も分かっている。
天邪鬼的な性格を持つ小夜子のことだ、反発しかねない。

更には、失意から立ち直りかけの小夜子でもある。
付けこむようなことになりそうで、ためらいの気持ちが出た。

こと商売となると、相手の弱点をギリギリと攻め立てる武蔵。
外堀を埋めて追い込みをかけたりもする武蔵。

相手の虚を突き一気に落とす武蔵。
しかし小夜子に対しては、それができない。




(六)

「まあとに角、任せてください。
うまく話しを付けてきますよ。」

得意げに言う五平。
五平には指示を与えることもなく任せてしまう武蔵だが、今回は違った。

「いや、俺の言う通りにしてくれ。
仮にも、義父になる方だ。

それなりの礼を持って接したい。
使者としての五平だからな。

本人には、俺がキチンと話す。
五平には、他のことを頼む。」

「社長、社長!」
興奮する事務員が飛び込んできた。

「何だ、どうした。
落ち着け、少しは。」

「はい、すみません。
でも、でも…」

「タケゾー、居る?」
思いもかけず、小夜子が現れた。

「奥さん…」
「小夜子、お前…」

大の男二人大きく口を開けて、小夜子を出迎えた。


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