昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~ふたまわり・第一部~(九)の三

2011-06-07 21:03:11 | 小説
「生バンド演奏を聞かせてくれる場所、
ありませんか?」
「バンド演奏、
ですか。
うーん・・、
それはねぇ・・。
劇場だったらねえ・・
うーん・・。
電話ででも、
直接聞いてみてください。」
「そうですか、
そうですよね。
ありがとうございました、
調べてみます。」
すぐには小夜子の元に戻らず、
公衆電話に飛びついた。
「もしもし。
そちらで、
生バンド演奏を聞かせていただけますか?」
「こちらは、
映画の上映館ですので。」
「バンド演奏はやってませんねえ。
キャバレーぐらいじゃ、
ないですか。
でも、夜ですよ、夜。」

電話帳に掲載されている劇場に、
片っ端から問い合わせてみたが、
だめだった。
“困った、
どうしょうか。
夜では、だめだし。”
思案顔の正三の所に、
痺れを切らせた小夜子が寄ってきた。
「ごめんなさい、
小夜子さん。
キャバレーとか言う所だけのようです。
然もそこは、
夜にならないと営業しないようです。」
「そうなの、
やっぱり。」
「やっぱり、って。
小夜子さん、
キャバレーをご存知なんですか?」
「いいわ。
それじゃ、
百貨店に行きましょ。」
小夜子は正三の質問には答えず、
さっさと改札口へ向かった。


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