昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(七十六) 疑念が確信に変わっていく

2014-01-05 13:18:59 | 小説
(九)

「でもお元気になられて良かったわ。
こうして自宅へ戻れるなんて、素敵! 

でも、ムリはだめよ。

病院では静かにしてらっしゃる? 
体調が良いからって、動き回っちゃだめよ」

にこやかに微笑みながらさする小夜子だが、次第に疑念が確信に変わっていく。

“お母さんと一緒だ。

いや、いやよ! 勝子さん、死んじゃいや! 
せっかく仲良くなれたのに、またあたしをひとりぽっちにしないで。

アーシア、アーシア、お願い。
勝子さんを助けて。お母さん、お母さんも助けて。

二人とも、あたしをひとりぽっちにしてしまったんだから、今度はしないで。
大丈夫、大丈夫よ。

武蔵に言って、もっと高いお薬を使ってもらうから。
日本で一番偉いお医者様に診ていただくから”

「どうしたの? 小夜子さん」

勝子の足に生暖かいものが落ちてきた。
それが小夜子の涙であることは、熱に浮かされ始めた勝子にもすぐに分かった。

「えっ? あ、あぁ、嬉し涙。嬉しくて、泣けてきちゃった」


最新の画像もっと見る

コメントを投稿