昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

愛・地獄変 [父娘の哀情物語り] (二十七)

2010-12-04 14:00:50 | 小説
その昔、
まだ赤線というものが
ありました頃のことでございます。
亭主を寝取られたと、
娼婦のもとに
出刃包丁を手に
乗り込んできた、
半狂乱の女が居たと
聞き及んだことがございます。
その女の形相が、
妻を見た時
はっきりと
思い浮かべられましたのでございます。

もっとも、
無理もございません。
まだ三十路も半ばの
女盛りでございます。
夫婦の契りを断って、
一年近くの月日が
経っております。
娘の為に
よりを戻そうと
してはみるのですが、
やはり口論となってしまいます。

買い物だと
わかっております折りに、
帰りの時間が
いつもより遅い時がございました。
そんな時
“若いツバメ”を作ったのでは、
と疑ったりするのでございます。
又、
艶っぽい仕草を
垣間見せることがございますと、
“やはり居たか”と、
思ってしまうのでございます。


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