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昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

にあんちゃん ~通夜の席でのことだ~  (九)

2016-02-02 08:55:33 | 小説
 母の道子に、どこかしら余所余所しさを感じる長男だ。

「お母さん、お母さん」とまとわりつく次男に対し「じゃまでしょ」と邪険な態度をとるが、顔は笑っている。
しかし長男がまとわりつこうとすると、何かしらの用事を口にしてその場を離れてしまう。
一度や二度なら偶然だと片付けられるけれども、三度を超したところで明らかに避けられていると感じた。

 といってないがしろにされているわけではない。
全てにおいて、まず長男からと言うことになる。
食事お風呂と毎日のことで、第一が父親で次が長男だ。
たとえ席に着くのが遅れたとしても、次男とほのかが席に着いていても、長男の膳を二番に用意している。

 買い物にしても、長男が一番となる。
たまに次男が駄々をこねても「お下がりでいいの」と相手にされない。
外出となると、長男の希望が最優先となる。
どれほどに次男が希望を言っても、聞き入れては貰えない。
他所では「お兄ちゃんでしょ、我慢しなさい」なのにと、次男には不満だった。

 しかし甘えることのできない長男には「これだけのことをしてもらっているのだから幸せね」と、周囲に対して優等生であることを強いられた。常にプレッシャーの中に居させられた。

 高校時代に「進学に有利だぞ」という先輩たちの言葉を聞き、真偽の程も分からぬままに、高二の後期に生徒会長に立候補した。
通常は高三の就職組が立候補して信任投票の様相を呈するのだが、結果は大方の予想を裏切って長男が僅差で当選した。

 得意顔で孝男に報告をする長男だったが、孝男は「受験にプラスなら良いが、気を抜くんじゃないぞ」と素っ気ない。
次男は興味を示さず、ほのかは「すごいねえ」と感嘆の声を挙げはするが、すぐに忘れてしまう。
ひとり道子だけが長男を褒め称えた。
すぐに道孝とシゲ子にも伝えられたが「そうかい」のひと言が返ってくるだけだった。


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