昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

にあんちゃん ~通夜の席でのことだ~ (十)

2016-02-04 09:05:31 | 小説
 シゲ子の母校である女学園に入学したほのかは、よく聞かされていた校庭にそびえる桜の下に腰を下ろすことが多かった。
「良く来たね、ほのか」
 祖母の声が聞こえてくる気がした。

木の根っこに寄りかかりかかって、放課後の少しの時間を過ごす。
それなりにクラスメートと談笑はするが親友と呼べる者はできなかった。
クラス内に同じ中学出身者が居ないことも、ほのかには不運だった。

 部活動においても人気のない天文クラブに、名前だけで良いからとしつこく勧誘されての入部だった。
年に一度か二度、新入部員の勧誘時に、顔を出すだけの幽霊部員だった。
ほのかが三年生になったとき、三学年併せて七人という所帯で、一年生は一人だけだった。

 夏休みに学校の許可が下りて「ペルセウス座流星群を観る会」が催されることになり、真夜中の鑑賞会ということになった。
最低一人のゲストを参加させましょう、という檄が顧問から飛んだ。

次男に声をかけた。
当初は「女の学校だろうが」と嫌がる次男だったが、ほのかの熱意に負けて参加することになった。
孝男が「お父さんが行ってやろうか」と名乗りを上げだが、父親同伴なんてと、ほのかが拒絶した。

 予報では観測には十分の晴天で、午前三時頃がピークとなる予定だ。
当日は午後八時集合ということになり、まずは部室で流星群の予備知識としての説明会が始まった。
参加者は顧問一人と部員七名を含めた十五人となった。


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