(十二)
突然に下腹部に激しい痛みが走り、生暖かいものが内股に流れた。
慌てて産婆を呼んだが、その出血を見た途端に暗い顔を見せた。
そしてすぐに、産院に行くと言う。
「どうなの、どうなの。おたきさん、大丈夫よね? まだ産み月じゃないものね。
ちょっとした手違いよね? だってあたし、あたし、じっとしてたんだよ。
お医者さんの言いつけを守ってたんだから」
不安な思いが、次第に絶望感を伴い始める。
産婆はひと言も口を開こうとしない。いつも饒舌な産婆が、だ。
そして病院に向かう間中、ずっと梅子の手を握り締めてくれていた。
「先生、どうしてなの? 言い付けを守って、じっとしてたんだよ。
ほんとに大事にしてたんだから。なのに、なのに、なんで、どうして…。
ひどいよ、神さま。酷じゃないか、あんまりだよ。
欲しくないと思ってたあたしを、あたしを。
その気にさせといてさ、今さらなんだい! 気まぐれなのかい、神さまの。
それとも、あたしに罰を与えたのかい? なんだよ、なんだよ、どんなひどいことをしたと言うのさ。
ふん、そうだよね。神さまなんて信じちゃいないあたしがさ、神さまを恨むというのは筋違いかねえ。
恨むなら自分かい? 不摂生の限りを尽くしてきたあたしだ、赤ちゃん、良く頑張った方かもしれないねえ。ごめんよ、ごめんよ。こんな母親で、ほんとにごめんよ」
突然に下腹部に激しい痛みが走り、生暖かいものが内股に流れた。
慌てて産婆を呼んだが、その出血を見た途端に暗い顔を見せた。
そしてすぐに、産院に行くと言う。
「どうなの、どうなの。おたきさん、大丈夫よね? まだ産み月じゃないものね。
ちょっとした手違いよね? だってあたし、あたし、じっとしてたんだよ。
お医者さんの言いつけを守ってたんだから」
不安な思いが、次第に絶望感を伴い始める。
産婆はひと言も口を開こうとしない。いつも饒舌な産婆が、だ。
そして病院に向かう間中、ずっと梅子の手を握り締めてくれていた。
「先生、どうしてなの? 言い付けを守って、じっとしてたんだよ。
ほんとに大事にしてたんだから。なのに、なのに、なんで、どうして…。
ひどいよ、神さま。酷じゃないか、あんまりだよ。
欲しくないと思ってたあたしを、あたしを。
その気にさせといてさ、今さらなんだい! 気まぐれなのかい、神さまの。
それとも、あたしに罰を与えたのかい? なんだよ、なんだよ、どんなひどいことをしたと言うのさ。
ふん、そうだよね。神さまなんて信じちゃいないあたしがさ、神さまを恨むというのは筋違いかねえ。
恨むなら自分かい? 不摂生の限りを尽くしてきたあたしだ、赤ちゃん、良く頑張った方かもしれないねえ。ごめんよ、ごめんよ。こんな母親で、ほんとにごめんよ」
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