昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(九十一) 母親になる資格がないんだ

2014-07-11 09:25:39 | 小説
(十三)

打ちひしがれる梅子に、付き添ってきた産婆が優しく声をかけた。

「今回は残念だったけど、またということもある。
それに私生児で産まれた子供の行く末は、酷い言い方だけどひどいもんだよ。
案外、これで良かったのかもしれないよ。
今度は、きちんとしたお相手の子供を、ね。
お父さんになってくれるお人を、お選びね。
あんたの器量なら、きっと現れるだろうさ」

そんな産婆の気遣いも、梅子の耳には届かなかった。

“あたしには、母親になる資格がないんだ。
こんなうわばみ女には、子供なんて勿体ないんだよ。無理なんだよ”

「小夜子。あたしゃ、あんたの母親代わりだろ?」

「えぇ、もちろんです。
ほんとは梅子母さんって呼びたいんですけど、それじゃ梅子さんが嫌だろうって思って。
それで梅子姉さんって呼んでるんです。」

「いいよ、いいよ。梅子母さんでいいよ。
それでだ、母親として小夜子に言っておくことがある。
胎教って、知ってるかい? 
お腹の赤ちゃんというのはね、お母さんが考えることが分かるんだよ。
お母さんが感じることを、赤ちゃんも同じように感じ取るんだよ。
怒りの気持ちを持てば、赤ちゃんも怒りの気持ちを持つ。
悲しければ悲しむんだ。
だからね、心穏やかに居なくちゃいけない」


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