(一)
小夜子詣での隣で、同じようにいやそれ以上に、茂作詣でがあった。
武蔵が残した言葉は、小夜子の思う以上に大きかった。
「茂作さんに言ってくだされば結構です」
このひと言で、茂作の存在感がぐんと増した。
「どんなことでも、茂作さぁに言えばええ。
村長に頼むより何ぼか確かじゃて」
村の角々でこんな声が聞かれた。
床に就いている小夜子の耳に、秋の夜長の虫たちほどの声、声、声が聞こえてくる。
「娘の進学なんじゃけれど……」
「家の前の道が、雨が降るたんびにぬかるんで……」
「婆さまの家が傷んでしもうて…。と言うて借りるあてもないし……」
そして帰り際には必ず
「小夜子嬢さんに、ちょこっと挨拶を……」と、付け加えていく。
今ほど、武蔵の妻となった実感を感じることはない。
ひしひしと、感じさせられている。
武蔵の財力と権力に群がってくる村人たち。
それらが嘗ては茂作を小ばかにしていた者たちだ。
曰く。
「娘を売った男」
「娘を人身御供にした男」
やっかみの裏返しの言葉ではあったにせよ、唾棄すべき男と断じた村人たちだ。
小夜子詣での隣で、同じようにいやそれ以上に、茂作詣でがあった。
武蔵が残した言葉は、小夜子の思う以上に大きかった。
「茂作さんに言ってくだされば結構です」
このひと言で、茂作の存在感がぐんと増した。
「どんなことでも、茂作さぁに言えばええ。
村長に頼むより何ぼか確かじゃて」
村の角々でこんな声が聞かれた。
床に就いている小夜子の耳に、秋の夜長の虫たちほどの声、声、声が聞こえてくる。
「娘の進学なんじゃけれど……」
「家の前の道が、雨が降るたんびにぬかるんで……」
「婆さまの家が傷んでしもうて…。と言うて借りるあてもないし……」
そして帰り際には必ず
「小夜子嬢さんに、ちょこっと挨拶を……」と、付け加えていく。
今ほど、武蔵の妻となった実感を感じることはない。
ひしひしと、感じさせられている。
武蔵の財力と権力に群がってくる村人たち。
それらが嘗ては茂作を小ばかにしていた者たちだ。
曰く。
「娘を売った男」
「娘を人身御供にした男」
やっかみの裏返しの言葉ではあったにせよ、唾棄すべき男と断じた村人たちだ。
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