昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~ふたまわり・第一部~(五)の三

2011-04-23 13:02:34 | 小説
そんな折に、他の仲介人から声を掛けられた。
「ドン!と、行きましょう。
倍々で行けば良いんです。
多少の損は、目をつぶりましょう。
一回当てれば、大きいんだから。
私だってね、一緒に勝負するんですから。
勝ち負けは、時の運だ。
続けることが、大事なんです。」
それが、命取りだった。
確かに、倍々で相場を張り続けていれば、いつかは勝つかもしれない。
当たれば、取り戻せもする。
しかしそれとて、資金が続けば・・と言う前提での話だ。

とに角、湯水の如くに注ぎ込んでしまった。
もう、茂蔵の手に負えるような金額ではなかった。
毎日のように、
「カネハラエ」の、電報が届く。
それでも茂作翁は、小夜子の我侭は聞いた。
“なぁに。
いざとなれば、田畑を処分すれば良い。
いや、今度の勝負に勝てば、お釣りがくるというものだ。”
そんな思いが、茂作翁から離れない。


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