昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(八十一) 同性の目はきつい

2014-02-28 20:55:35 | 小説
(三)

同性の目はきつい。
すすけた娘が魔法にかかったように、輝くばかりの女性に変身したことに対し、激しい敵意を見せている。
自尊心の強い女たちの視線が、激しく勝子に突き刺さっている。

「小夜子さん。痛いのよ、視線が。皆さんの視線が、あたしに『場違いだ!』って言ってるの」

「大丈夫、勝子さん。殿方を見なさい。皆さんあなたに見とれてるわよ。
ほら、直視はしないけれども、チラリチラリと勝子さんを見ているじゃない。

女王様然としなさいって。
女たちの嫉妬の視線なんか無視して、跳ね返しなさい。大丈夫、自身を持って」

ついこの間までの小夜子が、今の勝子だった。
突如現れた他所者に対し、排除の姿勢を取る女性たち。

男たちが諸手を上げて歓迎の姿勢を見せると、それはなお激しくなった。
しかし女王様然と振舞い続けることで、次第にその矛は収められた。

“女の価値はね、男にどれだけ貢がせられるかよ!”

胸を張って店内を闊歩する小夜子に対し、まだ二十歳そこそこの小娘であるにも関わらず、もう誰も鼻を鳴らす者はいない。

「でもあたしは…。小夜子さんは立派な奥さまだけど、あたしは病持ちの貧乏人だから」


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