昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(八十一) 雲の上を歩く勝子

2014-02-27 20:12:21 | 小説
(二)

雲の上を歩く勝子がいた。
上気した顔は、自身に満ち溢れている。

「素敵よ、勝子さん」

勝子の思いもよらぬ変身振りに、小夜子も驚いた。
鏡の中の己に見とれている勝子、小夜子のひと声に我に返った。

「ほんとにあたしなの? 
ねえねえ、小夜子さん。あなたじゃないわよね」

「何を言ってるの。正真正銘、勝子さんじゃない。
ほら、このお帽子をかぶってみて。
うん! もう立派な貴婦人よ」

「いやだ。これ、あたしじゃないわ。
小夜子さん、なんだか変なの。

鏡の中のあたしが、あたしを馬鹿にしているの。
『あんたなんかの着る服じゃないわよ!』って。

あたし、だめ。耐えられない」

「しっかりして! 誰もそんなことは思ってないわよ。
大丈夫、すごく似合ってる。

ほら、見てごらんなさい。
みんな、勝子さんを見てるわよ。羨ましがってるじゃない」


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