昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

愛・地獄変 [父娘の哀情物語り] (三十一)

2010-12-08 21:51:49 | 小説
二日目、三日目と
電話がかかります。
夜の七時でございます、
お客さまからの電話であろう筈がございません。
すぐさま私が受話器を取ります。
妻のむくれた顔など、
知ったことか!
でございますよ。

「お父さん?
元気してる?
お母さんは?
代わって。」と、
もう矢継ぎ早でございます。
私と話せることが
よ程に嬉しいのか、
息せき切って言いますです。

私の傍らには
妻が来ております。
腹立たしいことには、
受話器を引っ手繰るのでございます。
それにしても、
どうして女どもは
長話が好きなのでございますかな。
何をそんなに話すことがあるのでございましょうか、
まったく。

四日目のことでございます。
娘が、
突然帰ってまいりました。
そして部屋に閉じこもり、
日がな一日
泣きじゃくるのでございます。
理由を問いただしても、
唯々泣きじゃくるばかりでございます。
娘の顔を見たいと願う私目ですが、
何度声をかけても
「放っといて!」
という返事。
もう涙がでてまいります。

その点、
女は冷たいものでございます。
素知らぬ顔をしております。
「今は何を言っても無駄ですよ。」
と取り合いません。
お友達と喧嘩でもしたのでしょ、
と言うのです。
しかし不思議なもので、
そのように言われますと、
そんな気がしてくるのでございます。


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