(二)
小夜子の黒光りする自慢の髪を指で撫でながら、武蔵もまた気持ちが和らいでくる。
どんなにささくれ立った心も、その髪に触れることで凪(な)いでいく。
「あぁ、そうだとも。
『御手洗武蔵は、一生涯、我が妻小夜子を大事にすることを誓います。』
って、神様の前で誓ったろうが。
この世の誰よりも、俺が小夜子を大事に思っているんだぞ。
このことだけは、なにがあっても忘れるな!」
「うん、うん、うん」
抜け殻のような日々を送る小夜子に生気を取り戻させる為にもと、急遽(きゅうきょ)新婚旅行を計画した武蔵だ。
そしてその甲斐あって、見違えるように元気になった小夜子だ。
“そうよ、そうなのよ。
あたしが幸せになれば、それで亡くなった二人もまた、幸せな気分を味わえるのよ。
だって一心同体なんだもの。
あたしとアーシアと、そして勝子さん”
「おおおおーーい!」
穏やかな海原に向かって、大声を張り上げた小夜子。
周囲の驚きの目にも、まるで動じない。
“あたしの幸せを、みんなにも分けてあげる”
とばかりに、胸の前で合わせた両の手を、大きく空に向かって開放した。
小夜子の黒光りする自慢の髪を指で撫でながら、武蔵もまた気持ちが和らいでくる。
どんなにささくれ立った心も、その髪に触れることで凪(な)いでいく。
「あぁ、そうだとも。
『御手洗武蔵は、一生涯、我が妻小夜子を大事にすることを誓います。』
って、神様の前で誓ったろうが。
この世の誰よりも、俺が小夜子を大事に思っているんだぞ。
このことだけは、なにがあっても忘れるな!」
「うん、うん、うん」
抜け殻のような日々を送る小夜子に生気を取り戻させる為にもと、急遽(きゅうきょ)新婚旅行を計画した武蔵だ。
そしてその甲斐あって、見違えるように元気になった小夜子だ。
“そうよ、そうなのよ。
あたしが幸せになれば、それで亡くなった二人もまた、幸せな気分を味わえるのよ。
だって一心同体なんだもの。
あたしとアーシアと、そして勝子さん”
「おおおおーーい!」
穏やかな海原に向かって、大声を張り上げた小夜子。
周囲の驚きの目にも、まるで動じない。
“あたしの幸せを、みんなにも分けてあげる”
とばかりに、胸の前で合わせた両の手を、大きく空に向かって開放した。
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