昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第二部~(八十三) あたしの幸せを、みんなにも分けてあげる

2014-03-25 22:02:21 | 小説
(二)

小夜子の黒光りする自慢の髪を指で撫でながら、武蔵もまた気持ちが和らいでくる。
どんなにささくれ立った心も、その髪に触れることで凪(な)いでいく。

「あぁ、そうだとも。
『御手洗武蔵は、一生涯、我が妻小夜子を大事にすることを誓います。』
って、神様の前で誓ったろうが。

この世の誰よりも、俺が小夜子を大事に思っているんだぞ。
このことだけは、なにがあっても忘れるな!」

「うん、うん、うん」

抜け殻のような日々を送る小夜子に生気を取り戻させる為にもと、急遽(きゅうきょ)新婚旅行を計画した武蔵だ。
そしてその甲斐あって、見違えるように元気になった小夜子だ。

“そうよ、そうなのよ。
あたしが幸せになれば、それで亡くなった二人もまた、幸せな気分を味わえるのよ。

だって一心同体なんだもの。
あたしとアーシアと、そして勝子さん”

「おおおおーーい!」

穏やかな海原に向かって、大声を張り上げた小夜子。
周囲の驚きの目にも、まるで動じない。

“あたしの幸せを、みんなにも分けてあげる”
とばかりに、胸の前で合わせた両の手を、大きく空に向かって開放した。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿